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【受講生の皆さんへ】「阪九フェリーはなぜ、神戸発着ではなく泉大津発着の航路に、先に新船を投入したのだろう?」という疑問を例として

はじめに

セミナー参加者の方から

「これまで知らなかった情報を見つけ出したり、それを知識として貯めていくために『情報の検索方法』を教えてください」

という質問が出される。

「こうすればいいです」と簡単にお答えするのが、かなり難しい質問である。

なぜなら「情報を検索するに至った脈絡」によって、調べるべき情報やその順序などが異なるからである。

今回、私自身の疑問に答えを見つけるための検索過程を、ご紹介しようと思う。まだ答えとしては不完全ではあるが、あくまで「過程」を知っていただくために。

【疑問】阪九フェリーはなぜ、神戸発着ではなく泉大津発着の航路に、先に新船を投入したのだろう?

この疑問が生まれた理由は、ひとえに

・私が、単なる旅客としての視線しか持てなかったこと

にある。

単なる旅客として泉大津港に降り立った場合は、公共交通機関への乗り継ぎがとても不便である。それに、送迎バスでたどり着くことができる南海・泉大津駅やJR・和泉府中駅の周りは、ものすごい繁華街というわけでもない。

神戸港のほうが、大都市へのアクセスも便利であり、観光地としても知られているので、クルーズ船の投入効果は高いのでは? と勝手に想像していた。

以上は私の思い込みなどにもとづいた「想像」でしかなかった。

現実を見つめることで疑問点を掘り下げる

今回、実際に「いずみ」に乗船して気づいたことは、トラックドライバーの人の利用も、想像以上に多いことだ。

受付カウンターはドライバー向けと一般の旅客向けで分けられている。船内にもドライバー専用の客室やその他の設備が設けられているようだ。※阪九フェリーホームページ「物流案内」を参照

では、旅客だけではなく、トラックの輸送に関することが、そもそもの疑問の答えなのだろうか?

株主向けの資料の検索を試みる

上場している株式会社の場合、有価証券報告書に今後の経営方針が記載されている場合もあり、古い年度の書類でも、ネットで検索すれば見つかることが多い。

残念ながら、非上場会社である阪九フェリーは、検索すればいくつかの古い資料が断片的に見つかるというレベルである。

公式サイトの企業情報も、沿革や歴代のフェリーについてはよくわかるが、これは今後の経営方針を開示するためのページではない。

新聞記事や雑誌記事の検索を試みる

続いて、新聞や雑誌に掲載された記事がないかを検索する。

なお、新聞や雑誌の記事を、著作権法で許された範囲を超えて引用すると、問題となる。また新聞や雑誌の記事をそのまま鵜呑みにするのではなく、記事中の情報ソースを確かめ、自分で一次情報にアクセスする努力はすべきである。

阪九フェリーに関しては、新船の投入に関する記事がいくつか、簡単に見つかる。

【例】

産経ニュース「カーフェリー、「クルーズ人気」取り込む  阪九フェリー就航半世紀」2018.7.6

産経ニュース「復権?長距離フェリーに新船続々 景気回復追い風、安全輸送で再評価」2015.4.22

これらのニュースはGoogleで「阪九フェリー 新船 なぜ泉大津航路」という単語で検索した結果ヒットした。

記事を読んで分かったのは、

・新船を投入した理由

・新船の内部が現在のような構造になった理由

・トラックドライバーの長距離運転を是正すべきという動きがあり、運転手が眠ることができるフェリーのニーズが高まったこと

など。しかしながら、私の個人的な疑問である「神戸航路より泉大津航路に、優先的に新船を投入した理由」が直接、解決できたわけではなかった。

とはいえ、私が当初思いつくことができなかった「トラックの動き」と、新船の投入には深いかかわりがあるらしいことに、気づき始めたのは収穫だった。

「トラックの動き」について知ることができる資料を検索

では神戸港と、泉大津港で「トラックの動き」に違いがあるのだろうか?

Googleで「泉大津 トラック 走行量」と検索をかけてみる。

すると「第3章 大阪府における貨物車交通の現状と課題」という資料が表示された。この時点では、何の第3章であり、何のための資料かも不明であるが、読み進めていく。

資料の3ページ(ノンブルは36)に「1日あたりの地域間流動量(府県単位)」が示されていて、さらに4ページ(ノンブルは37)に疑問を解決するための決定的な資料が見つかる。

「1日あたりの地域間流動量(大阪府)」に、南大阪での地域内流通量や南大阪から他の地域への地域間流通量が多いことが、はっきりと書かれている。

また、資料5ページめ(ノンブルは38)の「大阪の交通軸」という図に、泉大津からは臨海部を走る道路だけでなく、内陸部に向けて走る道路も充実している様子が描かれている。

自分なりの結論

南大阪は私が勝手に思い込んでいた以上に、物流の拠点として重要視されているのだ。

それはきっと、「やまと」「つくし」に比べてトラックを数多くする搭載することができて、なおかつ燃費がよい新船「いずみ」「ひびき」を投入することで、さらにフェリーへの需要が高まることが見込まれるくらいに。

また、燃費がよいことによるコスト削減効果は、より長い航路のほうが大きくなるだろう。

この2つが、私の到達した仮の結論である。

もしも、報酬をいただいてコラムを執筆するとなれば、神戸におけるのトラックの走行量をはじめとするもっとつっこんだ調査や最新情報の確認などが必要となることは、言うまでもない。

セミナー受講生をはじめ、この記事を読んでくださった皆様へ

以上の流れをご覧いただければ分かるように、「なんらかの情報について調査する方法」を、ひと言で説明することは難しい。

・調査前に持っている情報、前提、その確かさ・不確かさ

・調査中に新しい資料に到達し、さらに関連資料を調べるという流れ

・調査して「何を一番知りたいのか」ということ

などに応じて、必要な情報が変わってくるからだ。

また、私が「仮の結論」と書いたように、これだけでは調査は不十分である。

自分なりの答えにたどり着くためなら、ここでやめてもいい。しかし、報酬をいただいて書く原稿に仕上げるには、情報源の確認、最新情報のさらなる確認、神戸におけるトラック走行量の現状、同業他社の動き、地域経済などの動きも、情報として取り入れていかなければならないだろう。

今回は「調査の過程」と、「ライターはこうやって悪戦苦闘しているんだ」という点について、ご理解いただければ幸いである。

関連記事 阪九フェリー「いずみ」に乗ってみた。

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