「下手だったから」の言葉はかなりの衝撃だった
今から5,6年前だったと思う。ライターとしても、コンサルティングの仕事でも「起業したい」「在宅仕事を考えている」という人のための話題を扱うことが増えてきたころのこと。
有名ネイリストの方が書かれた「私がサロン経営に失敗した理由」の記事に出会った。その方はコンテストでもいい成績をおさめ、雑誌にも登場していて、年齢が若かったので、これからネイリストを目指す人にとっては憧れの星と呼べる方だったのだと思う。
それでも経営に失敗したのだから、よほどすごい理由があるのか? よほど高い家賃の物件に入っていたとか? ネイルブームの陰りなど外的要因か? と想像しながら記事を読むと
「一番大きな理由は、下手だったからです」
という言葉が目に飛び込んできた。
その人によると、コンテストでは派手な配色、パーツ、それらの配置といった目立つ部分が要求されるけれど、サロンではもっと基礎的なことをきちんとやらないと、お客さんのニーズに合わないとのこと。たとえば、ジェルネイルが浮いたり剥がれたりしないよう、きちんとネイルを手入れしたり、お客さんに負担を与えないよう、手や指を丁寧に扱うということが大事なのだそうだ。
コンテストでは「それらの技術はできて当然」なので、派手な部分、個性を出しているかどうかという部分に、注目が集まりがちなのだとか。
そして、ネイリストとして活躍している人、注目を集める人がまだ数多くなかった分、若いうちにメディアに取り上げられ、勘違いや油断が生まれたことも、ネイルサロン経営に悪影響だったと、その方は書かれていた。
話は変わるが、私は「ブリティッシュ ベイクオフ」が大好きで、各シーズンの放送が日本で始まるたびに、小躍りして喜んでいる。
毎週審査を受けるベイカーたちは、腕がよい人ではある。でも、毎日コンスタントに、及第点のお菓子を作り続けなければいけないプロのパティシエとは違い、出来が良かったと思った次の週には、テレビの前ですごい失敗をすることもある。
瞬間的によいものを生み出せばよい素人と、毎日、及第点を出し続けなければならないプロとの、持久力の違いが出ていると思う。時間管理や準備のやり方、体調管理などさまざまな要素が、持久力にを与えている。
「ブリティッシュ ベイクオフ」を見ながら、プロの持久力や自己管理について考えるようになってはじめて、初めに書いたネイリストの方の記事が、腑に落ちるような気がした。
コンテストで、瞬間的によい作品を生み出せば、注目を集めることができ、メディアにも登場できる。ネイルサロンにもたくさんお客さんが訪れるし、ネイリストとして弟子にして欲しいという人も来るかもしれない。
でも、そうなったときに「持久力」「基本的なことをコツコツ続ける力」が育っていないと、体力や気力がもたなくなってしまうだろう。
「雑誌とかを見て、期待してネイルサロンに言ったのに、思ったより下手だった」
というお客さんが増えると、ネイルサロンの経営だってうまくいかなかくなる。ネイリストの方はこのような流れを経験されたのかもしれない。
また「ブリティッシュ ベイクオフ」で審査員の2人が
「アドバイスを聞かない」
「自分のやり方にこだわりすぎて成長がない」
と指摘することがある。
ベイカーとしてテレビに出られるレベルだから、高い技術を持っていることは審査員も分かっているはずだ。これまで培ってきた技術の全てを否定しているわけではなく「この部分をこうすれば、もっと良くなる」と部分的なことをアドバイスしているのだ。ベイカーの側も、これまでの経験は経験として自信を持った上で、さらに自信を持つため、より多くの人に「美味しい」と思ってもらえるように、アドバイスを受け入れてもいいのではないかと思う。
私たちライターにも言えることだが、プロとしてやっていきたいなら
「引き受けた仕事では、少なくとも及第点をもらえる原稿を書く」
ことを、1度ではなく、繰り返し続けていかなければならない。もちろん、もっと高い評価を得られるに越したことはないのだけれど、1つの仕事に力を入れすぎて、他の仕事がお留守になるようなことも、あってはいけない。
文章力や語彙力、企画力なども常に磨き続けて、よりよい記事を書くことができるよう、努力していなければ。
昨日は「ブリティッシュ ベイクオフ シーズン4」の5週目が放送された。先週はとてもよかった人が、あれっと思うようなミスをしてしまったり、体力や持久力の差が表れてくるころだ。本業がある中で、お菓子作りも続けるのは大変だと思うけど、できるなら、全員が後半戦まで残って欲しいくらいだ。
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