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正しさに呪われていた

Lemonticというバンドでボーカルとギターをやってます、ハマダと申します。来る2020年9月30日にバンドの1st mini albumをリリースいたします。タイトルは『INU』。変な名前〜

■リリース情報

Lemontic 1st min album『INU』
DL / ST:2020年09月30日(水)リリース
価格:¥1,000 + 税
<収録曲>
1. 吠えてみろ
2. ロマンスに御用心
3. 内緒
4. 返信(distance between two of us)
5. つもる話
6. I LOVE YOUが聞こえない

配信ストアはコチラよりご確認いただけます。
Instrumental版はコチラから。

今まで創作活動について文章で残したことがほぼありませんでした。せっかくの機会なので、アルバム制作に至った経緯を備忘録的に残しておこうと思います。ただ、これは本当に本当に僕自身の個人的な価値観の話がメインで、作品の正解な訳ではないし、聴いてくださった方の解釈が全てだと思っています。変なバイアスがかかったら嫌だなぁとも思ったのですが、何の説明もなしに「受け取れ!」と言うのも無責任かなぁと思ったので、「僕はこんなこと考えて制作してましたよ~~」というのをつらつらと書きました。そんなん知りとうないんじゃ、曲だけ聴けばええやろ!派な方は、作品だけ愛して頂ければ幸いです。そもそも人は分かり合えないので大丈夫です。以上、長い言い訳でした。

自我と機能

就活(ちょうど『Let Me Know』という曲をつくった頃)あたりから数年間、ずっと「正しさの呪縛」から逃れようともがいていました。いや、正しくあれよ!と思うのですが、その「正しさ」の正体とは一体全体なんなのか、よく分からずモヤモヤしていたのです。

勿論、法に触れることや人道に反することは普通にダメですよ。ここでの正しさとは周囲がふんわりと捉えている「正しそうなもの」を指してます。就活の例で言えば「公務員の方が安定しているから良い」とか「大企業に勤めたら勝ち」とか。あとは「30歳までに結婚」とかか。多いですよね、そういう類の呪い。ありもしない正解や理想と実際の自分のギャップに挟まれるのが、あまりにも辛かったのです。それらを跳ね除けられるような強さは持っていなかった。期待を裏切り、嫌われることが怖かった。周囲が正しいとするものごとの最大公約数的な人生は一体誰のものなんだと。そんな風に自分の心に纏わりついた呪いに対して、最近ようやく折り合いをつけられるようになってきたのです。

僕は会社員をしながら音楽をやっています。平日はフルタイムで働き、夜や休日に音楽活動に勤しむ日々です。好きでやってるので別に勤しんでるつもりはないのですが。社会に属して仕事をして改めて実感したのは、社会人として求められているものは自分自身ではなく自分に備わっている「機能」なんだということです。共通の目的に向かって進む集団の中で、自分が周囲にどんな価値を提供できる機能が備わっているか。属する社会によって機能の価値は変わるし、価値が高いと周囲が判断すれば給料や役職が上がっていく。更に言えば、自分の管理コストをいかに下げるかが大事なので、上司の仕事を奪ってくと給料は上がっていく。少なくとも自分が属した社会のルールは至ってシンプルでした。

最初は自我と自分の機能が切り離せていなかったため「やりたくないけど、やんないと」という先述の呪いと同じ構造のしんどさがありました。普通に会社行けなくなったことあるし。しかし業務に慣れていくと、次第に楽になっていったのです。それは、目的に沿った行動や意味を考えることが、自我と切り離して考えられるようになったからです。やりたいとかやりたくないとか関係なく、今自分に最大限出来るかつやるべきことを粛々とやっていく。つまり「正しさ」に対し別に100%共感する必要はなくて、求められている機能を果たしていこうと思えるようになったのです。売上目標に対して「知らんがな!」という気持ちは一旦脇に置いといて、どうすれば達成できるのか考えられるようになった、みたいな。こうやって文字にするとめちゃくちゃドライやし鼻につくな。少し大人になったということで勘弁してください。

他方、ずっとこれだけだと心が死んでいくなという感覚もありました。だって自分の意思と関係なくやるべきことをやっていくって本当に機械と変わらんし。労働したくね〜〜!という気持ちと、やるべきことはちゃんとやりたいという感情が当たり前のように同居しています。日によってバランスは違いますが。きっとキャリアを重ねていくと、自我と機能が重なる部分が見つかるんだろうなぁとも思いますが、まだ少し先になりそうです。そうやってお仕事に励むにつれ、創作意欲が湧いていくのは自然な流れでした。仕事に取り組むことで自我が浮き彫りになり、向き合わざるを得なかったからです。クソデカ感情、創作にぶつけるしかない。

と、いうことで、昨年末辺りからめちゃくちゃ個人的な価値観にフォーカスして楽曲を作りたいモードになっていました。創作に至るまでの前フリが長すぎるな。

愛と絶望

で、具体的に何を作りたいのか整理するために、自己分析のようなテストを行いました。書き出された40個ほどの価値観の中から、自分にとって大事なもの、共感できるものを10個選びます。そこから5個に絞り、更に4個、3個…と絞り込んでいくというもの。これで最後に残った、自分にとって最も大切な価値観が「愛」でした。そんなベタなもんが一番なんか〜〜〜〜いと自分でも笑っちゃったんですが、同時に腑に落ちた部分もあったのです。たしかにラブソングいっぱい書いてきたし。いろんな言動の源泉に愛があると信じてるんだな〜と。じゃあそこに向き合った作品を作っていこう、ということでアルバムテーマの一つに「愛」を据えました。大きく出たな。

もうひとつのテーマが「絶望」です。正しさの呪いが薄まってきて改めて感じたのは、生きていくことは絶望と折り合いをつけていくことだなということ。基本的に世界は無茶苦茶で優しくないし、人と人は分かり合えないし、望んだものは大抵手に入らないし、一時的に満たされてもいつか飽きてしまうし、出会いの後には別れがあるし。やってらんねぇな!!とよく思いますが、それでも僕は人が好きで、分かり合いたいと思ってしまいます。そのためには重なる部分だけでなく重ならない部分にも目を向けて、受け入れていかないといけない。絶望を受け入れてようやく、愛し合うことができる。だから、愛と絶望はセットで描かないといけないなと思いました。若干論理が破綻してる気もしますが、ほぼ直感だから許してくれな。

これが名刺になる

テーマはざっくり決まりました。更にもうひとつ、念頭に置いていたのがこのアルバムがバンドにとって最初の作品になるということです。こんなバンドなんです~という名刺代わりの作品になるのだから、これから3人でどんな音を鳴らしていきたいかをモヤモヤと探り続けていました。探りすぎて結成からリリースまで2年もかかってしまったワケですが。結果、僕たちにとってとても普通で、自然なバランスの6曲が揃いました。実は製作期間中、トータルで15曲くらい作ったのですが、コンセプトやら納期諸々加味して今の6曲に落ち着いたという感じでした。(つまり納まりきらなかった曲がまだまだ沢山あるのですが、その曲たちはまた別の機会に…)構成は意図的にポップスに寄せた選曲になっています、マイナー調の曲ないしね。

ちなみに、『INU』というタイトルはもう本当に全然意味がありません。ただの直感。裏の裏をかいてストレートに『Kind of Love』とかにするか?とも思ったのですが、心根が捻くれているのでそんな真っ直ぐキラキラしたタイトルは付けられませんでした。ミスチルの桜井になりたい。馴染みがあるけど違和感が残る、かつ6曲から漂う雰囲気を言語化しようと行き着いたのが『INU』でした。

ちなみに、気楽にオフラインで会いづらい状況下だったため、レコーディングはすべてオンラインで完結させました。もともと引きこもり気質なので何ら問題なく進みました。メンバー全員宅録ミュージシャンでよかった~~~~!!僕が作ったデモを基に、二人がどんどん色をつけていってくれたような感じです。身内のことを言うはアレですが、二人とも演奏が上手いのよ……リズム隊が生になることで一気に曲が化ける瞬間がたくさんあって楽しかったです。せっかくなら演奏の細部まで楽しんでもらいたい。いいテイクで録れてるし!という思いから、Inst版を同時リリースすることにしました。ボーカルがない分、各楽器の細かいニュアンスも聴き取れます。DL版のみでのリリースなので、購入頂いた場合は歌ってみたなど商業利用を除いて好きに使って頂いて大丈夫です。僕は性善説で生きています。皆さんを信じます。信じ者だけが救われます。アーメン。

更に更に、せっかくついでにもうちょっと楽しいことが出来ないかと思い、スタジオライブを撮影しました。アルバムリリース日の9月30日の20時にプレミア公開、全編無料でご覧いただけます。アーカイブも残ります。アルバムの特典DVDに入ってるスタジオライブ、みたいな感じをイメージしてセトリを組みました。いい音、いい映像、いいライブです。レコーディングとライブではアプローチが変わるし、それぞれ違った良さがあるのでどんなバンドか目撃してもらえたら嬉しいなと思います。全員だいぶ緊張してるのは内緒よ。

■スタジオライブ映像プレミア公開
Lemontic Studio Live 2020 "HON(n)E" at time Tokyo
2020年09月30日(水)20:00~
https://youtu.be/F6TRBBNftAA

めっちゃ書いちゃった

以上です!すごい長くなっちゃったな。紆余曲折ありましたが、無事に完成して良かった。しかし『INU』というアルバムはLemonticというバンドにとってはじまりにすぎなかったのです…個人としてもバンドとしてもやりたいことはまだまだあるし、僕らは変わっていきます。変わらないのはグッドミュージックを作り続けるということ…(ダセェな!)

あとは聴いた人の中でそれぞれの意味になってくれれば、作った甲斐があったな~と思います。楽曲の歌詞についてはアキレスと亀というバンドのともきくんがかなり詳細にレビューしてくれたので、是非そちらも併せてご覧ください。

今後とも音楽聴いて貰えると嬉しいです。では、次のアルバムで。

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