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レシピは門外不出であるべきか

レシピ本が無事に発売されて一安心している田村です。初めての挑戦だったゆえ、周りの方達に本当に支えてもらいながら一冊を作り上げることが出来ました。本当に感謝です。

来春にはチーズケーキのレシピ本も出ますし、自分の中の料理の考え方はだいぶ知ってもらえる気がします。勿論レシピの濃度は『丁度よく』調整していますが。

飲食業界だと、レシピは宝であり、守るべきものであり、共有するものではありません。「メモする事は許されず、暗記して家で書き写した」なんて話は当たり前に聞きます。昔はスマホもないし、映像で取っておくこともなかった時代。レシピだけを求めて働くなんて人も多くいました。修行を始めた当初の僕も、レシピを写す事に重きを置いていました。レシピがあれば良いものが作れると思っていたからです。

ただ、正直レシピ自体には本当の価値はありません。そのレシピがあれば、誰でも同じ様に出来る魔法が存在するわけではないからです。素晴らしい音楽の楽譜があったところで同じように演奏できないのと同じです。機材も違えば素材も違う、技術も違うのだから当たり前といえば当たり前なのですが。

レシピという一言の中にはもっと多くの情報が存在しており、それを読み解く事で本当の意味でのレシピを見つける事が出来ます。

レシピから何を学ぶのか。

料理やお菓子はもちろんだが、それ以上にその人の考えを学ぶ。ビジネス書を読むのと同じ様にその人の事を知ることが出来る。ただ、それは多くの人が出来るわけではありません。一般の方には殆ど伝わらないし、伝わる必要もない。しかし、分かる人には伝わるんです。そしてそれが技術の共有になり、新たな技術を生み出し、業界の成長にも繋がると思っています。

レシピをコピペしてもその本質は捉えられない。公開しても、捉えられない人の方が多いかもしれない。けれど、世に広げる事で何かを感じ取る人は現れます。普段買っているケーキのレシピを知る事で、実際に作ることの大変さや技術の違いを知る機会になるし、同じものはできなくても自分なりのケーキの味を作っていける。

ただコピペしただけの熱量のない商品ではなく、未来へ繋がる技術の共有の為に、レシピはどんどんシェアするべきだと僕は想います。もっと技術が共有された世界でどの様に自分の特徴を出して行くのか。今の料理業界は技術で差別化を図る場合が多い。だからこそ守られているものは多いのですが、もっと技術共有することで全体のレベルが上がり業界が盛り上がるのでは?と思う。

インターネットが一気に普及したようにはいかないかもしれませんが、料理がボーダレスに世界と繋がる、より身近なツールになるように。日本の無形文化遺産の日本料理の技術が世界にシェアされることで、より日本の素晴らしさと技術力が評価されるはず。僕たちは日本にいながら日本の技術を広められるのです。

これは料理に関してだけではなく、農業や漁業でも同じかもしれません。日本の技術力をもっと世界に広げたい。その為には常に勉強は必要だし、努力も必要だけど、だからこそ良いものが生まれ続け、世界が前進する。

レシピを守る事はとても大切ですが、もうそんな時代も終わりを迎える。より良い未来のために、時代を前進させるために、自分の持っている能力はできるだけシェアして行きたいと思う。




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