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南海電鉄が撤退を決めた「みさき公園」の現状を確かめに行きました

2019年3月26日、南海電鉄がみさき公園事業から撤退することを発表しました。

「みさき公園」事業からの撤退について

来場者数が減り、赤字経営が続いていることが撤退の理由であり、「レジャーの多様化」が来場者数の減少につながっていると、南海電鉄側はつづっています。

ところで、私は個人事業主であり、自分自身だけでなく他の個人事業主の方の集客相談に乗る仕事もしています。その中で「来客数を伸ばすには、次の3つのことが大切です」とお伝えしています。

1.あなたや、あなたのビジネスを知らなかった人に知ってもらうこと

2.1.であなたを知った人に「予約を入れる」「来店・利用する」などの行動を起こしてもらう

3.一度来店した人に、2度、3度と繰り返し来店・利用してもらう

ビジネスの規模が大きくなっても、小さいビジネスであっても、基本的にこの3つを考えれば、問題や解決法が分かりやすくなります。

みさき公園の来園者数が減ったとしたら、この3つのうちどこかに問題が起こったということではないかと考えてみました。

「みさき公園ってまだ運営していたの?」という声

3月26日、南海電鉄の発表を受けて、私はFacebookで「ショックだわ」などとつぶやいていました。すると、関西圏の友人から

「みさき公園って今もあるの?」

「そもそも、みさき公園が今でも運営していたっていう時点ですごい」

という声が上がりました。

この問題は1.と3.にかかわるもので、

・みさき公園の存在が意識されていない

・何度も訪問したいと思われていない

ということの現れだと考えられます。

南海電鉄や南海バスを利用している人は、みさき公園のポスターを毎日のように目にするでしょう。しかし、それ以外の地域に住んでいる人は、みさき公園を意識の外に置いてしまっているのです。

事前のネット調査で気づいた他の施設との違い

私の調べ方も完璧とは言えないので、見落としていたのかもしれませんが、他の施設に比べて、みさき公園のバリアフリー情報は見つかりにくいです。

現地へいくと、スロープの整備も行われていますし、イルカショーの水槽まわりには車いすスペースも設けられています。しかし、そのような情報が伝わっていないと、園の利用に不安を覚える人や「バリアフリー化が進んでいる他の施設へ行こう」と考える人も出てくるでしょう。これは2.の問題です。

さらに、「みさき公園に行ってみたい」という気持ちに火をつけるには「お得感のある切符が買える」という情報も有効です。

コンビニでチケットを買っておけば、現地の窓口で並ばなくてよいという情報は簡単に見つかります。

このことに加えて、鉄道利用の場合、「みさき公園わくわくきっぷ」という、往復の乗車券と入場券、さらに1000円分のMipo(園内でつかえるポイント)がセットになった切符が販売されていて、クレジットカード決済もできます。しかし、この切符については、事前に情報を得て探しにいかないと、見つかりにくいです。

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みさき公園の他にも、関西には白浜アドベンチャーワールドやUSJ、ひらかたパークなどの大規模な施設、和歌山公園動物園のように無料で入場できるお得な施設、淡輪や箱作など海水浴場もすぐ近くであり、ライバル施設がおおいのは事実です。

でも「みさき公園に繰り返し行きたい」と思う人がいれば、ライバル施設が多くても、来園者数はどこかで下げ止まるはず。これ以上は現地に行かないと分からない点です。

現地での第一印象(あくまでも主観)

でっかい象の像が迎えてくれる入り口。10時過ぎに到着しました。

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チケット販売窓口の列の最後尾から、窓口までは私が歩数を図ると、85歩ほどかかりました。60cm×85歩=51mも列ができていることになります。

しかし、園内に入ると「あれ? 人ってこれだけ?」という印象が。。。ゴールデンウィークですから、もっと人にもまれて動けないような状況をイメージしていたのですが、意外なほど空間があります。

人気のアトラクションであるシャイニースタジアムへ向かう人々でも、このような感じ。

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私は気温が上がる前に動物園を見たかったので、シャイニースタジアムをいったん離れます。

動物園を探索

優しい顔をしたロバ。

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シマウマが近くで見られるのはうれしいです。砂浴びをしていました。

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動物園では、キリンのえさやり体験などができますが、10時に私が入場した時点で希望者が多かったのか、受付が終了していました。


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アルパカに間違えられやすい「ラマ」という動物が、やや狭いスペースに展示されています。

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まだ入り口近くの辺りでも、来園者が集まりやすい動物と、あまり集まっていない動物がいます。

動物の人気の違いなのかもしれませんが、それ以上に「足元のつらさ」も影響があると感じます。かなり強い傾斜が続いていますので、ベビーカーのお子さんや、車いすのご家族を連れている人には、動物を見づらい場所もあるのです。上に載せたロバの写真も、カメラを私自身の頭のかなり上に構えて撮影しなければなりませんでした。

逆に、この写真のニホンジカは、上から鹿たちを見下ろす形で撮影しています。

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園内の案内図も、限られた場所にしか設置されておらず、できるならもう少し数を増やしてもいいのではと感じました。

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ツキノワグマやニホンザルには、自動販売機で餌を買って与えることができます。ふれあいコーナーなどで手から直接食べさせるのとは違い、檻の中にエサを投げ入れる感じ。お子さんより、お父さん方が楽しんでいました。

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この辺りで気づいたのですが、ティーンエイジャーと呼ばれる、もっとも遊びたいはずの世代の子供たちが、友達どうしで来ている姿がほぼみられませんでした。ゴールデンウィークという時期の特殊性かもしれませんが、私が子供の時と比べて、子供たちの遊び場が変わっているのかもしれません。

平日でも人気が高いと評判のシャイニースタジアムへ

いったん動物園エリアを離れ、シャイニースタジアムへ向かいます。12:30のショー開始までに30分あるというのに、座席がすべて埋まったので立ち見のみの案内であると告げられます。

「わくわく切符」でもらった1000Mipoのうち500Mipoを支払って入場します。この日はショーを10分早く始めることがアナウンスされました。

イルカへの「ジャンプ」の合図の出し方を、観客みなで練習しているところ。

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上記のような演出や、BGMの印象などが「アクアパーク品川」のイルカショーを思い出させてくれました。レーザー光線などによる派手な演出はありませんが、イルカの可愛さを強調する子供向けの演出とは違い、大人もすなおに「かっこいい」と感じられる構成です。

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イルカショーでは、もっとも芸歴が短いイルカの紹介もあり、「そのイルカがどうなっているか、次も見てみたいな」と思わせる演出が行われていました。動物は成長するものです。遊具だけが設置されている遊園地と比べて、成長を楽しみに、何度も訪れる人がいる動物園は有利なはず。そのようなファンをもっと発掘できれば、動物園の人気も高まったのかもしれません。

13時頃になるとレストランにも列ができています。お弁当を楽しそうに食べるご家族連れも増えてきます(この点についての考察は後述します)。

わくわく電車ランドへ

南海電鉄が運営している施設なので、車掌体験や運転体験ができる「わくわく電車ランド」が設けられています。400Mipoを支払って入場します。

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かつて「交通科学博物館」がJR弁天町駅にあったのですが、そのレベルを期待してしまう大人には、物足りない感じ。しかし、お子さん連れで来園した人が、急な雨に遭った場合に、お子さんを飽きさせずに雨宿りをするには良い感じの場所です。

アトラクションは全体的に小規模

園内のアトラクションは全体的に規模が小さいです。行列ができているのは、利用希望者が多いからというよりも、一度の運行で利用できる人数が少ないため、待ち時間が生じてしまうのが理由でしょう。

ただ、乗り物に乗るお子さんたちは楽しんでいます。親御さんが、お子さんを見失うことなく、近くで見守ることができるのは、利点と言えるかもしれませんね。

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園内は、お弁当の持ち込みもできます。レジャーシートを持ち込んで座っているご家族連れも多々見受けられます。アトラクションで遊ぶお子さんの付き添いを、交代ですることができますね。

しかし、お子さん方も含めて「レジャーシートの上で、お弁当を広げて楽しむ」ことで終わってしまい、メリーゴーランドに乗ろうとか、そのほかの乗り物に乗ろうという気持ちがなえてしまう部分はあるかもしれません。

みさき公園は、期間限定で乗り物フリーパスを発売していますが、基本的にはアトラクション利用のたびにお金を払います。そのため、園内でただベンチに座っている人が増えても、公園側の利益にはつながらないのが、厳しいところでしょう。

保護者の皆さんにとっては、

・都度払いの料金を負担に感じる

・保護者が同伴しなければならないアトラクションは料金がかさんでしまう

・どうせお金をかけるなら、大規模でフリーパスが利用できる施設に連れて行ってやりたい

と考えるかもしれません。

また、平日の空いているイメージが強い人たちの中から「30分も待ち時間があるなら、今日はやめよう」という声も聞かれました。他の施設ならば、1時間待ち、2時間待ちもあるところですから、私としては少し驚きました。

志摩スペイン村の「待たなくてすむ」という自虐PRが話題になりましたが、GW中には40分程度の待ち時間が生じていたという報道もありますので。

朝日新聞 「並ばない」志摩スペイン村 自虐PR成功で連休は?

動物が食べていける環境だけはつくってほしい

私がどうしてもイメージしてしまうのが、八幡平クマ牧場の事件です。(Wikipediaの記事はこちら

みさき公園は、南海電鉄でも引き受け切れなかった規模の施設なので、「存続して欲しい」という願いだけでは、どうにもならないのは理解できます。動物たちのためにも、現地で運用を続けられるかどうかは慎重に考えていただきたい。動物が食べていけない状況になれば、それが一番不幸だからです。

動物を他の施設に移送する必要もあるかもしれませんが、くれぐれも、動物がきちんと食べていける環境ができることを願います。

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終わりに

みさき公園の来客数が減った理由を大きく3つに分けて考えると、次のようなことが見えてきます。

1.みさき公園の存在が意識されていない

2.「みさき公園に行ってみよう」と意欲的になり行動を起こす人が減っている

3.「前に行ったみさき公園に、もう一度行ってみよう」と考える人が減っている

これらの問題は、どんなビジネスでも起こりうることです。つまり私たちフリーランスも「お客さんが減ってきた」と感じたときは、この3つの問題のうちどれか、あるいは全部が起こっていることが考えられます。具体的な事例の分析や取材を通して、自分のことを分析する力も磨いていきましょう。

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