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田舎町。

 前職の職場は田舎だった。ホテルも何も都会の人間が思いつかない外国語名をつけて悦に入っている人達ばかりいて、その割には人呼ばわりが乱暴だったことが印象的だった。

 そこを行くと都会のホテルと言えば、「山の上ホテル」という呼び名の方がよっぽど親切である。もっとも下町に行けば乱暴な言葉遣いなのは聞いて分かっている。あの田舎町も下町の流れを吹聴していたがエスプリも何もなかったこともまた印象的だった。

 作家先生たちもプリズンホテルよろしく締切間際に編集者に軟禁されていたというあのホテル。私も生活のため仕方なく、あの田舎町に年齢要件ゆえにスタックして軟禁同然で四半世紀過ごしていた。障害を得て申し開きができなくなり、私は辞めた。心は正直だ。

 本当は実父や叔母の勤めるところが良かったのだがコネと思われると不利だからと暗に受験を断られた。いや、組合が有名無実な田舎町ではコネが横行していた。代議士、議員、医者の子弟ばかりが引き立てられ、昇給ストップ昇進ストップの私は臍をかむ思いだった。

 だったら私も都内に残りたかったがどういう訳かできなかった。その結果が統合失調症罹患である。理不尽だ。父は職場では横柄だったらしい。役所は奥は闇である。ジョセフ・コンラッドではないが、闇の奥である。

 できるならあの田舎町には足を踏み入れたくなかった。嫌なことばかりあった故郷を離れてみたかったが、更に泥沼に足を取られて身動きが取れなくなった。
 足抜けしたまではいいが沼気に当てられたか、精神を病んでしまった。そうだよな、あれでまともでいられる訳ない。命を絶った同僚も数知れず。

 ずるい同僚もいた。外部通報してもなお涼しい顔して親戚のコネで昇進していたのが奴。奴は友達のふりをして私の大切な価値観や時間まで踏みにじっていった。最後に孤立して行き場がない宣告されてもむしろ本望。タッグを組む相手を間違った。これで人生の1/4はムダになった黒歴史だった。

2024/03/09 ここまで

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