安藤忠雄

昨日京都に着き、宵越しの金は持たぬほど飲んだ。今日は大阪に行った。

安藤忠雄さんの講演会を聞きに行くためだった。経営者向けだったので名刺もでっち上げた。

タイトルは いかに仕事を作るか だったが、内容としては安藤さん自身が行っているワークやPJTを通して どう生きてきたのか ということに関する知見がほとんどだった。中でも印象的だったのは安藤さんの「自然」「文化」に対する姿勢である。

直島という、瀬戸内海に浮かぶ小さな島がある。2,500人程度の小さな島の中に、広大な林と世界にも類を見ない地価の美術館を併せ持つ自然とアートの共生を志向した島だ。50年前の島の写真と現在の島の写真を投影してもらったとき、あまりの自然の回復具合に驚いた。ゴルフ場としてリゾート開発された場所を、人ひとりの寿命が尽きるほどの時間をかけて林に生まれ変わらせていたのである。聞くところによると、ユニクロの柳井社長に頼み全国に募金箱を設置したところ、1年間で1億円もの資金が集まったというから驚きだ。いまは林からプランクトンに生まれ変わった栄養が、新しい命をはぐくんでいるのだろう。日本にある1500の島の中で、回復したのは幾つだろうか。つぶした島はどれほどだったのだろうか。

これから私が関わる人たちが、何十年後かには社会を使ってこんなことができるようになっているかもしれないと思うと武者震いがした。きちんとしたリスペクトや真摯な態度を取ったうえで地球を遊び場のように飛び回る安藤さんは、果てしなく暗い時期もあったのだろう。ただ、未来と希望、努力を全肯定する姿にはやはり憧憬がある。

島の人々は美術館ができることにずっと反対だったらしい。7年前、来島者が4万人に満たなかった時あたりまでは根強い反対運動があったようだが、近年で10万人を超えると「コーヒーでも出そうかな」というように新しい経済に参加する人たちが生まれ、肯定的かつ自然に発展していった(輝いたという表現をしていたのが印象的だった)という経緯を聞くと、共生や経済圏の在り方を考えさせられる。


P.S

叔母の家に泊まっているが、ボレロ、小津映画、芝居や若き日の暮らし、世代の責任など、話は尽きない。人と会って食卓を囲むことを、これからもいとおしいと思い続ける心を持とうと思う。



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