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誇れるもの

 四年が経った。3月11日。あの時、俺は茨城県牛久市の住宅街にいた。
 まず、地鳴りが聞こえてきた。
 外にいたので、航空機の音だろうと、最初は思った。
 しかし、その音はいやにながく、遠くから響き、不気味に耳にこだました。
 不快な重低音が、空気を、辺りを震わせていた。
 次の瞬間、大地が激しく横に移動した。
 地震だと気付き、その場で、足に力を込めて踏ん張った。立っていられないというほどではなかった。
 次の大揺れはすぐにきた。この地震の震源地がもしも首都圏だったら、日本はとんでもないことになるぞ。揺れの中で思った。視界の端で、路上駐車の四トンダンプカーが、トランポリンで遊ぶ子どものように弾んでいた。

 大きな震災のたびに、日本ではなぜ暴動が起きないのかと、海外メディアは驚き、瞠目する。阪神淡路大震災の時もそうだった。
 スーパーでは、食料品を買い求めに来た人々は、皆、整然と列にならび、停電でレジが動かなくなってしまうと、商品を棚にもどし、静かに店をあとにした。
 日本人には、この素晴らしい民度の高さがあり、これは胸を張って世界に誇れるものだ。世代をこえて大切にしていかなければならない道徳精神であり、これからも、災害が起こるたびに、その輝きは増すだろう。

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