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中小企業診断士受験生ものがたり 第1話 「不合格」

「番号がない・・・」

平成28年12月下旬の10時過ぎ。私は会社の自席のパソコンの前で無造作に番号が並んだ画面を見て呆然としていた。何度見ても自分の番号はなかった。

この日は、平成28年度中小企業診断士二次筆記試験の合格発表の日であった。会社の同僚からすると何でもないただの平凡な1日であるが、私としては人生を左右する大切な日であった。

私は平成28年の1年間を2回目の中小企業診断士二次試験のために懸命に勉強していた。2回目の二次試験にのぞむに当たっては、独学であったが、診断士の方が主催する勉強会には定期的に顔を出したり、模試ではA判定をとれ成長できたという実感があった。また、本試験においても、昨年(平成27年)は事例Ⅱや事例Ⅳで白紙があるにも関わらず233点(合格点240点)取れていたが、今年(平成28年)は白紙もなく全て埋めることができていたのでいけるだろうと考えていた。

今思うと色々考えが甘いが当時の心境としては「合格できるはず」と信じていた。しかし現実は不合格であった。

不合格から数日間は非常に落ち込んでいたが、段々日が経つにつれ、再度挑戦しようという気持ちになり年明けから勉強を再開した。ただ一次試験の保健受験をしていなかったので一次試験7科目からの再挑戦であった。
そして、勉強しようと一次試験の問題集を開くものの、どうにも勉強に身が入らない。初めて一次試験の勉強をした時はどれも新鮮だったが、2回目となると飽きも生じ集中力を欠いていた。気持ちとしては「やらねば」と思うものの、体が反応せずただ無駄に机に座っているだけであった。

そして、ちょうどこの時期を前後に、本業で大きなプロジェクトへの参加が決まり、またプライベートでは子供(第一子)が1歳を過ぎ手にかかる時期になった。時間がないことは間違いなかったが、「仕事と家庭が忙しいから」ということを理由に日々の勉強時間はどんどん減っていった。そして、勉強しない日が続き、あっという間に一次試験の申し込みの時期になった。

そして「仕事と家庭を大切にしたいから」ということを理由に平成29年の中小企業診断士の試験を申し込むのをやめた。もっともらしい理由であるが、本音は「勉強していないので不合格が間違いないから」ということであり中小企業診断士試験から逃げたのであった。

そして、この日から中小企業診断士試験とは無縁な日常が始まった。この期間、本業のプロジェクトは納期におわれ残業が増え、プライベートでは慣れない育児にてんてこ舞いであった。

こうして多忙な日々を過ごしていったが、2年ほど経過すると少しずつ落ち着きを取り戻してきた。炎上を繰り返していた本業のプロジェクトは無事終了し社内で一定の評価をいただき、プライベートでは育児にも慣れ子供も順調に成長しマイホームも購入した。本業でも良い評価をいただき、家庭生活も順調であり、他の方からみると順風満帆な生活を送っていた。

しかし私自身はどうしても気持ちが晴れずにモヤモヤしていた。

そう。本心は中小企業診断士に再挑戦したいという気持ちであふれていたのだ。

例えば、平成28年の二次試験に落ちてからも、毎年8月・10月になると「ああ、中小企業診断士の試験って今頃なんだなあ」と思い出したり、本屋に行くと買う予定はないがフラッと資格本コーナーに行き診断士関連の本を立ち読みしていた。「資格なんてとっても意味がない」と自分に言い聞かせて無理やり蓋を閉じようとしていたが心のどこかでひっかっていたのである。

ただ診断士レベルの難関資格に挑戦するのは本当に多くの時間を費やすことなる。時間を費やしてもまた不合格になるかもしれない。果たして本当に再挑戦する意味があるのか。こうして、再度挑戦したい気持ちは持ちつつも中々一歩を踏み出せない毎日が続いていた。

そして、気づけば中小企業診断士受験から離れ5年の月日が経過していたのであった。

(第2話へ続く)

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