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物語の中へ|にゅるぺろりん

つづきまして、『にゅるぺろりん』。

言わずもがなの空前の長新太ブーム(わたしの中で)なのだが、図書館でこれを見つけたときはタイトルだけで「面白くないはずがない」と確信した。だって、「にゅるぺろりん」である。やばすぎる。

表紙をよく見ると、「長新太 絵」の下に「谷川俊太郎 文」とある。最高だ。

表紙をめくると、明るい黄色がバーンと目に飛び込んでくる。
いつか保育の専門学校に通っている学生から、絵本の読み聞かせについて聞いたことがある。タイトルを読み終えた後、この何もないページをしっかり見せるのが大事なんだそうだ。これからはじまる絵本の物語の導入的な意味合いがあるらしい。
なるほどたしかに、バーンと飛び込む明るい黄色は「にゅるぺろりん」ワールドの不敵な魅力を予期させる雰囲気がある。瞳孔が開いて、吸い込まれていきそうな感覚。もう後には引き返せない、だけど惹かれる、そんな感覚。

長新太独特の強烈な色彩の中心に、谷川俊太郎の短い言葉が躍る。

ぺろりん

にゅるにゅるにゅる

自由自在に伸びるぺろぺろキャンディ。
姿を変えるぺろぺろキャンディ。

言葉もだんだん伸びていく。

にゅるんにゅるんにゅるん にゅるにゅるぐるぐるん

にょろぐにゅ ぐにょにゅる にゅるぐにょ ぐにゅにょろ

噛まずに読みあげるのがかなり難しい。
だけど、何度も読みたくなっちゃう。声もついつい大きくなる。

舌が絡まりそうになりながら必死の形相で読む母を尻目に、ベビーはニヤニヤ笑っている。なんだか変だな、という違和感はあるらしい。鮮やかな絵をじっと見ている。

最後のページはやっぱり、はじまりと同じ明るい黄色。
こうやって物語のはじまりとおわりを視覚的に告げる役割があるんだな。
「おしまい」と言って閉じたら、裏表紙にはまだちょっと「にゅるん」しているぺろぺろキャンディが待っていた。物語は終わったけれど、物語の中で世界は回り続けている。

『トイ・ストーリー』とか『くるみ割り人形』とか『はてしない物語』とか、わたしたちはいつの時代も物語の中の世界に惹かれてしまう。



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