「獣ゆく細道」は絶望を突き付け、潜む獣を奮い起こす。

金曜の夜、音楽番組で「獣ゆく細道」を歌う椎名林檎と宮本浩次を観てから、文章が思うように進まなくなった。それは、圧倒的才能の前に見た絶望のような。


このところ何度も何度も「獣ゆく細道」を聴いている。唯一無二の存在感を誇るお二人のコラボに、ぞくっと身震いするほど圧倒される。

椎名林檎さんの歌詞の世界観は圧倒的だ。というよりも、この人のつくる世界観すべてが圧巻だ。底知れぬ才能に恐ろしくなるほどに。

椎名林檎的表現をする人はいくらでもいる。例えば、歴史的仮名遣いを使用したり、漢字の変換が一般的でないものを好む人などは多くいると思う。椎名林檎さんに憧れて真似をする人だって多い。それでも、"椎名林檎になりたい"と思っても、誰もなれない。あの圧倒的才能を持った存在感は、似せて作っても所詮真似事で、超えることなど永遠にできないものだ。

宮本さんの存在も唯一無二だ。
どこか文豪のようで、孤独と、自身と、満たされない何かと戦い続けているような感じがする。そこまで詳しくもないのだけれど、天才ってこういう人だよなぁとつくづく思う。

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「獣ゆく細道」を聴くと、才能というもの改めて痛感する。騙し騙しきた自分の弱い部分をまっすぐに刺されたような気分になる。それは絶望にも似たものだった。自分の庭で風を避けながら小さく積み上げてきた軽いジェンガは、美しい大きなハンマーで爽快にぶっ壊された。

けれど、悲観しているわけではない。

私の中の獣が踠いているのがわかる。あぁ、私の中にもまだいたのね、と安堵する。獣は、孤独や絶望を食らって進化する。少なくとも私の場合は。

絶望感は時に命を奪うけれど、時には起爆剤にも成り得る。


自分以外の誰かになんてなれないし、模倣してみても二番煎じ。それを噛み砕いて噛み砕いて飲み込んで飲み込んで消化して巡らせて自分を作るしかない。

誰でもない自分を作るために、また日々積み上げよう。


#エッセイ #日記 #音楽 #獣ゆく細道 #椎名林檎 #宮本浩次 #絶望と希望


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