コスプレ・ルサンチマン 第28回 かつお

こんばんは。わかめさん。

だいぶ日が空いてしまいましたが、ハロウィンパーティーの件をレポートしますね。

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パーティー当日、受付開始20分前、ぼくは会場の近くにある小さな公園のベンチに座っていました。予定通りです。早めに着いて、どこかで心の準備をするつもりだったのです。

コスプレは結局しないで来てしまった。
量販店で売っているようなコスプレはなんだか、安っぽくて嫌だった。かといってバイト先の社員の方々が提案してくださった想像の斜め上をいくコスプレ(清宮幸太郎、皇太子徳仁親王、etc……)もなんだか、リスクを検討してできなかった。いや、そんなの言い訳で、準備するのが面倒くさいという怠惰と一人でコスプレで参加したら痛いんじゃないかと想像してしまう自意識が、コスプレをしてこなかった本当の理由でした。いい加減この男はコミュニティの中で自分をさらけ出さずにモジモジしているような人間が一番痛い上につまらない、面倒くさい、周りにお膳立てしてもらわないと何もできない害悪な存在だと気づかないのだろうか。心の底からは気づけない。

とにかくコスプレをせずに来てしまったのだから、今この現状でできる心の準備をするしかない。会場に入る。コスプレしてる人が多数いる状況を想像しておく。たじろがないぞ。まずは近くの人に笑顔を作って挨拶をしよう。そしてしっかり話を聞いて、質問をして、話をつなげよう。あとは気になる女の子とも上手く話せたら最高だな。
 いやでも正直、心底怖い。こんなに本気でビビってるのは高校球児時代に試合中、発火寸前の不機嫌な監督を背後に感じながらバッターボックスに入るとき以来かもしれない。吐きそうだ。
 いやでも負けちゃいけない……。

そんな心の準備というより逡巡を繰り返すうちに、受付開始から15分くらい経ったちょうどいい時間が来ました。演技めいてふぅ~っと息を深く吐きながら立ち上がり、公園から会場のビルへゆっくり歩き、エレベーターに一人で入り、ボタンを押し、上昇し、会場のドアを前に緊張のピークでウッとなりながらも、グッと開けて入りました。

心の準備も何も吹っ飛びました。目に入ってきたコスプレを身にまとう人々。これ、ダメだ。

のび太のコスプレしたお前。くすんだ黄色のポロシャツと紺ショーツ、そしてライン入りソックスが異様に似合ってるな、おい。スタイル良すぎだろ、おい。のび太のくせして、絶対、スクールカーストの下部にいた経験ないだろう。どうせ大学のサークルでもサブカル×お洒落×優男枠でおいしい立ち位置占めてるんだろう。そんでもって彼女はサブカル風味というよりは、どうせ普通の美人なんだろう。あとかけてる黒ブチメガネ、絶対いいブランドのやつだろう、それ。

アラレちゃんのコスプレしたギャルっぽい二人組。自信が無さすぎ。「アラレちゃん」という「いやらしさを感じない」、言い換えるなら女子内でしか通じない共通言語「かわいい〜!」系に逃げるな。攻めてるように見えて、表だって誰からも批判されないやつだからな、それ。男はそれじゃそそられないぞ、何とも思わないぞ。あと、君らのような「うんち〜!」とか下品な言葉をキャッキャと言う女子をときどき見かけるんだけど、それは何のアピールなんだ? 分析できない。

で、逆にジャイ子のコスプレしたアホみたいに美人なあなた。確信犯でしょ。絶対、自分のこと可愛いとわかった上での、あえてのジャイ子でしょ。ジャイ子のコスプレというより、車のCMでジャイ子のコスプレをした前田敦子のコスプレ寄りだよ。ベレー帽かぶってても、激しくセクシーな女性を初めて見たわ。自信満々でかっこいいけど、自信満々だから苦手だ。

全身に黄色の「DANGER」テープを巻きつけて騒いでるお前。せっせと準備してる光景を想像すると、DANGERどころか健全すぎて涙が出るよ。少し遅れて出てきたのも準備に手間どったからなのかな。時間が経って冷めた料理を食べるのもテープが邪魔して一苦労でかわいそうだ。

マリオのコスプレをした明らかに普段は「こちら」側の君。すげえよ。頭が上がらん。慣れてない雰囲気は出てるけど、周りに積極的に話しかけてる。しかも料理の配膳をしたり、飲み物を持ってきたり気配りも頑張ってるじゃないか。少し経ったら、ちゃんと周りに溶け込んできた。笑顔が引きつってるけど、本当にすごいなあ。

それに比べて、お前。そう、ひねくれて周りを見てるお前は何をしてるんだ。会場に入ってから、隅の方のイスに座りっぱなしじゃないか。本当しょーもないな。コスプレもしてないし、何のために来たんだ、こいつ? 虚勢を張って飲めないワインが入ったコップを持ちながら「ぼくはここらへんで見てるのが好きなんです」風を必死に出そうとしてるけど、周りから見たらただの「イケてないやつ」だ。お目当ての女の子も話しかけに来てくれたのに、どんな話題をふればいいかわからなくて、すぐに会話を終わらせてしまった。

こんな脳内独り言と平行して、ぼくは自分の情けなさに打ちひしがれていました。今回は深刻でした。正直、「覚悟を決めれば俺だってできるよ」ってずっと思ってたんです。まさに「俺はまだ本気出してないだけ」と。いつでも本気を出せば社交性を発揮できるんだ、そして今回はその本気を見せてやるんだ、と意気込んでいました。

でもできなかった。パーティー会場に入って、にぎわう人たちを見た瞬間に、本能レベルで萎縮して心がフリーズしてしまったんです。話しかけてきてくれた人も数人いたけれど、どうやって話せば、振る舞えばいいか、頭も身体もわからない。四則演算ができなくなったような気分でした。

「俺はまだ本気出してないだけ」と思ってずっと甘えて生活しているうちに、自分が思う「本気」がはるか上のレベルになっていたんですね。それは意識しても出せない、自分が思う何倍も覚悟を持たなきゃ出せない力になっていたんです。野球をやっていたとき「練習を1日サボると取り戻すのに3日かかる」というのが常識だったのに、なんでぼくはコミュニケーションや生活スキルではそれが当てはまらないと思っていたんでしょう。

パーティー会場の隅で所在なくそんな反省をしていたら、知らない人に声をかけられて、いつの間にか、カボチャの前に座っていました。なんやらカボチャ彫りコーナーに空席があって、人を探していたみたいです。

ぼくは嬉しかった。このパーティーでやっと初めて居場所ができた。無心でカボチャをひたすら彫り続けました。

できました。

そしたらだいぶ時間が経って、パーティーが終わりに近づいていました。

ぼくは荷物をまとめて、早めにそそくさと帰りました。

カボチャは持ち帰って、玄関の外に飾りました

そして家について、落ち着ける……と思ったんですけど、受けたダメージは大きかったようで、自己嫌悪とムシャクシャがおさまらずノートに反省を書き殴ってから寝ました。自分にしか意味がわからないくらい汚いのですが、あえてさらします。

(左上に思ったこと、右上にそう思った理由、左下に問題点、右下に改善策を書いています。ここで赤裸々に日記を書くより、こういう個人的なメモを見せるほうが恥ずかしいですね)

以上でハロウィン・パーティー・レポートを終了とさせていただきます。あまりに身がなかったので気になっていた女の子のことは書きませんでしたが、もちろん全く距離が縮まらず、パーティーでいつもの自分を発揮してしまったという結論です。

次回はわかめさんのために「平気で浮気をする男たち」について書くつもりです。どうぞよろしくお願いいたします。

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童貞と都合のいい女の交換日記

カツオ→21歳、慶応ボーイ、だけど(素人)童貞。地方出身。 ワカメ→21歳、美大生。恋愛はしてるけどあまりうまくない。
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