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タイでのクリスマス

タイは、12月は乾季で、比較的過ごしやすいとされているのだが、やはり暑い。日中、バンコクの街を少し歩くだけで、じっとりと汗をかく。
だからと言って、ずっとエアコンの効いた宿の中にいるわけにもいかないので、通りを散歩しては、日陰に入ったり、コンビニで涼んだりしていた。

その時も、適当な木陰に腰を下ろして、タイの甘いコーヒーを飲んでいると、目の前のお粥を売る屋台で働いている若い女性が、道路の先の方をそわそわと気にしていることに気づいた。
しばらくすると、スクーターに乗った男が、女性の視線の先から走ってきて、屋台の手前でスピードを落とすと、ゆっくり女性の背後をすり抜けた。その瞬間、女性はエプロンのポケットから、何百バーツかを出すと、男にサッと手渡した。男はそれを慣れた手付きで受け取ると、止まることなく、そのまま何処かへ走り去って行った。

すばやく、そしてあっさりと場所代が支払われるのを、俺は木陰でこっそり盗み見ていた。俺の横では、物乞いの老人が、ハーモニカで同じ曲をなんどもなんども繰り返し吹いていた。弱々しい音色が、さらに弱々しく聞こえた。
二車線の道路は、車とバイクで溢れていて、その道路を挟んだ向こう側には、立派なデパートがこちらを威圧するかのように建っていた。道路に面した一階のショーウインドウには、Merry Christmas!!の文字が、キラキラと華やかに輝いていた。

「ああ、もうすぐクリスマスか。タイのクリスマスは、寒くないのか。」
思わずつぶやいたとき、すぐ横で、ハーモニカがまた同じ曲を奏で始めた。

#Xmas2014

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