そりゃそうでしょう。
だってお金なんかないんだから。

家の解約手続きを見届けて、ルンルンで家を出ようとしている彼に

「は？どこ行こうとしてんの？」

「一緒にいたくないから出てく」

「そんなこと言って、明日の銀行をぶっちぎろうとしてるんでしょ！」

「一緒に行かなくてもいいだろ。銀行の前で待ち合わせりゃいいじゃん」

「絶対来ないやつじゃん！」

「行くっつってんだろ！」

「銀行まではここにいてくれないと。信用出来ない」

「行くって！もう1秒だって一緒にいたくねーんだよ！」

お母さんのためにしばらく実家にいろよ
↓
1秒だって一緒にいたくない

これ、明日になったら忘れてるんですよ。
何事もなかったように接してくるんですよ。

「俺は出ていく！」

嬉しそーに家を出て行ったのでした。

不思議なことに、あんなに楽しみにしていた二人暮らし。
いくつも内見してやっと見つけた家が、
こうなるとただの四角い箱。
なんの明るさも温かさもないバトルフィールド。

出ていった後、チェーンを閉めてお義母さんに電話をかけます。

この時、もしかしたらお金は返ってくるかも、と
まだ少しだけ思っていました。