【購買道】「たくさん買うから安い」の誤解

みなさんこんにちは。購買歴20年のバイヤーKFです。本日は「たくさん買うから安い」の誤解、についてお話をします。
通常であれば「まとめて買うから安くなる」「少ししか買わないから高額になる」というように考えられることが多いと思います。もちろん汎用品ではそのようなことが一般的かもしれません。しかし定期的に購入する産業材ではそうなる場合とそうでない場合があります。その理由は「需給バランス」と「重要性」です。
「需給バランス」についてですが、需給がタイトな場合は「たくさん買うほど高くなる」ということが発生する場合があります。プレミアム価格がつくと考えるとわかりやすいかもしれません。売り手側の立場では、需給がタイトな場合は客先を選定しなければなりません。つまりその顧客に優先的に販売する場合は、他の顧客に販売するよりも利得があるということを示す必要があります。そして一番わかりやすい利得が「利益が取れること」になります。もちろん販売先を絞り一つのものを作る量産効果で製造コストが下がり収益性が上がることは考えられますが、売り手企業にとって一番わかりやすいことは売価をコントロールすることで利益が取れる、ということなのです。実際に新型コロナウィルスで物流混乱が発生した時に資材必要量の確保が困難になり価格が高騰したことは記憶に新しいですが、需給タイトな状況では「たくさん買う方が高い」という状況になりやすいのです。
そして「重要性」についてお話をいたします。販売量の多い顧客は売り手企業にとって重要顧客となります。そして現在のように資源インフレの状況下では売り手企業では販売品の価格を上げることは重要な課題となっており、その時の優先順位として販売量が多い顧客から値上げ要請をしていく事になります。なぜなら販売量が多い顧客から数円値上げすることは、販売量の少ない顧客数十社で数十円値上げするのと同じ効果があるからです。また元々そのように重要な顧客へはエース級の人材を営業担当として張っており、交渉する購買担当にとっては値上げ局面ではタフな交渉相手となります。私が実際に体験した事ですが、オーストラリアの企業買収案件がありそこで調達している資材の価格を比較したことがありました。その企業は我々の100分の1の購入量しかなく、当然我々の資材調達価格の方が安価であろうと思っていましたが、実際に幾つかの資材は彼らの方が安価で購入をしていました。取引先に確認したところ「取引が非常に少量でオーストラリアまで交渉に行くのも大変なので10年以上前から価格は変えていない」ということでした。
他にも様々な理由は考えられますが、一般的に言われる「たくさん買うから安い」ということは普遍的な原理ではなくある特定条件では異なる、ということをお話しさせていただきました。
次回以降も製造業の調達購買に関するお話を続けさせていただければと考えています。

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