指輪

朝、鴨川でコーヒーを飲んだ。

隣のおじさんは横笛を吹いていた。気持ちの良い朝だった。商店街を自転車でフラフラしていると、タオルをたたき売りするおじさんがいた。そこで中東柄のバスタオルを買い、家に戻った。夕食の買い出しに出た先の雑貨屋で指輪を見つけ、買った。500円だった。カラフルで、岡本太郎やゴッホ絵を連想させる柄だ。芸術に救われた気持ちを忘れないよう、肌身離さずつけていようと思う。

大学時代、芸術は私にとって知的好奇心の応答場所であり、憧憬を抱く地だった。社会人になって一年半で、それは生の肯定や救いの場に感じられるようになった。ゴッホの生命力あふれる色彩やタッチ、落語の薄気味悪さ、演劇の緊張感。見た人の心にある消えそうな火に薪をくべるような作品にたくさん出会ってきた。そのことをいつまでも忘れずにいたい。

いつか恩返しができますように。

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