インフルエンザと医療について。

うがらいてがらいしがらい。(©️笑い飯)
どうも、脳神経内科医のてっぺー(@kouryoupapa)です。専門とは外れますがこの季節、何かと話題のインフルエンザについて書いてみたいと思います。

1.予防接種は有効か。
結論から書くと「有効」です。問題はネット上でバリエーションに富んだ嘘が書かれている。代表的な3つを潰していきます。
・水銀が含まれてて有害!
最初に書きますが、薬ってのはたいてい毒(マイナス)です。ただ有害なものの中で痛みが取れるなどの利益(プラス)が上回ると判断できる明確な根拠がある毒を、医療では薬と呼んでます。マグロの切り身少量より少ない水銀による害よりも、ワクチンによるインフルエンザ予防効果が上回る。だからそこ僕は胸を張って予防接種を薬と呼びます。
・打ったけどインフルエンザにかかった!
打ってから効果を発揮するまで2週間かかると言われてます。なのでその2週間にインフルエンザに感染したと言われても、「せやな」と言う他ありません。あと予防接種は感染リスクを下げるだけであって、感染しないとか症状が出ない免罪符、という訳ではありません。
・小さい子供には無効、って言われた
これは少し難しい話で、日本でワクチンの有効性を示したメインの論文が少しアレだったのが原因です。データから考えると「小さい子供は症例数が少なすぎて信用できるほどの解析が出来なかった」と判断すべきですが、色々あって「小さい子供には無効だった」って感じのマスコミ発表になっちゃったんです。

2.タミフル系の薬は有効か
この答えも非常にシンプルで「発熱後48時間以内に使えば熱が下がるまでの期間を約1日縮めるだけ」。以上!今の日本の医療費負担システムなら使いますが、自己負担が5万円とかだったら僕は使いません。
・タミフル系の薬で異常行動が!
違います。インフルエンザにかかった時点で、既に異常行動のリスクがあるんです。そして異常行動の頻度がタミフル系の薬剤使用では増えなかった事が、既に証明されてます。薬の使用歴にかかわらず、インフルエンザが疑われる子供の親は窓の施錠などに注意して下さい。
・製薬会社と医者が癒着して売ってるんだろ!
んなアホな。皆さんは幾ら貰ったら他人に毒を飲ませますか?その答えの額(数千万?数億?)に医者の人数(日本だけで数十万人)をかけた額、そんな大金が裏で動いてると本気で思います?

3.「空間除菌」って有効なの?
無効です(断言)。あんなものに無駄金払うくらいなら、自分の好きな事に使ったり食事を少し豪華にしてストレスを減らす事を勧めます。
・空間除菌で児童の欠席数が減ったらしい
学年すらバラバラな三十数クラスのうち一クラスに空間除菌の装置を置いて、たまたま欠席者数が少なかっただけ。空間除菌装置を置いてないグループに6年生(受験生)がいたり偶然他のクラスで学級閉鎖が起これば出来上がる程度の偏りを、よくもまぁ有効なんて言い切ったなぁと思います。ガラスハートの僕からすれば、その分厚い面の皮を1mmでいいから恵んで欲しいです。
・自衛隊でも使われてます!
うん、消臭装置として、ね。
・研究室で有効性を示しました!
論文に書かれた方法を他の大学で試したら、全然効果が無かったんですけど???

4.インフルエンザの迅速検査って意味ありますか?
基本無いです。例えば僕が「この患者さんは8割方インフルエンザだと思う」と思って検査をしたとします。検査の結果で「インフルエンザの確率9割(検査陽性)」と「インフルエンザの確率6割(検査陰性)」。に割り振る。このほぼ無意味な割り振り、それが迅速検査です。
色んな事が未だわかってない医学の世界でインフルエンザに関しては、まだわかっているほう、根拠が示せるほうなんです。インフルエンザに限った事ではありませんが、変な情報に惑わされる事なく現代医学のもたらす利益を適切に享受される事をお勧めします。

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