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マルチカメラ配信をやってみた話

この記事は「clusterユーザーと創造する非公式 Advent Calendar 2022」の24日目です。

皆様、メリークリスマス!いかがお過ごしでしょうか。シャケ食ってますか?komatsuです。
23日目のアドカレは公式・非公式ともに熊猫土竜さんの記事でしたね。
EJはいいじぇぇぇ。


さて、本題に入ります。
昨年秋に初めてイベントに参加してから一年、おかげさまで多くのイベントにカメラマンとして関わらせていただきました。
その中でもプロカメラマンモードを使ったマルチカメラ配信(ワールド間中継を含む)について事例をまとめようと思います。
表記のゆれなど読みづらいところはありますが何卒ご容赦ください。

先に具体的な事例について述べ、後半にお気持ちとかポエムといった「こんな風に考えてます」というのを述べていこうと思います。
なので気が向いたら読んでみてください。

第一部:技術的なことについて(事例)

ベースとなるシステム構成(VDO.Ninja)

能書きはあとで述べると書きましたが一点だけ。
目指したことは「誰でも気軽にイベントカメラに参加できる体制を作りたい」ということでした。
映像自体の質を維持したまま、いちカメラマンの立場で見た時にどれだけ参加しやすくできるか。
とにかく参加のハードルを下げたいと思ったことがきっかけです。技術的にも心理的にも。(あと金銭的にも)
たとえば音楽系のライブイベントで複数のカメラマンが参加できれば、主催者としては(雑な言い方ですが)保険を掛けておけるし、カメラマン視点で考えるとそのうち一人が新人さんでもカメラワークだけに集中できて、必要以上に重責を担わなくてよくなります。
うまくいけば演者さんの活動に映像を使ってもらえたり…なんてね。

戻ります。

初期の頃のイメージ図

上記イラストは初期の頃のイメージです。協力者を募って、何をやりたいのかを説明するときに使っていました。
画像にある「NDI」というのは大雑把に言うと映像伝送用の規格で、ネットワークを通じて高画質・低遅延で映像をやり取りできるというものです。
当初はこれの無料ツールである「NDI Tools」を利用したかったのですが、なかなかうまくいきませんでした。
試行錯誤する中でDolphiiiinさんから教えてもらった「VDO.Ninja」という無料のWebサービスを利用することにしました。
VDO.Ninjaの設定方法は「複数カメラマンによるclusterイベント中継 OBS(VDO)Ninja編」をご参照ください。

システム全体としてはイベントの規模が大きくなるにつれてどんどん複雑になっていきますが、一人のカメラマンとして参加するなら…という視点で見ていただければむしろシンプルになっているのがわかると思います。

事例①:熱血ライブハウス竣工披露パーティ

cluster界の狂犬(ネズミ)、熱血プータローさん主催のイベント。
4月に開催されました。

カメラマンとしてかせーさん、Dolphiiiinさん、YoshiRockさんにご協力いただきました。また本番には都合がつきませんでしたが、準備段階では龍飛さんにも参加していただきました。

  • それぞれのcluster画面をVDO.Ninjaにて共有

  • komatsu側「vMix」のWEBインプットで各カメラマンからの映像を入力

  • 3カメ映像を切り替えながら配信

という構成でした。

配信ソフトvMixの画面
左下側の小画面1~3は各カメラマンからの映像です

上記はvMixという配信ソフトの画面ですが見慣れない方が多いかも。
安心してください。vMixにできてOBSにできないことはほぼありません。

カメラ的には実証実験のような企画でしたので、カメラワークや画質は欲張らず、かせーさんは「引き」、Dolphiiiinさんは「寄り」、YoshiRockさんは「一般ユーザー視点」という役割分担でDiscordで声を掛け合いながら撮影しました。
当初から予想はしていましたが、ハード的に可能か?ということ以上に「どのように連携できるのか?」という課題の方が大きいな、と感じました。
要するに「どういう画作りをしたいのか」が共有できないと、カメラマンそれぞれの良さを生かせない。
プランニング、ディレクションがとても重要であるということがわかりました。

事例②:「CUBEの中の世界再び(再び)」結果発表会!!

cluster界の押井守こと、9191さん主催のイベント。
6月に開催されました。

カメラシステム概念図

手書きで読みづらいですが、システムを組んだ時の概念図です。前述のプータローさんのイベント直後に公式から画面共有機能がリリースされ、もう一歩早ければ、と悔しかったので活用してみました。
komatsu視点ではPC2台体制で徐々に複雑になってしまっていますが、カメラマンのたもんさん視点では自身の画面をVDO.Ninjaで送信してるだけです。(音声周りなど他にもいろいろ工夫はして頂いてますが)
思い付きではありましたが受賞作品の発表イベントということで

「○○賞は……こちらです!」→共有画面の切り替え。

といった感じで演出と技術がうまくマッチできたんじゃないかと思います。(これについては後述します)

事例③:納涼祭

cluster屈指のイベンター、龍飛さん主催のイベント。
夏の終わりの3DAYS。そのうち1日目と2日目に配信をしました。

龍飛さんが書かれた Cluster Creator #1 Advent Calendar 2022 「clusterで人生を賭けたイベントをしたいあなたへ。」はイベント運営に興味のある方には是非読んでおいていただきたいです。

 ③-1:1日目【前夜祭】「盛りすぎた…」

プラン検討時のメモです

わりと構想初期のプランどおりの構成です。贅沢な体制ですね。
かせーさん、momonga13さん、華月さんの3カメ体制。
komatsuのメインPCは音声専用、サブPCは会場内を見渡すためのモニターです。
テクニカルリハーサルでkomatsu側のPC処理または回線速度がネックになっていることがわかってきました。
なので配信に欠かせないラインを根幹に決め、本線(配信)に絡まない優先度の低いものからパージしていけるように組んだような気がします。

アーカイブをご覧いただくとわかりますが、開始早々音声に問題が発生しています。常にプツプツと途切れるような感じです。
早い段階で各カメラマンへの返し(各カメラマンが配信映像を確認する)を遮断しましたが開始早々サブPCが落ち、程なくしてついにはメインPCのclusterも落ちてしまいました。
幸い配信の回線は生きていたので映像を流し続けることはできましたが、音声は完全に消えてしまっています。
アーカイブの音声から当時の状況を振り返ると…

19分ごろ komatsuのclusterが落ちる(配信の音声が聞こえなくなる)
その後、カメラマンからの音声を配信に乗せられないかを試す
(一瞬だけDiscordの音声が乗ってしまっている箇所があります)
20分ごろ cluster再起動(ポーン、と起動音が鳴っています)
22分ごろ ホーム入室音(チリーン♪)
23分ごろ イベント会場に復帰(音声回復)

こんな感じでバタバタしていました。
cluster復帰後も音声は途切れ途切れ。各カメラの同期もだんだんズレていく状況でした。
お笑いイベントや音楽イベントではタイミングが重要です。この状況は何とかしなければ…
というわけで1日目終了後、構成を根本的に見直すことになるのでした。

 ③-2:2日目【本祭】「一番重いのは…」

cluster界のバリバリ伝説こと、ばくだんさんもカメラに加わり、問題の洗い出しから始まりました。
できるだけkomatsu側のPC負荷、回線の負荷を軽減させなければなりません。

1日目のkomatsuメインPCにかかっていた負荷は大まかに言って
・カメラ映像(映像デコード処理・受信)×3回線
・配信(映像エンコード処理・送信)
・収録(映像エンコード処理・PC内部)

つまり、映像処理はデコード×3・エンコード×2
ネット回線の負荷としては受信×3・送信×1
(返しの1回線は開始直後に削ったのでノーカウント)
こんなカウントの仕方が正しいかはわかりませんが…

このうち、どれか一つでも削ればかなり安定することはテクニカルリハーサルの時点で分かっていました。ですがどれも大事な回線なのでなかなか難しいところです。
どうしたものか…と頭を抱えてしまいましたがよく見ると上記以外にもう一つ、映像処理・回線ともに高負荷のアプリが動いていたことに気づきました。
そうです。一番重いのはclusterだったのです。

komatsuは中継車からみんなの活躍を見守ります

ということで本番中komatsuはclusterを起動せず、3人のカメラマンから映像と音声をもらい、Discordで連絡を取り合いながら映像を切り替えていく、という方法を取りました。
会場外からの配信はさながら中継車でのオペレーションのようです。
かせーさんは独立した回線でワールド間中継。(NoLimit→納涼祭)
配信の本線には絡んでいないのでkomatsu側PCの負荷的には影響がありません。
そちらのラインはかせーさんに完全お任せでしたが臨機応変に対応していただきました。

1日目、2日目で演出内容やお客さんの密度が違うので一概に比較はできませんが、配信の音声が聞き取れないという状況は回避できたように思います。
課題は多くありましたが、ゴースト参加者が出るほどの大規模イベントで限界値がどのくらいなのか、そのあたりの上限やボトルネックが見えてきました。

事例④:観客のコメントで撮影する動画の内容を決めたらどうなるの!?選手権!

いつもカオスなイベントで楽しませてくれる、てつじんさん主催。
今回も相変わらず狂ってます(賛辞)

komatsuの動画はイベント開始10分ごろからです。
他の皆さんの動画もすごいです!
公式のCluster GAME JAMと並行して制作されていて、狂ってます(賛辞)

レギュレーションをすっ飛ばしてマルチカメラとワールド間中継をさせていただきました。無理言ってすみません。
実を言うとお題が決まる前から…前述の納涼祭の頃には「これしかないな…」と思ってたんです。(本イベントのお声掛けは納涼祭前にいただいていた)

ライブパートの構成表

かせーさん、華月さんの2カメ体制。納涼祭の経験もあって連携がスムーズに行き、構成表などの記録は残っていません。共通言語がある程度できてきたのはありがたかったです。

会場内の配置
えぬふしさんのたいやきアバターにも注目です

冒頭とエンディングの動画はみや猫さんのワールド「プライベートビーチ」で事前収録、ライブパートの会場はYoshiRockさんの「Cyberpunkライブハウス META JACK」をお借りして非公開イベントを立て、生中継をやりました。VDO.Ninjaで送られてくるカメラ映像を、vMixで切り替えて爺動画JAMの会場に画面共有で送出しました。
今回は、スゴイ出演者の皆様(語彙力!)の一曲限りのステージが映えること、これが重要と考えカメラ割りを事前に構成表に落とし込むことにしました。
結果は…出演者、スタッフの皆様の力に助けられてスゴイ映像になったと思います。
ディレクションはまあ、ねぇ。
(アーカイブを見ると緊張のあまり挙動不審なのがわかります)

華月さんからはVR視点の映像
微妙にぶれていることで迫力が出ますね

ひょっとしたらという予感はあったのですが、歌イベントなどではVRからの視点も織り交ぜるとダイナミックな映像が撮れます。
手振れやノイズを相手にkomatsuは何年も戦ってきました。ブレや色差ノイズが解消できずに何度徹夜したことか。これらが臨場感を生むための要素になるなんて皮肉なものです。

事例⑤:想月亭 年忘れ歌謡祭 日本の歌、心

cluster界きってのマルチプレイヤー熊猫土竜さん主催。年末イベントとして4時間フルの歌謡祭です。
演者の皆さんが凄すぎて全体としてはまだ言語化できていないのですが…

今回のイベントはテレビの歌番組のイメージということでウォーターマーク(画面端の透かしロゴ)やローワーサーズ(画面下側の曲目などの文字)を多用する必要がありました。(自分から言い出した気がしなくもない)

おはよう真夜中さん。満月が似合いますね
昭和歌謡がテーマなのでタイトルは大きめに

ロゴと帯のデザインは猫日和きゃりこさんによるもの。満月のテーマにぴったりですね。

メインカメラを龍飛さん、サブカメラとタイトル出し・配信をkomatsuが担当しました。
昭和のテレビ番組なので歌い手さんのアップもなるべく捉えたい。ということで以下のようなシステム構成にしました。

だんだん要領がわかってきました
サブアウトの収録はkomatsuカメラ単独の映像で録るべきだった…

ハード的な負荷もおおよそ把握できて来たので今回は画質を重視し、龍飛さん→komatsu間のビットレートをギリギリまで上げてみました。

PGMの返し…実際にどんな映像が配信されているのか、というのを龍飛さんに返す回線ですが、こちらは反対にギリギリまで解像度やビットレートを下げます。
YouTubeの配信は数十秒のタイムラグがありますが、VDO.Ninjaはコンマ数秒のズレで収まっているのでリアルタイムでの確認をするには実用度がかなり高いです。
リスクを避けるため、PGMの返しは開始早々にカットしましたが…

このシステムによってマルチカメラを活かした「オーバーラップ」という手法を使うことができました。

パラシュート降下中の魔法少女ジュリーシュネーさん
「きゃー!こっち見てー!」シュネーの視線にカワイ子ちゃんたちはメロメロ

1オペでも頑張ればできないことはないのですが(至日レイさんが実際にやっています)2カメそれぞれの画角を「いい感じ」に合わせるのは熟練の技が必要です。
この方法であれば、「生モノ」であるライブイベントでも柔軟な対応が可能です。

VDO.Ninjaでの中継について、当初の課題は画質の低下をどれだけ許容できるか?だと思っていましたが、ことYouTubeの配信に関しては全体のシステム構成次第で高画質寄りに攻められるな。と思いました。
ただ、今回は若干攻めすぎてメインカメラの映像がコマ飛びしてるような個所もあります。
これに関して問題点として見えてきたのが、komatsu側のネット環境です。

上記ツイートは先述の爺動画JAMイベントの期間中、進捗として上げたもの。
それまでルーターからスイッチングハブを介してメインPCにつなげていたのですが、長尺のLANケーブルを自作しルーター⇔PC間を直結しました。
検証の詳細は省きますが、これだけでも回線速度がかなり安定しました。
ルーター自体も安価なものを使っているで改善の余地はありそうです。

こうして振り返ってみると
・どこまで多機能なことができるか探る
・ライブ配信を成立させるためにシステムを再構成
・安定性、品質を向上する
という順にほぼ一年かけて取り組めたことがわかります。自分でもびっくりです。
ご協力いただいた皆様に感謝。


ここまでは僕がやってみたイベントでの事例を具体的に書いてきましたが、もう少しだけお付き合いください。
こういう機会でなければ何時までもアウトプットしないままになってしまいそうなので…

第二部:目指したこと(ポエムです)

きっかけ

繰り返しになりますが、複数カメラマンでイベントカメラをやろうと思ったのは「誰でも簡単にカメラマンとして参加できる仕組みはないだろうか」と考えたのが始まりです。
「clusterのイベントでは慢性的にカメラマンが人手不足」というのは僕がイベントスタッフを始める以前からよく聞く話でした。

昨年11月に700年ぶりに開催された「第一回カミトコ祭」で初めてカメラマンとして参加したのですが、人手不足の意味がなんとなく分かりました。
イベントカメラの楽しさがわかると同時に、カメラマンもっと増えないかなぁと思ったのがきっかけです。

第一回カミトコ祭「朗読祭」
この頃は「スクショってどうやるんだ?」という状態。

分析してみる

カメラマンの人手不足について自分なりに考えてみたのですが、

  1. 難しそうでよくわからない

  2. やることが多くて大変そう

  3. つよつよカメラマンは他にも強い

  4. 責任が重そう

この辺りが参加のハードルを上げているんじゃないかな。
以下、一つずつ分析してみます。

1.難しそうでよくわからない

イベント全般に言えることですがclusterでは「こんなことまでできちゃうの?」という素晴らしい機能が満載です。
ですが、できあがった映像を目にすることはあっても実際にどんなことをやっているのか、というのはなかなか見えてきません。(イベント中カメラマンはそもそも見えないし。)

「なんか難しそうだし、私には無理かな~」

イベントカメラに多少興味があっても、そんな風に考えている人は多いんじゃないでしょうか。
始めの頃は僕もあれこれと心配になっては機材を追加し、最終的に要塞のようなシステムになってしまうことが多々ありました。

今年3月のMETA JACK Rock ON!!
正直なところ、これはやりすぎ。

今でもたまにこういう写真をTwitterにあげることがありますが、ほぼネタです。ここまでする必要は全くありません。
これが「カメラマン=難しいし機材がたくさん必要」というイメージにつながっている可能性もあり、反省しています。調子に乗ってすみませんでした。

実際はclusterが動作するPC1台、それにゲームパッド(安いやつでいいんです)があれば撮影と配信の環境は整います。
僕のように機材に頼る方法もありますが、いろいろ聞いてみると凄腕のカメラマンほどシンプルな構成で撮っているという印象です。
ノートPC1台とゲームパッド1つで超エモい撮影をする火星のパンダや海底のネコもいるらしいです。

何でもそうですが、突き詰めれば確かに難しいです。
イベントカメラなんもわからん。
でもやってみると意外とできることも多いです。
そしてなにより楽しい。

この楽しさを常に発信し続けることも大事かも。
「ね?簡単でしょ?」と言葉で説明しても説得力ないですけど、それこそボブの絵画教室のように繰り返し制作過程を見せることで、思ったよりも簡単に、そして楽しい!ということが伝わっていくんじゃないだろうか。

2.やることが多くて大変そう

1.の内容と被ってしまいましたが、本番のカメラ操作以外にやることが多いということです。
これは自分でも技術的なハードルが一番高いと思う部分です。
イベント本番中は生ライブの一発撮り操作ですし、画質・音質に気を配りながら配信もしなければなりません。
また、準備段階では会場の空間を把握し、音楽ライブであれば曲や演出の雰囲気に合わせたカメラワークを考えなければなりません。
確かにこれは大変です。
このタスクを分担できたらもっと参加しやすくなるんじゃないかなぁ…

3.つよつよカメラマンは他にも強い

これはclusterが楽しすぎるというのが原因です(断定)
ワールド制作やアバター改変、またはシンプルにフレンドと一緒に遊ぶなど、この世界には魅力的な楽しみ方が沢山あります
clusterには何でもできる「つよつよユーザー」が大勢いるじゃないか!と思われるかもしれませんが、イベントカメラに興味を持って「すごい映像」を撮れる人は「他のことももっとやりたい!」という傾向がある気がします。

先に触れた火星のパンダもワールドクリエイター・イベンターとして多岐にわたって大活躍中で、最近はイベントカメラマンとして活動している姿を見かけません。

「爺動画JAM」に集められた参加者たち

爺動画JAMでカメラマンとして召集された参加者(被害者?)の皆さんですが、komatsu以外は他の分野でも活躍している人(ネコ?ぱんだ?)ばかりです。
結果、カメラマンを募集してもみんな忙しくて集まらないという状況につながります。

本番の時間だけでも…いろいろ準備しなくても参加できる方法があれば…
「カメラ楽しいからまたやりたい!」
と思える環境があればいいなぁ。

4.責任が重そう

上述を包括する要因ですが、規模の大きいイベントであればカメラマン自身が主催することや、逆に主催者や演者がカメラマンをやることはほぼ無いかと思います。
つまり、カメラマンはいつも誰かのイベントをサポートする立場で参加することになります。
演者さんの中にはライブ映像をご自身の活動に役立てたいと思っている方も多く、せっかくの機会をしょぼい映像で無駄にはできないですよね。
「練習だと思って気軽にやってください!」と言ってもらえることもありますが、それでもなかなか緊張します。

そういった緊張もある中で、演出に合わせたカメラワークを決めていかなければなりません。
カメラマンに限らずイベント全般で一番大変なのは「決めること」「判断すること」ではないでしょうか。
心理的にハードルの高い部分です。

気軽に参加できる方法を、と言ってきましたが当然その責任の部分を誰かが担う必要はあります。
逆に、それさえ明確になっていれば最初の入り口は緩くてもいいんじゃないかな。

おはよう真夜中さんの「黎明」MVではkomatsuが撮影した映像を一部、使っていただきました。これはホントに嬉しい。つい自慢しちゃいますね。

話が前後しましたが、上記1~4にまとめたようなことを感じながら、第一部の試行錯誤につながるのでした。


第三部:心掛けていること(ポエムが続きます)

長々とお付き合いいただきありがとうございます。
この章で終わります(多分)

この1年、clusterのイベントに参加してみて見えてきたことや考えたことなどをまとめます。
今書いておかないと一生書かないのでこの場をお借りして。(くどい)

「演者さんを好きになってください」

短い期間ではありますが、komatsuはリアルのイベント現場にいたこともありました。その時の師匠が口癖のように言っていたのが「演者さんを好きになってください」ということでした。
若い頃はあんまりよく分からなかったんですけど、最近ようやく分かってきたというか、自分なりに咀嚼できるようになってきました。
なかなかその通りにはできませんけどね。

音楽ライブに限らず、演劇やお笑い、ファッションショーやセミナーなどclusterはイベントが充実しています。大規模なものからユルいものまで様々ですが、何かを伝えたい人がいて、それを見たい・聞きたい人がいます。
イベントスタッフはその両者を繋ぐためのポジションだと思っています。
スタッフである僕らが「この人の声を届けたい」「一番カッコいい・かわいい・美しい瞬間を捕らえたい」と思えなかったら、とても勿体ないことですし、おそらく伝わるものも伝わらなくなります。

Sha-laさんのMV撮影
視線を独り占めでドキドキしちゃいますね

初めてお会いする演者さんでも、「この人の魅力はどこだろうな~」って探すのが楽しくてしょうがない。最近はそんな感じです。
(多分、無理して頑張らなきゃ、と思ったら仕事になっちゃってよくないんでしょうね)
なので皆さん、カメラやりましょう。楽しいです。

会場はただの「ハコ」じゃない

ライブハウスやホールなどの会場を「ハコ」と呼ぶことがありますが、もともとこの言い方、好きじゃないんです。
まあ便宜上、その方が通じやすいので使いますが(そこまでポリシーがあるわけでもないので…)ただの入れ物じゃないんですよね。
言わずもがな、clusterのイベント会場はクリエイターさんの作品です。
ワールドのどこに作者の魂が宿っているのか、いつも探しながらカメラを振ってます。

rYoHuさん主催「男子の夢 半周年記念ミニライブ」
うわー!巨大ロボかっけー!かっこよくないですか?!ねえ?!(語彙力)

参加者の存在は大きい

マイケルジャクソンの"Live In Bucharest"とかがわかりやすい例ですが、聴衆の様子もまた、ライブの熱気を伝える大事な存在です。
今更言うまでもなく、こっちの世界ではアーティストやイベント会場に合わせて姿を変えることもできます。みんな思い思いに着飾って(?)推しのイベントに参加します。
アバターと身体論について言及すると果てしないことになるのでここでは触れずに置きますが、演者・ワールド(演出やEJ)・参加者が一体となる瞬間をカメラマンという視点から見ることができるのはちょっと特別なことじゃないか、とも思うのです。(なので皆さん、カメラマンやりましょう)

技術は人をつなぐために

画面共有が実装された時からずっと、ワールド間を中継できたら面白いな…と思っていました。
技術と演出の関係については第一部でほんの少しだけ触れましたが、最後に象徴的な出来事を記しておこうと思います。

ラジオ体操部に必要だったもの

毎週末の恒例イベントとして開催されている「clusterラジオ体操部」(VulpeSさん主催)ですが、以前は通常ワールドにておこなわれていました。※リンクは現在の通常ワールドのものです

ご存じの通りclusterでは同一のサーバーに入れるのは最大25名までです。
今年の春ごろから参加者が10名、20名と増え、ついには25名を突破し遅れてきた人が参加できないということが起こり始めました。

遅れてやってくる人の方が初参加の場合が多いので
「来てみたら誰もいなかった」
「何をやってるのか分からなかった」
ということになってしまいます。

どうしたものか…と思っていたところに、ちょうど画面共有の機能が実装され、私komatsuはピンときました。
「画面共有でワールド間をつなげれば解決するんじゃないか?」
2PCで第1サーバーの様子を第2サーバーのスクリーンに送出すれば、遅れてきた人もラジオ体操に参加できる。そう考えたのでした。

そしてある日の朝、予想通り第1サーバーが満員になるころにkomatsuは意気込んでサブアカウントを立ち上げ、第2サーバーに行ってPC間の接続や音声の設定などをあれこれと始めたのでした。
すると次の瞬間、入り口付近でモタモタしているkomatsuをよそに一人の美少女が駆け抜けていくではないですか。
高千穂マサキさんです。
「ステージ前に集まってくださーい」
マサキさんはステージに上ると普段通り説明をし、第2サーバーのラジオ体操は穏やかに執り行われていきました。

そう、ワールド間中継なんていう思い付きの小手先の技術は必要なかったんです。同じ空間で一緒にラジオ体操をする、そのことが重要なのです。
スクリーンに映し出された映像を見ながらでは何の意味もありません。

その後、人的なリソースやセキュリティ、大人の事情について多くの方が知恵と技を出し合い、今の形になっていったのはご存じの方もいるかと思います。ラジオ体操部に必要なのはこっちでした。

技術的に面白いアイディアがあると、ついそれ自体が目的化してしまいがちです。
clusterでの体験をより豊かにするために必要なものかどうか、演出として効果的か、という視点を忘れずにいたいなと思います。
何気ない日常の一コマでしたが、僕にとっては示唆を与えてくれる出来事でした。

最後に

長々書いてきましたが、読んでいただきありがとうございました。
なんだかすごく…説教臭いですね…
「人が足りないなー、困ったなー」
というのは半分くらいほんとです。
でもあとの半分は
「楽しいからみんなやろうよ!」
なのです。

とにかく皆さん、軽率にやってみましょう。
始め方がわからないという方もいると思いますが、
今度、何か考えます。よろしくお願いします。

カメラマンをはじめご協力いただいた皆様、cluster運営の皆様、ありがとうございました。

明日はいよいよ非公式アドカレ最終日。大トリは熱血プータローさんです。人工知能についての、なんかすごい話が聞けるみたいです。

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