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時間への意識を変える。

飲食業界の働き方で一番問題になるのが労働時間だろう。

労働集約型産業では仕方ないといえば仕方ない。ただそれにかまけて長く働くことを前提にしていないだろうか?

『飲食店は長く働かないと出来ない』『それが当たり前だから』

本当にそれは当たり前なのか?美味しいものを作るこは本気で考えているが、タイムマネジメントにはそこまで意識を向けていないだけではないか?

モノ作りにはお金が掛かる。

家賃、水道光熱費、ゴミ処理費、材料費、梱包費、配送費、宣伝広告費、研究費。まだまだこんなものでは収まりません。

そして一番掛かるのが人件費。基本的に人件費は変動費だと考えてますが、飲食業界は固定費として考えている料理人は多いのではないでしょうか?月に払う給料が決まっているから、早く仕事が終わっても掃除をさせて長い時間働かせたりするのは良くあること。それでも昔と比べると改善されているとは思いますが、労働時間が伸びたからといって多く給料を払うことはほぼないと思います。(主にレストラン業界ですが)

この人件費が固定費扱いになることが、業界の思考停止にも繋がっているのではないか?

美味しいものを作ることが一番の目的の人はそれで良いかもしれない。(利益よりも)しかし、ビジネスとしてお金を稼ぐことを大切にするなら、時間当たりの生産性を突き詰めていかなければ中々上手くはいかないだろう。

もし全てのスタッフが時給計算だったら?暇なら人は減らすだろうし、早く終われば早く帰らせる、もしくは早く終わるように効率化を真剣に考えるだろう。この業界にある『一日〜時間働いてます』みたいなものは、働いているというよりは無駄に時間を浪費しているだけの場合も多い。(本当に忙しいお店は帰れないが)

ビジネスとして上手くいっている事業はたくさんある。

今料理人でタピオカミルクティーについて真剣に考えている人間は何人いるだろうか?小さなスペースで少人数で回し、行列を作る。これだけ多くの店があるのに新規参入も後を立たない。そこにはどんな背景があるのかを料理人は真剣に考えるべき。

たかがタピオカではない。タピオカには今後の飲食業界で生き抜くヒントがたくさん隠れている。


そんな飲食業界で働いてきたからこそ、僕は自分に制約をかけている。

『自分がやりたくないことは極力させない』『非効率な作業はその価値をしっかりと伝える』『人件費は変動費であり、1日8時間週休2日は最低条件と考える』


『自分がやりたくないことは極力させない』

過去に働いてきて、めんどくさい仕事ほど後輩に不利がちです。自分でやらないからこそめんどくさく非効率な作業を料理に組み込んでしまう。やっておけよと。シェフになってからはそれが顕著になったりする。そうすると労働時間はどんどん伸びる。固定費だと思っているからだ。

僕はシェフになった時からなるべく非効率は作業はやめた。飾りの為の細かいパーツを作るのをやめたり、乗せるだけのハーブの掃除も極力なくす。見た目に労力を注ぐくらいなら美味しさに全振りして、作業の効率化と労働時間の短縮を目指す。

目を瞑って料理を食べることは少ないかもしれないが、視覚に頼らない美味しさが本物だろうと。だからこそ見た目だけではない本質的な部分を突き詰めた。(見た目が美味しさの一部なのは理解した上で)

しかしどうしても必要な非効率というものは存在する。それがなければ成立しない大切なもの。考えた本人はそれがわかっているが、それは伝えないと理解されない。

『非効率な作業はその価値をしっかりと伝える』

『こんなめんどくさい作業は無駄だろ』と思われた瞬間クオリティーは落ちる。一番大切かもしれないその仕事がだ。だからこそ共通理解を進め、めんどくさい作業こそ集中してもらう。このようなコミニュケーションは大切だが、意外と疎かにされがち。僕は効率厨だからこそ自分が納得できない仕事はしたくなかったし、聞いても大した説明がないものは信用ならなかった、だからこそ、僕はなるべく丁寧に伝えようと努力している。

どんな仕事にも『抑えるべきポイント』が存在するので、そこをいかに抑えるかで仕事の再現性は変わる。意識しなくてもできることは意識させなくて良い。人の集中力はたかが知れているので、仕事の時間全て集中は無理。

ちょっと違う表現かも知れないけど、僕は野球をやっていたので、集中力のグラデーションは自分で意識して管理していた。チャンスの打席で最高のパフォーマンスを出すためには、集中力管理は絶対なので。(そんなに簡単にコントロールできないですけど)

チーズケーキでいうなら、ただ混ぜるところで集中力を100%にする必要はない。話しながら楽しく混ぜれば良い。ただ計量や焼き上がりなどは集中力マックスで判断するべき。この集中力の使い方までスタッフに共有すると、本当に楽しく働けると思う。やるべきことをやっていれば、それ以外に縛ることは必要ない。(倫理的な観点は必要)


『人件費は変動費、1日8時間週休2日は最低条件と決める』

これは今だに悩むことがあるが、決めてしまえばその中でどう会社をやりくりするかを考えれば良いだけなので、もう決め切った。

初めはこんなに短い労働時間で何が出来るのか不安しかなかったが、自分の修行時代を振り返っても圧倒的に無駄な時間が多かったので、冷静に考えれば特に問題ないことがわかった。

大切なのは、時間に使われるのではなく、どう使うかだ。

なんとなく流れる時間に自分の時間を使われてはいけない。時間はいつでも自分で管理するもの。

そして飲食業の仕組みを理解して、今の時代のテクノロジーをどう組み込み活かしていくかを考える。iphoneがある時代に、今まで通りの飲食のあり方なんていつまでも続くわけがない。

レストランなどは、客単価×客数×営業日数で売上のトップが決まってしまう。それに対する家賃の比率も変わりにくいので、如何に満席を続けるか(マイナスにしないか)という戦い方。この場合何年たってもその店舗だけでは売上が伸びないので、スタッフに払う給料も変わりにくい。

これは飲食だからというよりは構造の問題なので、このビジネスで戦いたいか否かで判断基準が変わる。そして売上を伸ばすためには稼働時間を増やすことが大前提になるので(ブランチ、ランチ、ディナー、バータイム等)時間を多く食われる。そして前出した人件費は固定費の概念でいくとブラックな働き方になる。

こうなりやすい構造に問題があると最近は思う。そのやり方しか見てない(知らない)人が多く、長い労働時間の中でここに意識を向けられる人が少ないからか。

だからこそ1日8時間労働週休2日という制約の中でできるビジネスを真剣に考える必要がある。そのために何をどうすれば良いのか。今までの半分の時間で何ができるのか。2時間を1時間にするのは簡単だが、16時間を8時間にするのは容易ではない。だからこそやり甲斐があるのだが。

制約と誓約、選択と集中、格調と拡張。

この三つが僕のテーマ。

チーズケーキだけでなく、これからの事業における大切なテーマ。


他の仕事でもそうだが、時間の価値が圧倒的に上がっている。時間への意識を変えて行くことが、これからの働き方において大切だろう。


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新しい料理人の働き方から、個人でどう生きていくか、どう価値を生みだしていくかを色々な視点で書き綴ります。月3~4回ほどの更新なので、定期購読がお勧めです。

曜日や時間、場所に捕らわれずに料理を自由に表現するためにレストランを辞めた料理人の働き方を変えていく奮闘記。 これから増えていくだろう料理…

皆様の優しさに救われてます泣