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主役の座|わんわんにゃーにゃー

はじめて読んだ長新太の絵本が『プアー』だった。
犬が右を向いて、プアーっと言うたびに体のパーツがどんどん膨らんでいくという奇妙極まりないお話だった。そのあまりのシュールさに心を奪われて、わたしは図書館で長新太の絵本ばかり借りている。

プアーの犬と似た顔をした犬が、今にもプアーっと言いそうな顔で頭に猫を載せているのが今回の『わんわんにゃーにゃー』。長新太が書き残した絵に、和田誠が色をつけて仕上げた絵本シリーズの片割れである。

ついに見つけたぞ。
『プアー』が面白かったので絶対読みたいと思っていた『わんわんにゃーにゃー』を図書館で見つけ、意気揚々と借りて帰ってきた。一緒に借りた『にゅるぺろりん』がだいぶツボだったので、読むまでに時間がかかってしまった。

「わんわん、にゃーにゃー」
思いの外低い声が出た。かわいい感じではなさそうだなという確信が声に漏れてしまった。まあいい、これでいこう。

向かい合う犬と猫。
「わんわん」「にゃーにゃー」
じりじりと距離を詰め、猫は犬に食われている。
「わふんわふん」「にゃごにゃご」
「ふわんふわん」「にゃーにゃー」
犬は口の中に異物があるのでモゴモゴとままならないが、食われている方の猫は平気な顔で鳴き続ける。強い。

犬が猫を食べ、食べられた猫が出てくるまでの物語。だけど、ただフガフガしているだけの犬の方には主体性を感じられず、「にゃーにゃー」と声を上げ続ける猫の方が圧倒的に存在感を放っている。

これは道端で出くわした二匹のバトルかもしれないし、はたまた彼ら流の過激な挨拶なのかもしれないが、わたしには猫のプライドをかけた挑戦に思われてならない。

犬から飛び出してくるときの猫の、ムンクの叫びみたいな表情が好き。

やったな、猫。

とはいえ猫派か犬派かと聞かれたら、ウサギ派なのですが。



▼これまでに読んだ長新太氏の絵本


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