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「 いつもありがとう 」

小説 序章

僕はいつも 彼女のうしろに座る。
自然とそうならざるおえない。彼女と出会ったのは、3ヶ月前だ。

僕は 井の中の蛙 だった。いわゆる陰キャという部類で、友人は少なくいわゆるイケてない男子の枠である。

勉強はそこそこできる。だがこれといって何か自慢できるようなものだとか得意なものがない。僕の弱みである。中学校にあがれば何かが変わると思っていたが、さして変わることはなかった。


しかし、僕は恋というものを初めて知った。


希望していた高校に入学することになり井の中の蛙だったぼくは今まで知らなかった土地に行くことになり大海へと飛び出すこととなった。

4月

その日は、高校に入学してから1週間ぐらいが経過していた頃だったと思う。

♢路線の020番のバス、車両は緑のラインが特徴である。

ぼくは最初、彼女に気付かなかった。
いつもたいてい下を向いて歩いているし、人の顔を最低限見ないようにしているからだ。

「それでは、出発いたします。」

アナウンスを耳にしたとき、あれ?という違和感とともにきれいだ。という感情が沸き起こった。

いつもは空気のようにしか捉えていなかった前方を、そのきれいな声の主に興味を惹かれ見渡してみた。
バスの運転手の名前は、河田冬子さんというらしい。
姿を目にしてみたくてキョロキョロしたが、あいにくぼくが座っている位置からでは遠すぎて見えない。

しかしながら神様はぼくにサインを送ってくれたようだ。バスの前方左側のドア付近のミラーに彼女の横顔が少し見える。

髪型はセミロングで、おそらく20代~30代くらい。

バスに乗っている時間は30分なのだがその時ばかりはもっと長く感じた。早く高校前に着かないかと、彼女の顔をしっかりと見てみたい。とやきもきとした気持ちになっていたせいだった。


~もくじ~

1 序章 2 対面 3 拓也