2022年度教科書展示会1

本日もよろしくお願いいたします。今年もこの時期になりました。今年は日本史探究、世界史探究等の科目の新教科書が展示されていました。開催時期は2週間で、それ以降は各地方の教育委員会に問い合わせて期間外閲覧をすることができます(僕もその期間を有効活用しています)。
本日は、昨日から開催(地域・会場によって開催期間は異なる)されました教科書展示会の簡単なレポを行いたいと思います。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。

■最初に

まず、注意点として、教科書展示会では撮影などの行為は禁止となっております。そのため、写真に撮って個人で利用する行為もダメです。もちろん、SNSなどにアップするのはもってのほかです。
一部の内容は各教科書会社様でも公開されているところがありますので、そちらで基本的な構成は見ておくといいでしょう。

今回第1弾は日本史探究を中心に報告したいと思います。

■日本史探究

今回は日本史探究を閲覧しましたが、今回採択された日本史探究の教科書は以下の7点です。

【日本史探究の教科書】
・詳説日本史(山川出版社)←詳説日本史B
・高校日本史(山川出版社)←高校日本史B
・日本史探究(実教出版)←日本史B新訂版
・精選日本史探究(実教出版)←高校日本史B新訂版
・日本史探究(東京書籍)←新選日本史B
・高等学校日本史探究(第一学習社)←新刊
・高等学校日本史探究(清水書院)←高等学校日本史B

以上、7教科書となっています。左矢印になっているものは旧教科書の対応です。今回の改訂で「新日本史」(山川出版社)が採択されていませんでしたが、著者の大津透氏が詳説日本史及び高校日本史の著者に移ったため、詳説日本史の内容に新日本史の要素が入っていました。そのため、今回「新日本史」の採択がなかったのでは、と思います。

今回中心となって閲覧したのが、「詳説日本史」、「日本史探究」(実教出版)、「高等学校日本史探究」(第一)、「日本史探究」(東京書籍)の4冊でした。余力を見て清水書院の日本史探究も見ました。

大きく変更があったのは、詳説日本史でした。時代別配列は大きく変わっていませんでしたが、近代で経済史を単独で扱ったことで、歴史のテーマ的な動きができていた点です(東書などは従来通りの配列だったので)。
そして、作品が大量にあった近代文化史ですが、予想以上に絞られていたのが目につきました。これで文学作品で目くじらを立てすぎなくてもよくなったのでは、と思います。
ただし、探究として、というなら使い勝手は微妙なところですが、「歴史総合 近代から現代へ」の流れを受けているのであれば、このような構成は予想されたかな、と思います(ただし、歴史総合の著者と詳説日本史の著者が必ずしも一致するとは限りません)。

もう一つ注目したのが、今回から新規参入(以前に出ていたかはわかりません)した第一学習社の日本史探究です。こちらの大きな特徴としては、2ページ完結で各ページ・テーマごとに様々な形での問いを設定しています。これは歴史総合の流れを受けている感じがしました。その問いでも考察や対比などを明確にしていたので、もしかしたら論述対策にも意識があるのでは、と思いました。
文化史については大きく他社と異なるのが、文章表記ではなくビジュアル中心にしているところです(テーマによっては文章表記しているところがある)。そのため、文化史の内容を整理するには少し他社の教科書で保管する必要があると思います。

■寄進地系荘園の例で

今回気になった個所としては、寄進地系荘園の扱いです。こちらの方はもう少しチェックする必要があるので、確認しないといけない話があります。
参考文献として「荘園」(中公新書)を挙げて話したいと思います。

「荘園」内で鹿子木荘かのこぎしょうはかつては寄進地系荘園の例として挙げているが、時期的ズレを指摘されていたため、今回の教科書改訂でどう変化していたのかを注目していました。

【寄進地系荘園の例】
・詳説日本史、高校日本史→鹿子木荘の史料を活用
・日本史探究(実教)→鹿子木荘から上野国こうずけのくに新田荘にったのしょうに変更
・日本史探究(東書)→鹿子木荘の史料を削除、事例はスルー
・精選日本史探究→旧版でも事例はスルー
・高等学校日本史探究(清水)→最初から上野国新田荘を使用
・高等学校日本史探究(第一)→上野国新田荘を使用

と、新説を利用して鹿子木荘の史料を敢えて外してきた感じでした。それを考えると、「荘園」の影響は大きい気がしました。
また、「荘園」では寄進地系荘園とは言わずに免田型荘園、領域型荘園と明記しています(ただし、寄進地系荘園と表記するのが誤りではないが、区分がしにくいという理由で敢えて寄進地系荘園という表記をしていないそうです)。
第一や東書などでは領域型荘園という表記をしていました。寄進地系荘園をそのまま使ってるところもあるが、大抵のところは領域型荘園と明記を変えていました。詳しくは「荘園」(中公新書)のP104を参考に見ていただけると幸いです。
なお、日本史用語集(山川)で確認したら、領域型荘園という表記は2教科書であるそうです。
となると、今後の入試で上野国新田荘が入試で出ると想定するなら、そのときに寄進をした源義重みなもとのよししげ(新田義重)が出題される可能性があります。なお、今回記載されていた教科書では史料はないですが、図式については記載がありました。図表では寄進地系荘園の例として鹿子木荘を例として挙げています(もし他の例を出している図表がありましたらコメントなどで教えていただけると幸いです)。

■実教と東書、清水は大きな変更はないが……

実教、東書、清水については基本的なレイアウトなどは変わりませんでしたが、探究に関する意識は予想よりも大きいと思いました。「日本史探究」(実教)を推している先生もいるみたいです。僕は実教、東書、清水については探究の学習に対しての評価は高いです。ただ、テーマ的整理となるなら、詳説日本史、高校日本史の評価が高いです(高校日本史は詳説日本史よりも平易になっています)。
そのため、基本土台は詳説日本史、探究学習なら実教、東書、清水がいいと思います。予想よりも第一の出来が悪くないので、知識補完として使うには悪くないと思います。

これらを参考に、次年度の購入教科書の優先度を考えようと思います。
今のところ、詳説日本史、日本史探究(実教)、日本史探究(東京書籍)、高等学校日本史探究(第一)は確定です。あとは清水書院も購入予定になります。余力を見て、精選日本史探究(実教)、高校日本史(山川)も入手しようと思います。

次回レポートは世界史を行いたいと思います。

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