続 自己責任

父はその後、心筋梗塞で亡くなりました。
平成に置いていきたくなかったので、今書こうと思いました。


重い話、今違うって方はこの後読まないでくださいね。


朝起きると、母親が話しかけてきました。

「お父さんが変なの」

部屋を覗くと、父が寝ていました。
でも、一ミリも動かなかったんです。
大きな寝息も何にもきこえなかったんです。


母は救急車を呼んで、近くの学校にAEDを取りに行きました。
私は父の名前を呼びながら、父の体を動かし続けました。

でも父は、二度と自分で動いてはくれませんでした。
ほどなくして救急車が来ました。
隊員さんは駆けつけ、応急処置を施し、そしてゆっくりと父を三階から救急車まで運びました。

あ、救急隊の人たち、急いでない
そっか、もう助からないんだ

不思議と冷静でした。


処置室に運ばれた父は、何人ものお医者さんや看護師さんに見守られていました。

「心よりお悔やみ申し上げます」

担当医のその言葉が、父がこの世からいなくなった瞬間でした。



警察の霊安室で、父の顔を見ることができました。
ついさっきの血色はどこにもなくて、脱脂綿を詰められて目を閉じた父。



もう今日からのこと話せないんだ
もうおかえりって言えないんだ
一緒にお風呂入れないんだ
一緒にビール飲めないんだ
おやすみって、言えないんだ

そう思った瞬間から、やっと涙がこぼれました。



親族が集まっている警察署の部屋では、みんな一様に押し黙って怪訝な顔を浮かべていました。
何かまだ疑問が消えなくて、受け入れられないという顔。
ああ、まだこの人たちの中に父は居る。

そう思えたから、私は気丈に振舞えました。



いまもまだ、父の存在は私の中にあります。
日に日に大きくなっている気さえします。



忘れてしまったら父が居なくなってしまうから、私はここに書きます。
この時代も一緒に居たいから。




読んでくれてありがとうございました。

またどこかで



日々是口実








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?