見出し画像

「狡兎死して走狗烹らる(1WEEK短編小説)」

犬、狼、兎の孤児の兄弟がいた。
兄弟は、自分達の親を知らない。
血が繋がっているわけではなかったが、生きるために、3人で協力をして暮らしていた。

狼は、自分を捨てた親に対し、何も感情がなかった。
こんな殺伐とした世の中だ。自分一人が生きていくことも難しい世界で、
こどもを育てることの方が普通じゃない。すんなり運命を受け入れた。彼は世界にも誰にも期待をしていなかった。


犬は、狼とは対照的だった。
いつも、狼と兎に対し、夢や希望の話をし、こんな世の中だからこそ、みんなで協力をし、幸せに生きていくことや、絆の大事さを熱く説いた。
そして、いつかきっと自分達を捨てた親とも再会できるという話をしていた。彼の首には、彼が親からの贈り物だと思っている高価なネックレスが光っていた。

兎は、生まれつき身体が弱かった。
生まれつき、言語に障害があり、うまく話すことが出来なかった。
兎は犬に密かに、恋心を抱いていた。犬が彼女にとっての唯一の希望だった。

兎は自分が障害を持って生まれたことを悲観し、俯くことが多かった。
そんな姿を見て、狼は元気づけたりはしなかった。

「生まれの運の悪さを呪ったって仕方がない。俺たちはもう生まれてしまったんだ。希望なんて持たない方がいい。諦めることが大切だ。誰も君を憐れんだりしないし、変わってもくれない。君は、その姿で生きなきゃならない。変わらない事を求めても仕方ない。慣れないとね」

狼は、兎に対して、厳しい現実を突きつけた。

それを聞いていた犬が立ち上がり、狼の胸倉を掴んだ。
「どうしてそんなひどいことが言えるんだ?僕たちは仲間だろ?兎の気持ちになって考えたらわかるだろ?ひどいことを言って、彼女を傷つけるなよ」
顔を真っ赤にして怒った。

「俺は彼女じゃない。だから彼女の気持ちにはなれない。ただ事実は俺にだってわかる。俺たちがなぜ、親に捨てられて、惨めにこんな生活をしてると思う?器量が悪いからさ」

犬は狼を殴った。兎が止めに入る。

「僕は君のそういう所が嫌いだ。諦めてたまるか。親は僕たちを捨ててなんていない。きっと何か理由があったんだ」

「おまえがどう思おうと自由だ。だが事実は1つだ。どんな理由があれ、俺たちは捨てられた。それだけが確かな事で、その理由なんてどうでもいい。足掻けば苦しいだけだ。俺は来世に期待するよ。次はもっと良い器量で生まれてきますように」

狼は、唇についた血を拭うとその場を去った。

「情けないやつだ。抗おうとしないなんて。兎、気にしたらいけないよ?あいつはちょっと捻くれてるんだ」                   犬は笑顔で、その場に座り込んでいる兎に手を伸ばした。

それから数年が経ったある日。
兎が病に倒れた。狼と犬は、村の診療所に兎を運んだ。

診療所の中からは、恰幅の良い医者が出てきた。
彼は熊の先生と呼ばれている医師で、元々は都会の大きな病院で医者をしていたが、今は、この小さな村で貧しい者たちのために、診療所を開いている人格者だった。

「先生、兎が・・兎が大変なんです」
「大丈夫だ。心配いらない」
熊の医者はそう答えると、その場で兎のことを診察した。

「これはすぐに手術が必要だ。だが、この手術には大金がかかる・・」
熊の医者は申し訳なさそうな顔をする。

「お金ならあります・・」
犬がそういうと、兎が力なく目を開け、首を横に振る。

そのお金は3人の将来のために、貯金をしていたものだった。
兎の治療費に充てれば、そのお金は全て失くなってしまう。兎は、そのことを知っていたから、自分に治療をしないようにと目で訴えた。

「心配しないでいい。お金は、またみんなで稼いだらいい」
犬は、兎の手を取ると兎は安心したのか目を閉じた。

狼はその様子を黙って見つめていた。

熊の医者は、兎を治療室に連れていくと、申し訳なさそうに、お金を用意してくるように告げた。この病院の経営にもお金はかかる。たくさんの貧乏な人たちをボランティアで救っているためだ。犬は察すると、狼に兎のそばについていてくれと伝えて、診察所を飛び出した。


やがて、治療費を袋に詰めた犬が、息を切らして診察所に入ってきた。
廊下にいる狼を発見すると声をかけた。

「兎は?兎の手術は?どうなった?」

狼はそれには答えず、無言で首を横にやり、廊下の先の人だかりを指した。


そこには、この村の村会議員の豚と、国会議員の狐と、国王のライオンがいた。彼らは兎の病室の隣の廊下で、騒がしく話をしている。

熊がやがて、彼らの待つ廊下に病室から出てきた。
そこで少し彼らと会話をし、廊下を歩いてくる。

「先生、兎の手術は?」
「犬か。タイミングが悪くてな・・豚の息子もケガをしたんだ。」

「豚の息子もって・・僕たちの方が先だったじゃないか、それに、兎は死んでしまうかもしれない病気だって・・なぜ、まだ手術をしていないんですか!」
犬は目を真っ赤にして怒った。

「金だろ?」
狼は冷静に熊に向かっていう。
熊は、眼をそむける。

「金ならある!ここにある!だから治してくれ!」
「犬。すまない・・この病院も彼らの息がかかっているんだ。もし、豚の息子を見殺しにして、兎を助けたとなったら、この病院は潰されてしまう。そうなったら、他の治療を待つ貧しいものたちが死ぬことになってしまうんだ・・」

「そんなのって・・兎は僕の大切な仲間なんだ。助けてください。お願いします。お金だって用意したし、僕たちの方が先にお願いしたんだ」

「諦めろ。命は平等じゃないってことだ」狼は冷たく言い放つ。犬が狼を殴り、犬と狼が争っていると、豚が目の前を通る。
豚は、犬のネックレスに気づいた。

「そのネックレスは?」
「・・これは、僕が幼いころに親が首にかけていてくれたもので・・」
「それは私の家の家紋が刻まれているね。そうか、君は僕のこどもなのかな・・」豚は犬を値踏みするように見た。

犬は、豚が自分の親だと気づくと、豚にお願いをした。
「僕のことを教会に預けたことは、なんとも思っていません!今、僕の大切な人が死にかけています。あなたなら、救えるんです・・どうか助けてください」

豚は、兎の病室を覗くと、戻ってきた。

「すまんが、僕の息子の方が大事なんだ。ごめんよ。それに君のことを捨てたのは、僕のこどもとしてふさわしくないと思ったからだ。捨てた時点で、もう僕のこどもではないんだ」

「・・それじゃあ、このネックレスは?どうして僕に?」
「君の値段だよ。誰かがそのネックレスの代価で、君を引き受けてくれるかもしれないだろう。それは君にあげたものだ。売るなり捨てるなり好きにしたらいい」

犬は、膝をついて俯いた。狼の言った通りだった。
彼ら金持ちや権力者にとって、こどもはただの「宝石」に過ぎなかった。
宝石になれなかったものは、石のように捨てられる。
器量の悪いこどもに愛も慈悲もない。

豚は熊を見ると、笑って言った。
「僕の息子のことを頼んだよ。そうだ。輸血が必要だったら、そこの死にかけている見窄らしい女から買い取って使うといい。どうせ、命くらいしか売るものがない、価値がない連中だ」

犬は、その場でお金を投げつけると、診療所から走り去った。

しばらくして、犬を狼が迎えに来た。
                                 「なんだよ?兎が死んだのか?そんなことを言いにきたんだろ?」
「違う。兎は助かったよ」
「え?」
犬を目を丸くして驚いた。

「熊の医者が治療をしたんだ」
「あの人は救世主だ」
犬はとても喜んだ。
狼の話を最後まで聞かずに、診療所に走って行った。

熊の医者は、犬を見つけると呼び寄せ、兎の病室に案内する。
兎は、犬が来ると目を覚ました。犬は兎に抱きつくと、涙を流した。

「よかった。ほんとうによかった・・」
犬の涙で、シーツは水浸しになった。

「でも、どうして?豚の息子の手術があったんじゃ・・」
犬は、熊の医師の方を見ながら言った。

「君たちの方が、生きる価値がある。私はそう思ったんだ。私がこの村の医者になろうとしたのは、ああいった権威をちらつかせる連中と手を切るためだったんだ。それを思い出したんだ」

「ありがとうございます・・」
犬は、神様を見るような目で、熊を見つめた。

「君たちを救ってしまったことで、私への圧力が強まるだろう。資金提供も打ち切られ、この病院は閉めなくてはならなくなるはずだ。たくさんの貧しい人達が犠牲になってしまった。もうこんなことがあってはならない。
ただ、今のままじゃダメだ。正しいことをするためには、力をつけないといけない。私は政治家になろうと思っている。犬、手を貸してくれないか?
君たちとなら、良い国が作れると思うんだ。貧しい人達を権威者の手から救うんだ」

犬は、兎と自分の心を救ってくれた恩人の誘いを断る理由が思いつかなかった。即答した。

翌日、豚の息子が死んだことが大きく告知された。
医療ミスだったそうだ。豚は、その夜、息子の死を悲観して自殺したという。あんな人間でも、大切な子供の死は悲しいとでもいうのか。
犬の目の虹彩に鈍色が差し掛かっていた。

犬は兎の命の恩人である熊と共に、
成り上がることを決めた。
犬は、狼も誘った。
しかし、狼はその誘いを拒否した。

「あいつら、権力者がいる限り、僕たちのように捨てられるこどもや、
この間の兎のように助かる命も救えない可能性だって出て来ちゃうんだ
そんなの理不尽だろ?」

「兎は助かった。それだけでいいじゃないか。おまえは捨てられた。だが、おまえは生きてる。それでいいじゃないか。なぜ、それだけじゃだめなんだ?」

「僕は僕のような想いをみんなにして欲しくないんだ。こんな経験をしたからこそ、その経験をこれからの人達にしてもらいたくないんだ」

「別に、おまえじゃなくてもいいじゃないか」

「誰かに期待しても仕方ないんだってことを教えてくれたのは、狼、君じゃないか」

「そうか。わかった。頑張ってくれ。俺は抜ける。俺は他の連中のことなんてしらない。俺は目の前のことだけで精一杯だからな」

「無理強いはできない。狼、僕はこれから熊の先生と一緒に力をつける。あの人なら国を変えていけると思うんだ。もし困った時は言ってきてくれ。力になる」犬は微笑んだ。狼は犬を見送った。


それから数年が経ち、熊は国会議員となり、狐と勢力を2分するほど強くなっていた。熊の支持者は数が多かった。彼を慕うのは、貧乏人であったり、弱者だった。貧乏人であっても、一票は一票だ。数では熊が圧倒的に強かった。

それでも、一気に熊に傾かなかったのは、狐が、票を買っていたからだった。熊は、その思想から、狐のように金で票を買うということは出来なかった。そのため、この戦いは拮抗していて勝負がつかなかった。

狐は国王のライオンと癒着があった。
そのため、狐の法案がよく通った。

熊がこの状況に頭を悩ましていると、兎がお茶を持って部屋に入ってきた。
彼女も犬と同じように、ここで熊を支えていた。
彼女は成人をし、美しく成長していた。

「兎、君と犬はそろそろ結婚してもいいころじゃないのかな?」
熊は、兎に微笑みかける。兎は頬を赤らめた。

「そうか。犬がそんなことを?私が国王になるまでは、君と結婚しないと?
彼らしいな。皆の幸せを見届けなくては、自分達だけが幸せになれないってことだな。まったく、たいした男だよ。君の未来の旦那は」

兎は、夢のために動いている犬が好きだった。
今の活動に参加してから彼は生き生きとしていた。
たくさんの人達を救えていることに満足していたようだった。

「私も早く君たちの婚礼を見届けたいんだが、狐がいる以上、私は上にいけないんだ。私が上にいけないと、君たちもそうだが、私を支持してくれているたくさんの人たちが路頭に迷ってしまう」
熊は弱音を吐いた。

兎は、部屋の片づけをしながら、複雑な表情をした。

「犬はよくやってくれている。彼が金持ちの不正を暴いてくれなければ、私はこの地位まで来れなかった。随分、危ない橋も渡ってくれたみたいだ・・だが今度の狐は相手が悪い。過激な連中とつるんでいるんだ。真っ向からぶつかれば、犬も私も命が危ないかもしれない。手がないものか・・」
熊はわざと兎に聞こえるか聞こえないかくらいの独り言を言う。

「政治家はスキャンダルに弱い・・スキャンダルがあれば、勝手につぶれてくれるんだがな。そうなれば、誰も傷つかずに終わるんだがな・・兎、すまん。まだいたのか。忘れてくれ。私も疲れているみたいだ。もうあがってくれ。犬によろしくな」

自分は犬と共に、この活動に参加しているが、特になにかに貢献できているわけではなかった。それが、兎はいつも、もどかしかった。
自分の命を救ってくれた熊へ恩返しがしたいという気持ちもあったかもしれない。いや、それよりも、兎は、犬のためになりたかった。
犬は自分の命を救ってくれた。自分を大切だと言ってくれた。
そんな彼のために、自分も命をかけたいと思った。


後日、狐はスキャンダルで倒れた。
相手は兎だった。彼の支持者は一気に離れ、彼は失脚した。
熊はとても喜んだ。

しかし、犬は怒った。
犬は、自分が汚れることはなんとも思わなかった。
それは、綺麗な兎を守るためでもあった。
そんな守りたかった兎が汚されたことに腹を立てた。
そして、その怒りは兎本人に向かった。

狐の顔がチラつく度に腹が立った。
狐にとっては、兎はただの女だ。特別でもなんでもない。
それが許せなかった。

うまく言葉を話せない兎は、弁解することも出来なかった。
とても口汚い言葉で最愛の犬に罵られた。
熊が間に入り、兎と話をすると別室に入っていった。

熊は、兎にお礼を言うと、狐が復讐のために動いたと伝えた。

狐は警察やメディアとも癒着があった。
彼は狐が兎を捕まえれば、いくらでも事実を捻じ曲げることが出来ると言った。実際、狐は兎を血眼になって探していた。

「犬は君の気持ちに気づけなかったんだろうな。だが、彼の気持ちもわかる。今の君は、犬が愛した兎じゃない。汚れてしまったんだ。彼は汚い世界で、君だけが純粋で美しいものだと思っていた。君だけは変わらないと思っていたんだろう。君が彼を裏切ったと想っているんだ。これはもう消せない過去だ。彼は、きっとこの過去を許せないだろうな・・」

兎は目に涙を浮かべた。

「君が狐に捕まったら。君はきっとひどい拷問に合い、嘘の事実を話すように言われるだろう。犬や私のしてきた悪事を暴かれ、あることないこと捏造されてしまうかもしれない。そして君が解放されたとしても、狐を誘った悪女としてメディアに晒され、どこに行っても心が休まることはないだろう。
そんな君と結婚をしたら、犬もタダでは済まない。彼はこれから私の右腕として、もっと上を目指せる人材だ。本当に惜しいよ」
熊は残念だという表情をして、机を片付け始める。

「・・手がないわけじゃないんだ。君が捕まらなければいい。だが、狐から逃げ切ることはできないだろうね。彼は、君がこの世界のどこにいたって君を探し出すだろう。どこかここでない所に逃げられればいいんだけどね。そしたら、君が拷問を受けることも、犬が失脚することもない。真相は藪の中というやつだ」


その夜、兎は人知れず、自殺をした。
傍らには、遺書がしたためられていた。
そこには、狐の悪事、狐にされた酷いことなどが捏造されて書かれていた。
狐はこれにより、完全に失脚をした。


犬は兎の死をとても嘆いた。
彼はまだ若かったが、髪の色が全て白くなってしまった。
それほどのショックを受けた。

熊は、犬に、兎が狐により辱められ、追い詰められ、死ぬほど苦しんだことを伝え、最後に話した時には、犬への愛や犬との将来のことを楽しそうに話していたことを伝えた。そして彼女の死には不可解な部分が多いと伝え、これは自殺に見せかけた他殺であると犬に伝えた。

そこから犬は変わった。
手段を選ばなくなった。彼は猟犬となったのだ。
最愛の人を失った彼には、もう熊にしか希望を見いだせなかった。
熊を国王にするために、自分は手を汚し、大切な人を失った。
これを取り戻すには、熊を国王にする以外、もう道は残されていなかった。

彼は目的のためには手段を選ばず、恐れられた。
たくさんの悪事に手を染めた。大義のための犠牲と割り切った。
自分は最愛の人を差し出した。何かを得るために、失うことはつきものだと思った。他人を傷つけることを、なんとも思わなくなっていた。

熊が国王になるためには、ライオンを殺すしかなかった。
しかし、この国の王になるためには、政治家とは違い、今の国王から次の国王に選ばれる必要があった。こればかりは、どんなに犬が恐怖で煽ろうと、民の票が多くとも覆らないことだった。


犬は、隠れて熊を批判していた連中の屋敷に火をつけた。
そして出てきたところで、狼とばったり会う。

「兎のこと。残念だったな」
「もう過ぎたことだ。先生の力になれたんだ。あいつも本望だっただろ」
犬の目は鈍色をしていた。

「その先生から離れたほうがいい」
狼は犬の目をまっすぐに見た。

「まだわからないのか?おまえの先生は、おまえの想ってるような善良な人間じゃない。おまえも、兎も利用されたんだ。まだ何か考えているはずだ」

「狼、君は僕や兎を捨てて、一人で生きる道を選んだからわからないんだ。僕たちは、もう逃げれないんだ。今更、後戻りなんてできない。失ったものが多すぎて・・」

「戻ったらいいじゃないか。今、この場で、逃げ出してきたらいい。このままじゃおまえ・・」
犬を遠くで呼ぶ声がする。犬の手下だった。
犬は合図をすると、狼に微笑みかけると走り去った。

この後、呆気なく、ライオンは国王の座を熊に譲り渡した。

熊は、ライオンに「猟犬」の所在を売った。
ライオンは安全を買ったんだ。


熊を国王にするためだけに生まれた犬の群れは、全て一網打尽にされた。
国王になるという目的を遂げた熊にはもう必要ない。存在していること自体が熊にとってマイナスになるモノたちだった。

熊は、犬に全ての悪事を着せ、犬を指名手配した。
賞金をかけ、生死は問わないとした。

犬は、自分が捨てられていた教会にいた。
傷だらけだった。

狼が入ってくる。

「言った通りだったろ?」
「そうだな。君はいつも正しい。」
「熊の悪事を全て晒すんだ。そうすれば助かる。実際やらせていたのはアイツなんだ」
犬は、首を横に振った。

「もういいよ。もう終わったんだ。君が最初に言ってただろ?足掻いても、こうしてはじまりに戻ってきてしまう。ここで動かないで、君のいうように、君や兎と過ごしていたら、きっとこんなことにはなってなかっただろうな」犬は、時折、思い出しているのか、微笑んだり、涙したりしながら語る。

「羨ましかったのかな・・僕はいつも奪われてばかりだと思ってた。
でも、本当に欲しいものは全てあの時、この場所にあったのに、気づけなかったんだ・・バカだよな・・」そういうと、犬は静かになった。

その夜、国王の執務室で、狼が熊に拳銃を構えていた。

「待て。言いたいことはわかる。だが、私が死ねば、犬も兎も無駄死にだぞ?やっと貧しい生まれの国王が誕生したんだ。ここから変われるんだ。
彼らだってそれを願っていた。」

狼は熊の懺悔を静かに聞いていた。

「それに、そうだ。おまえは復讐のつもりかもしれないが、もとはと言えば、あの日、おまえが豚の息子を殺したことが原因じゃないか。そこから運命が変わったんだ。あの時おまえが殺さなければ、兎はあのまま死に、犬も、私も変わらなかった。おまえが変えたんだ」

「わかってる」

銃声が2発鳴り響いた。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

11

KOTORI

短編小説家@山梨在住の03年生まれ。人の中にある「闇」世の中の「影」にライトを当てる点灯屋。尊敬する作家「芥川龍之介」【告知】新作→1WEEK短編(※毎週木曜日に更新中)∴高熱に魘され体調不良中(11/14.現在)

「1WEEK短編小説」

毎週木曜日に更新される短編小説になります。毎週「単語」をランダムで選び、そこから想像される物語を綴っていきます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。