「カメムシ」に大いなる可能性を感じた

2023.09.28

同期との飲み会があった。

店に入り、最初のコースなり飲み物なりを決めて、
それが出てくるまでの数分間。
何気な〜く過ごせば、それで過ぎていくし、
「最近こんなことがあってさ…」という近況報告が話題にもなりうるだろう。

そんな時、同期の一人が話し始めた。
最近、カメムシ多くない?

わーかーるーーー!!!!
めっちゃいるよーーー!!!!
この間も夜に窓を開けて網戸にしてたら、
カメムシが飛んで来て羽音をブンブン立ててたよーー!!
(心の中の声)

案の定、僕以外にも共感した人がいて、
そうそう!というリアクションが目立った。

僕はここに、精神科医としての会話の糸口として、大いなる可能性を感じた。

近況報告は、どうしても話者の個人個人の話になったり、
最近あった(他人に話して意味がありそうな)良いこと、悪いこと、になりがち。
こういう話は、既にある程度の関係性が築けている間柄なら成り立つが、
初対面の人とはなかなか難しい。

一方で、天気の話や、気温の話、最近のガソリン代の話みたいなものは、
比較的共通な話題になりうるとはいえ、他人行儀な感じが否めない。

その点で考えると、「カメムシ」というキーワードはあまりにも秀逸だ。
僕が住んでいる地域には、この時期(9月頃)に妙にカメムシが発生するらしく、
同じ地域に住んでいると(なんかカメムシいるな…)と誰もが感じている。

しかし、それをわざわざ話題にする人はいないので、
「カメムシがめっちゃいる」ということが、
言語化されることは意外と少ないかもしれない。

この、口に出すには至らなかった言葉が言語化された瞬間って、
多くの人が「それだ!」って気持ちが沸き立つ感覚を覚えるように思う。

初対面の人に対して、「この人、自分と同じ感覚を抱いている」と思えれば、
急激に距離感が縮まるだろう。

僕は、何気ない会話、なるものが最も苦手なので、
この「カメムシ」という話題に大いなる可能性を感じた。
多くの人が何気なく感じているけど、わざわざ言語化するには至っていないもの…
そんなの簡単に見つかるわけないけどね。

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