好きな漫画をめっちゃネタバレしつつ紹介する。「天 天和通りの快男児」

天(てん)という「おじさん」(30歳後半くらい?)が主人公の麻雀の漫画です。

ギャンブル漫画でお馴染みの福本伸行さんの作品です。

ただ、この漫画はギャンブル漫画としては異例の作品で、

この作品の魅力を語るならば、「赤木通夜編」に尽きるかもしれません。

それまでの「麻雀勝負」の方も麻雀の技術、考え方が描かれており、麻雀漫画としての質も非常に高いのですが、やはり通夜編は名言のオンパレードであり、この天という作品を有名にしたものでもあります。

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登場人物

東陣営

天…本作の主人公。作品初期では漫画自体の方向性も定まっていないこともありギャグテイストな行動もあったが、東西勝負編からは義理人情に厚く、麻雀の腕も確かな博徒としてのキャラクターに固まった。

ひろゆき…連載当初は大学生。小遣い稼ぎのために頭を使ったデジタルな麻雀をしていたが「理」を重要視するあまり慎重になったり、ここぞの場面で一歩を踏み出せないようなきらいがある。自分を負かした天や赤木の影響でより強い相手を求めるようになり東西決戦へ挑む。

赤木…「神域の男」「鬼神」「百年に一人の天才」といわれ、数えきれないほどの伝説を持つ。桁外れの才気に死をも恐れぬ精神と、神域にまで達するといわれる強運・直感を持ち、華やかさと静けさを併せ持つ天衣無縫で大胆不敵な麻雀を打つ。立場や名声が自分を束縛するという主義を持ち、東西決戦の後、アルツハイマーになるが、「自分が自分でなくなる」前に、過去の敵だったものや味方だった者と話し、自ら安楽死を選ぶ。赤木通夜編とは、この安楽死を前に赤木が過去の対戦者と話すシーンをまとめて言う。

銀次…ガン牌という麻雀におけるイカサマ(時には純粋な技術)を使いかつては名を馳せた老齢の雀士。

西陣営

原田…暴力団の組長で、「現役の王」「赤木の再来」とも言われる現役最強の打ち手。目的達成のためには手段を選ばない非情かつ強行的な男だが、その根は麻雀に魅せられており、最終戦では天との決着を付ける為に自らの利益もかなぐり捨てて、二人麻雀による一騎討ちを望んだ。しかし最後は理をかなぐり捨てた天に敗北を喫した。

曽我…赤木が現れるまでは裏世界最強と呼ばれた「怪物」。十数年もの長期にわたり勝ち続け、無敗を誇った伝説の存在。赤木が登場したことで、かつての自分が霞んでしまい赤木をライバル視している。

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麻雀の利権をかけた東陣営VS西陣営の勝負が物語の中心となります。

熱戦に次ぐ熱戦の末、天と原田の一騎打ちにより、天が辛勝。

東の勝利となり、メンバーは解散。

そして大熱戦のその日から9年後。社会人になったひろ(ひろゆき)は、

「本当にこれでいいのか」「赤木さんや天さんのように、世間体を気にしないで自分らしく生きることが大切なのではないか」と悩みつつも、世間の目から脱せられず、普通のサラリーマンとして悶々とした日々を送っていました。

家に帰って一服しようとするひろゆき、床に散らかっていた新聞を片付けようとしたときある一文が目に飛び込みます。

「赤木しげるの逝去に伴い左記の通り告別式を執り行います」

あの伝説の赤木しげるが死んだ…にわかには信じられないひろゆきが会場に到着するとそこには赤木しげるが確かに棺の中に横たわっていました。

線香もあげ、帰ろうとするひろゆき。しかし何かひっかかります。

すると、ある黒服の人に呼び止められます。そのまま、寺の離れの部屋に案内されます。そこに赤木が現れます。

ふざけてるのかと問うひろゆきに赤木は答えます。

「嘘じゃない…今日は俺の葬式なんだ…」

聞くと、赤木はアルツハイマーにかかっており、いつ「自分が自分でなくなってしまうか分からない」とのこと。つまり赤木は、そうなる前に自ら死を選ぶ。

その最期を迎えるにあたり、話しておきたい人を集めたというわけです。

赤木は別室にいるので一人ひとり来てほしいと言われひろゆきも広間へ通されます。そこにはかつて東西戦で死闘を繰り広げた面々が。

喜ばしい再開も束の間、各々が赤木に思いを馳せ、何を伝えようか考えます。

他でもない、あの赤木という偉大な男が自分で決めたことだから口出すことじゃない、と思う人もいれば、赤木という男を死なせてはいけないと思う人も…

そして最後の、各々の赤木との会話が始まります。

全てを載せることは出来ませんが、心に残った場面を紹介します。

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まずは、この葬式の会場となった寺の住職、上では紹介しませんでしたが、東西戦を共に戦った男です。寺の手配から、安楽死の手配まで済ませました。赤木は椅子に腰かけたまま、ボタン一つ押せば腕に差されている管から筋弛緩剤が通り安楽死出来る状態になっています。

この住職は言います。人が死ぬと言ったときに、それを止めるようなことをせず、赤木のような人間が死に向かうのを肯定してしまった。自分は、何て冷たい人間だと…

そこで赤木は言います。

「冷たい人間がこんな面倒なことに首を突っ込むもんか…

冷たい奴ってのは、いつだって傍観者だ… 

あんたは…温かい男さ…!」

そして住職は言います。

ここまで準備したことだし、何より赤木という男が決めたことだ。もう俺からは何も言わない。ただ、これから先…死を選ぶなという人が何人か出てくるはずだ。もしその中で戸惑ったら…それを恥と思わず、死ぬことをやめてくれ。

そして赤木は答えます。

「突っ込まねえよ・・・意地じゃつっこまねえ・・・

 迷いが生まれたら引き返そう・・死ぬときは・・・心から死ぬ・・・!」

こうして、一人目が終わります。

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次は銀次です。

銀次は、赤木の「死」についての考えを聞きます。そこで赤木が答えたこととは

「要するに砂や石や水…通常俺たちが生命などないと思ってるものも

 永遠と言っていい長い時間のサイクルの中で変化し続けていて…それはイコール俺たちの計りを超えた…生命なんじゃないか…と……! 

死ぬことは……その命に戻ることだ…!」

と死を語ります。

銀次は、自分が癌にかかっていることを告白します。

そして、近づいてくる「死」が怖いと泣き出します。

赤木は答えます。

大丈夫…おっかなくねえんだよ…!

 俺が…俺が先に死んでやるっ…! 

綺麗に死んでやるから…!安心しろ…! 

だから…受け入れてやれ…死を…!

 出来る限り…温かく… 迎え入れてやれ…!

俺の感触じゃ…死ってヤツはそう悪いヤツじゃない…  

出来るさ… お前にも出来る…  

俺が見てきた限りじゃ…あったかい人間はあったかく死んで行けるんだ…  

おっかなくなんかねえんだよ、銀次…

こうして2人目も終わります

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3人目は曽我。かつて赤木をライバル視しており、「赤木を倒すために生きてきた」ほどの男です。

曽我は自分が負けたまま死ぬなんて許さないといい、最期に麻雀の勝負を挑みます。

「この麻雀で自分が勝ったら、死ぬのをやめろ。

赤木、お前が勝ったら、。そのまま死んでいい。」

「引き分けだった場合はこの勝負は無かったことになる。だから引き分けの場合も死んでいい」

しかし赤木から返ってきた答えは悲しいものでした。

「俺にはもう…それがよく分からんのよ…」

どうしようもない現実に悔しさを堪えられない曽我。そこで曽我は麻雀の牌を使った簡単な「ナイン」というゲームを提案します。

麻雀を知らない人でもトランプで想像するとわかりやすいかもしれません。

お互いに1~9のカードを一枚ずつ持ち、まず先攻が一枚選んで裏返して場に出す。それを受けて後攻も裏返して一枚出し、オープン。

数字が大きい方が勝ちで、勝った方はその2枚の合計が点になります。

例えば8と4なら8を出したほうが勝ちで得点は12点。

数字が同じなら引き分け扱いでそのまま流れ。先攻と後攻は交互に代わり

9枚分行い最終的な点数で勝負を決めます。

(ちなみに1は9に勝つ、といったルールはなく単純に1は最弱、9は最強です。さらにいうなら、1は9や8相手に出すとよく、逆に9を出すときは相手が8や7のときの方が得点の効率がいいといえます)

そこで曽我は奇跡を目の当たりにします。

9回行い、9回全てが引き分けだったのです。

曽我が出したカードに対して同じカードを出すならまだしも、

赤木が先に出すターンの場合でも、同じカードが並んだのです。

それが9回。

曽我は涙を流します。

「こんなことがあるか赤木…?これは奇跡だ」と

「おどれが朽ちて死ぬなんて似合わん 

おどれはわしら凡人の…感覚や論理を越えて生きてきた人間…

 天外の人間や…! 

天外者は天外者のまま死ぬのがふさわしい…認めてやるわ…

それがおどれの自然だと…!死ねっ…!赤木…! 

消えろっ…!高みのまま…!」

ただただ赤木を恨み、赤木に勝つためだけに生きてきた人間が、赤木を認めた瞬間でした。

控室に戻った曽我は、かつての敵、ひろゆきと話します。

「ええよな…いらないっていう決断があってもいい… 

どこどこまでも生きなくたっていい…

 その「どこどこまでも生きなければ」という幻想が 

どれほど人を苦しめてきたことか… 

出来ることなら、人は自由に生き、自由に死んで生きたい…

 アカギはただそれをやろうとしてるだけなんや… 

なんも難しい話じゃないのさ…! 

 フフ…楽になったわ。風が通った感じや、心に…!

 俺等は 死んでいいんや…!

 恥じることはない…! 死のう…時満ちたなら…!」

そして、かつての敵の総大将、原田へ

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原田は赤木に尋ねます。本当に死にたいのかと。

わずか1%も生きたい気持ちがないのかと。赤木は答えます。

「1どころか3はあるだろうよ…3%は生きたい… 

未練がねえわけじゃねえさ…仕方のない3なんだ…

 生きている以上、生きたいという気持ちは完全には消せない…

3くらいは混ざる…混ざらざるをえない… 

まるっきりスッキリってわけにはいかねえ…

どう頑張っても混ざるものは混ざる…ならこれはもう…甘んじて受けるしか無い…

そう楽に死ねないと、諦めるしか無い…

 これが死の味と、観念するしか無い…そう…これが死の味!」

「チキンランでアクセルを踏み込む時…大穴に有り金を突っ込む時…

 微かによぎる…破滅…それ自体を求める心…! 

死んでしまうこと自体への希求・…!

そんな説明不能な危ない気持ちが… まるでゼロと言い切れるだろうか…?

 とりあえず…俺にはあった…!」

それでも分からないと原田は言います。3という少なさではあっても、生きたい気持ちがあれば生きればいいじゃねえかと。

「まぁわかんねぇだろうな…お前は積む人間だからわからねぇ…

すぐにわかった…こいつは誤解してるなと…多分、お前はこう考えた…

アルツハイマーになんかなっちまって、なんて赤木しげるはついてない…かわいそうだと…!だろ…?

ところが実はそうでもねぇ…そうかわいそうって訳でもねぇ…

上から下を見下ろすように、あっさりそう決め付けられちゃちょっと不愉快だ…俺からすりゃ・・・原田…お前の方がかわいそうだ…」

俺の何がかわいそうだという原田に赤木は言います。

「簡単だ…お前も気づいてるだろう薄々は…ろくに生きてねぇ…!お前は今ろくに生きてない…!ククク苦しむぜそれじゃぁ…死の際、死の淵で…」

かわいそうだとかろくに生きてねえだとか、何を言っていると怒る原田に赤木はさらに続けます

「だから、積み過ぎたってことさ…お前は成功を積み過ぎた…」

「おいおい、何を言い出すんだ…?悪いってのか…?成功が…!失敗しろとでも言うのか…?勝つなと…?」

「そうは言わねぇ…勝つこと、成功は必要だ…生きていく以上な…

どうしたって成功は目指さざるを得ない…

それはいい加減に生きてきた俺とて同様…

何しろ死んじまうんだ…勝ってかないとな…

だから目指す…!目指すさ…それは仕方ない…

 ただ、俺は成功を少し積んだらすぐ崩すことにしてきた…意図的に平らに戻すようにしてきた…

実は成功はなかなか曲者でよ…一筋縄じゃいかない代物…

最初の一つや二つはいいんだが、10、20となるともう余計…余分だ…体を重くする贅肉のようなもの… 

それを、お前はいいやいいやで無用心に積み過ぎだ…

動けねぇだろ…?お前今動けねぇだろ…?満足に…

まぁ最初は必要な意味ある成功だった…勝つことによって人の命は輝き光を放つ…

そういう生の輝きと成功は最初つながっていた…

なのにどういうわけか積み上げていくとある段階でスッとその性質が変わる… 

成功は生の輝きでなく、枷になる…

いつの間にか成功そのものが人間を支配乗っ取りにくるんだ…

成功が成功し続ける人生を要求してくる…本当はあえてここは失敗をする…あるいはゆっくりする…

そんな選択だって人にはあるはずなのに、積み上げた成功がそれを許さない… 

縛られている…まるで自由じゃない…

原田…正直に言ってみ…お前窮々としてるだろ…?

どんなに金や権力を手に入れたところで実は窮々としている…

成功ってやつは人を自由にしないんだ…裸を許さない…装う事を要求してくる…

つまり成功者大物らしく振舞うことを要求してくる…

 さぞや窮屈だろうぜ…!我慢してるはずだ…そんなストレスのかたまりみたいな日々を、お前は営々とこなしている…

スケジュール通り…何だそれ…?まるでわからねぇ…

ありのままの自分がどこにもねぇじゃねぇか…

金や家来をいくら持っていようと、そんなもん俺は毛ほども羨ましくねぇ…みすぼらしい人生だ…生きてると言えるのか…?お前それで…!

 棺さ…お前は成功という名の棺の中にいる…!

動けない…もう満足にお前は動けない…死に体みたいな人生さ…」

原田は部屋を後にし、もの思いに耽ります。

「その通りかもしれねぇ…おれはただそれを営々とこなす係…

番人みてぇなもの…成功を維持管理する番人…管理者…

俺が築き、勝ち取った成功が、成し遂げた成功が、どういうわけか俺を殺しにきやがる…!そうまるで棺の中にいるようだ…

そうか…なるほどな…死んでたかい…生きながら俺は半ば死んでいた…

 気が付かなかったぜ…うかうか暮らしてるとついわからねぇ…

見失っちまう…気がつけねぇ…自分ではな…」

そして残すは二人、ひろゆきと天

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ひろゆきが部屋に入ります。

そして赤木は、「ひろと話したかった」と言います。お前は今、止まっているだろ、と。

ひろゆきは赤木に、この9年間何もしていないと見透かされます。

しかしひろゆきは言います。赤木さんにはへこたれる人の気持ちが分からない…天才だから…と

赤木は答えます。

「いわゆる凡庸な奴の中にも輝いている奴はたくさんいるだろ…?

いるさ…いくらでもいる…楽しむか楽しまないかだけだ…!」

楽しむ、という言葉にひろゆきは反論します。それで勝てればいいが、勝てなかったら傷つくだけだ…!と

赤木は言います。

「そんなに悪いかな…?傷つくって…思うようにならず傷つくっていうかイラつくっていうか、そういうの悪くない…まるで悪くない…!

俺はいつもそう考えてきた…痛みを受ければ自分が生きてるってことを実感できるし、何より…傷つきは奇跡の素…最初の一歩になる…!

結局ハナっから勝つ人、負ける人なんていないんだ…結果表れるだけ…

勝ったり負けたりが…決めるなよ…自分が勝てないなんて決めるなよ…ひろ…」

それでも、とひろゆきは続けます。負けるだけならそれでいい、だけどそれが失敗に続くこともある、大きく人生に響くような失敗に…

それでもいいんですか赤木さんは

誰にも認められず軽んじられ疎まれ嫌われる。

軽蔑や貧窮、そんな人生ってことでしょ…どこがいいっていうんですか…!そんなものの!

赤木は笑って答えます。「そいつは嫌だな…」

そうでしょう!?

そんな羽目に陥るくらいなら、まだ今の方が・・・まともっていうかそれなりっていうか・・・

このひろゆきの発言に赤木の顔が変わります。

「やっぱりそこか…今ヒロは今の方がまともって言ったが…

そのまともって何…?

平均値、世間並みってことか…?そういう恥ずかしくない暮らしってことか…?知ってる…?それだぜ…!お前を苦しめているものの正体って…

お前は、そのまとも、正常であろうっていう価値観と自分の本心、魂との板ばさみに苦しんでいたんだ…

振り回されてきた…そのまとも、正しさに… 

考えてみろ…正しい人間とか正しい人生とか、それっておかしな言葉だろ…?ちょっと深く考えると何言ってんだかわからないぞ…

気持ち悪いじゃないか…正しい人間、正しい人生なんて…!

ありはしないんだって、そんなもの元々…

ありはしないが、それは時代時代で必ず表れ俺たちを惑わす…

暗雲…!

俺たちはその幻想をどうしても振り捨てられない…

一種の集団催眠みたいなもん…まやかしさ…

そんなもんに振り回されちゃいけない…

 とりあえずそれは捨てちまっていい…

そんなものと勝負しなくていい…

そんなものに合わせなくていい…

そういう意味じゃ

駄目人間になっていい…!」

ひろゆきは涙を流します。

赤木は続けます

「成功を目指すなと言ってるんじゃない…

その成否に囚われ思い煩い、止まってしまうこと、熱を失ってしまう事…

これがまずい…こっちの方が問題だ…

いいじゃないか…!三流で…熱い三流なら上等よ…!

まるで構わない…構わない話だ…

恐れるな…!失敗を恐れるな!」

ひろゆきは、赤木の死を止めようとしません。

それどころか、人生の大きな指針を与えてくれました。

そして、最後の天へと続きます。

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天と赤木の会話は人生哲学のようなものはないんです。

だからここで紹介するのは一つだけ。ですが、この天という男が泣きながらにして赤木に頼んだこと。

今までのどんな人たちでも死へまかう止められなかった赤木の心を

最期に揺さぶった一言

そして、天涯孤独天衣無縫、ただただ孤高の道を極めた赤木の

この世からの旅立ちに際し、1つの後悔も残さないようにした一言。

…天は赤木に「やり残したことがあるんじゃないか」と言います。

それは家族をもつこと。

「赤木しげるを独りぼっちで死なせたとあっちゃ…俺が耐えられない…!」

と天は涙を流します。

しかし赤木は言います。

「俺の孤立は…誰に頼まれたわけじゃない…俺にはそれがふさわしい…!」

そこで天が、ボロボロに涙を流しながら言うのです。

「違う!俺だ!俺が死なせたくねえんだ!

 俺!俺!

俺のために、生きてくれって言ってるんだ!」


天…ありがとうよ…

 最期に…温かい言葉だった…

救われたよ…

 家族はいずとも…俺に、友はいたのだ…」

でも、もう行かなきゃ… 

と言い残し、赤木は安楽死のスイッチを入れます。

薄れゆく意識の中、原田、曽我、ひろゆき…全員が部屋になだれ込んで、赤木の名を呼び続けます。

赤木は死に向かっていきます。

「手を離そう…生まれ落ち… 気が付いたら… 手にしていた… 

この赤木しげるという幻想…意識… 

 手を離そう…もうそれから…! 

今生の最後の別れは、他人に告げる事でなく…告げられる事でもなく…

 俺が…俺自身に伝える…最後の言葉…!そうだ…!そう…!

完成だ…!

多分…人間は死んで完成する…!

俺はもう…俺自身ですらなくていいんだ… 

離れる…!俺は…俺から…!

風っ…! 

何だ…?この風は…

しかし…なんていい風なんだ…!

散っていく…俺もあの葉といっしょだ…!

あ…消える…消えるな…!

そうか…これが 死か…!

よし… 行けっ…!放たれろっ…! 

 飛散しろ…!赤木しげる…!」

天やひろゆきに大きなものを残して、赤木はこの世を去ります。

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その後ひろゆきは、会社を退職し、麻雀教室を開きながら時には代打ちとして勝負の場に立ち、自分らしく生きることにしました。

銀次も治療がうまくいき元気に過ごしています。

赤木の墓は皆が気軽に行けるように、目立たない片隅ではありますが町中に建てられました。

しかし、全国から博徒がその墓に押し寄せ、少しでも運を分けてもらおうと墓を削りお守り代わりに…そのおかげで墓はボロボロに

ひろゆきが言います

「みんな…赤木の欠片を持って赤木と一緒に博打してるような…生きてるような…そんな気になってるんじゃないっすかねぇ…」 

天も呆れますが笑って言います

「まあ許してやってくれや…

みんな…好きなんだ…お前が…!」

こうして、天という漫画は終わります。

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漫画としての性質をいうなら、

1~3巻 麻雀を通した人情物の話(少しギャグテイスト)

4~15巻 東西戦(ガッツリ麻雀勝負)

16~18巻 通夜編 

となっています。

通夜編は人生哲学の名言が多く、麻雀を知らない人でも必ず楽しめます。

4~15巻は麻雀の勝負に関するものなので、麻雀を知らない人は全てを理解できないかもしれませんが、楽しめるとは思います。

この東西戦では勝負の哲学に関する名言のオンパレードです。

スポーツであれなんであれ「勝ち負け」の世界に生きる人は読んでて楽しいと思います。


以上がこの本の紹介です。

立ち読みでもぜひ読んでいただきたいと思います。



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