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「 いつもありがとう 」  5

なぜだか一体感

席替えをしてからというもの
僕は 僕 を意識せざるをえなくなった。


「ごめん、名前って確か… カ ミゴテ さんだっけ?」
「そう、上小手(かみごて)」

「これからとなりよろしく!それ何の本読んでるの?」
「あ、これ? これは 『変身』 って本。」
僕は、キョドりながらも拓也の社交的な話しかけにドギマギしながら返事をした。なにせ高校に上がってまともに話したのは、前の女子がプリントを落としたので拾ってあげたら「ありがとう」と言われたくらいだ。

(きっと拓也ならそれ会話?と笑われそうだ。)


僕はこれまでこういう拓也みたいな部類とよく話したことはなかった。
だから、こういう展開になるとは思ってもみなかった。

拓也は、ぼくにポンポンと挨拶・質問・提案をしてきた。
「おはよう!」からはじまり、隣のクラスの友人が拓也に話しかけているにもかかわらず、僕にも話を振ってくる。

「おれさ、今度髪切ろうと思ってるんだけどツーブロックにしようかなって」
(知らねー。と内心思いつつ)
「いいんじゃない?つーぶろっく。」と僕は適当に答えてしまった。
「うん!うん!」拓也は満足そうな顔をしていた。

拓也が隣になってからというもの、僕は ごっちん というニックネームが付いた。拓也が ごっちん ごっちん というものだから他のクラスメイトにも ごっちん が浸透していった。

ごっちん って…。最初は変な名前だと感じていたが僕に初めて付いたニックネームだったので嬉しかったんだろう。違和感を感じなくなっていった。

 拓也は、不思議なやつだ。普通はたぶんこうはならないだろうと思うような展開を自然とつくりだすのが上手い。


僕は席替えをするまで、部屋の隅っこに置かれている観葉植物のような存在だった。あってもなくても対して変わらないような感じだ。


なのに席替えのあとから、僕は変だ。誰かが話している会話を注意深く聴こうとするようになったし色んな人と会話する機会が増えた。
原因は明確だ。
席替えをして拓也と関わるようになったせいだ。

最初は、なんで僕なんかに話しかけてくるんだろう?と疑問だった。
でも、ちゃんと話をしていくうちに ただのおもしろ半分で話しかけているんじゃない。本気でおもしろがっているんだなと思った。

正直、席替えをしてから僕の学校生活は楽しくなった。



~もくじ~

1 序章
2 対面
3 拓也
4 席替え
5 なぜだか一体感
6 ごっちんに話しかけたワケ