会うこと、喋らないこと、喋れない人

モロッコで会った現地の方で一番思い入れがあるのは、帰りの飛行機に呪るための空港に送ってくれたアブダラハマンさんです。
長いのでアブって呼びますね。

アブの良いところは、直感的なコミュニケーションがとても上手なことでした。アブはアラビア語しか話すことが出来ず、わたしは勉強不足で挨拶と数字しか伝えることができません。それでも仲良くなれたのは、アブが私の行動から読み取る情報があまりにも膨大だったからでした。


朝四時に空港から車で一時間ほどのところにあるフェズという街に着いた私は、モロッコ人との慣れない座席競争や食い物不足によってかなり疲弊していました。しかも時刻は朝の四時。控えめに言って死にたかったです。
千鳥足でバスを降りた私に近づいてくる一人のおじさん。歯のない笑顔を見せながら、どこに行くのかと身振り手振りで聞いてきます。正直もう伝えるために使う労力が残っていなかったので、とりあえず両腕を使って飛行機の翼を表現してみたところ、オッケー乗れ乗れというジェスチャー。

怪しすぎますよね。本当に空港に連れて行ってくれるかも、適正な値段で乗せてくれるかどうかもわかりません。唯一救いだったのは、乗り合いタクシーだったことです。複数の人が乗るということは、共通の方角に向かう人を選んで乗せていることは確実です。もう乗る予定であろう二人の乗客は、なぜか知りませんが運転手と同じくらいの熱量で私のジェスチャーを見て手招きをしていました。


いっちょ乗ったるかということで、飛行機は深夜便だったこともあり、このおっちゃんたちにかけてみることにしました。
結果から言うと賭けは大成功で、適正どころか友達になったよ割みたいなものが効いて、半分ぐらいの値段で連れて行ってくれました。


凄かったのは運転手アブの野性丸だしなコミュニケーションでした。急に私のおなかに手を当てて、お前やっぱおなかなってるだろ?って顔したと思ったら露店でパンケーキとミネストローネスープ買ってくれたり、クッキーでパサパサした口を元気づけるためにかむ回数増やしただけで水スッと渡してくれたりとか。


コミュニケーションに言葉って要らないんだなと思ったのはこの時でした。


言葉に頼らなくてもこんなに分かり合えるものがあるのなら、時間やお金を厭わず人に会いに行くことも悪くないんじゃないでしょうか。



読んでくれてありがとうございました。
またどこかで。




日々是口実

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