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2021 男の腕時計大特集

Apple Watchを買った。
去年の秋のことだ。

ラジオの生中継ディレクターをやっていた時に、現場でCASIOのwave ceptorを使っていたのだが、腕時計を身につけるのは実に10数年ぶりだ。Apple Watchは時間というか、健康維持とかそっちの意味で手に入れたところだ。

だから、腕時計で男の値打ちが云々、なんていうのはよくわからないというか、そういう世界とは無縁で生きていた。雑誌の高級腕時計特集に、目もくれることはなかった。

ところが最近、FacebookやTwitterで、私のタイムラインに腕時計関連の広告が表示されるようになった。原因は分かっている。Nさんだ。

Nさんはラジオ番組の企画・制作会社社長。放送局での営業マンを皮切りに、現在は東京と福岡に拠点を構えるプロデューサーでありディレクター。私と担当しているインターネット配信番組は9年目を迎えた。私が福岡に出向いたとなれば、美味しい店を案内してくれるし、夫婦で何かとお世話になっている。ラジオ業界、音声メディア界にこの人ありだ。

で、この方の趣味が腕時計の蒐集だ。新作、旧作に限らず腕時計のことを時折Facebookに記しているのだが、書いてあることがよくわからない。

「クロノグラフ」…聞いたことはあるがよくわからない。高級そうだ。
「インデックス」…事務用品か。
「ムーブメント」…人気商品なのか。
「メゾン」…マンションか。

高い学習意欲のある私は、その度に検索をかけていた。インターネット広告界隈では「コイツは腕時計に興味のある奴だ」と認識されていることだろう。

おかげさまで私は「グランドセイコー」が、技術の粋を結集して作られ、岩手県の雫石に、独自の製造拠点を構えていることや、山里亮太さんが昨今はグランドセイコーを愛用し、両親にもプレゼントしたことも知っている。そんな記事が流れてくるのだ。どれもこれもNさんのせいだ。

で、収録で会った際に「Nさんが時計のことばっかり書くから、腕時計用語、調べちゃいましたよ。そしたらネットに出てくる広告がさぁ!」と話すと「この世界は〝沼〟ですからねぇ……」と笑う。製品の値段もさることながら、その売買におけるしきたりのような話を聞いたが、私は「へぇ…」というしかない。

とはいえ、Nさんも憧れる「グランドセイコー」には、それなりに興味を示してしまった。これだもん。見たら、ちょっとはねぇ。

20年、岩手県は雫石にグランドセイコーの機械式時計を製造する新施設「グランドセイコースタジオ 雫石」がオープンした。施設は隈研吾設計。高級リゾートホテルを彷彿とさせる。covid-19の感染拡大防止のために、当面一般公開は見合わせているが、公開された暁には、国内外の腕時計通が足を運ぶことだろう。しかもここでしか手にできない「雫石オリジナルモデル」も販売されるという。憧れる気持ちもちょっとはわかる。すごいよ。雫石。語彙力。

「コタローさん、ハマらなくていいんですよ。こういうのは。いいじゃないですか、Apple Watch」とNさんは言う。そもそも高級腕時計に投じるカネはない。でも、そういう世界の話を聞いているだけで面白いからそれでいいじゃないか。

が、番組収録前の休憩でNさんは言う。
「でも、コタローさんね、もし1つ買うんなら、シチズンのエコドライブで3万円台のがね…」

やっぱり沼に引っ張り込むのかい。危ねぇなぁ。

【追記】
「グランドセイコースタジオ 雫石」は、2022年7月から完全予約制で見学の受付を再開しました(感染状況によって変更されるようです)。

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