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「自分を生きろ。」ドラッカーさんから、20年の時を経て届いたメッセージ。

不遇の事態が身に降りかかった時、何故こんな事が起こってしまったのかと振り返ってしまったり、あれやこれやとその原因を分析してしまう事が多いのではないでしょうか。

そんな時の心の動きは、自分の立場や行いを正当化したいという思いから、原因を自分以外の外に求める傾向がどうしても強くなってしまうのではないかと思います。

しかし、それなりに分析ができて原因らしきものが見つかったとしても、それが納得のいく答えである事は少なく、または自分では手の打ちようの無い原因であることの方が多く、結局のところ自分ではどうしようも無い事に気づくのです。

私も昨年暮れに遭遇したある事態の後、そんな状態に陥りました。

頭では分かっていても、いや、分かろうとしても、どうしたらこういう事態に陥るのを防げただろうかとか、また同じ事を繰り返さない為に何か手が打てないかとか、過去起きた出来事に意識が向いてしまい、なかなか答えの出ない押し問答を自分の中で延々と繰り返してしまうのです。

そして、やがてそんな思いは行き場を失い、気持ちがどんどん重くなっていきます…。

ちょうどそんな時に以下の本に出会いました。

『明日を支配するもの -21世紀のマネジメント革命-』(P.F.ドラッカー)

この本を読むきっかけになったのは、鈴木雅幸さんという心理カウンセラーの方のプロフィールページに、この本を読み人生が変わった、と書かれていた事をたまたま見つけた事でした。

読んでなるほど、そういうことかと判りました。

それは、「第6章 自らをマネジメントする」に込められた、我々21世紀に生きる人達への、20年前から届いたドラッカーさん渾身のメッセージでした。(この本の出版がちょうど今から20年前の1999年です。)

いや、むしろこのメッセージは、まさに今の私に向けられたメッセージなのではと思えるほど、心を揺さぶられるものでした。

まず、この章の冒頭は以下の書き出しから始まります。

   “これからはますます多くの人たち、とくに知識労働者のほとんどが、自らをマネジメントしなければならくなる。自らを最も貢献できるところに位置付け、つねに成長していかなければならない。”

ひとつの企業に定年まで勤め上げるという時代は、もうとっくに終わっているのだと思います。加えて、それではもはや個人の成長は望めないだろうという事を、私自身の実体験を通じてまさに感じています。

そして、ドラッカーさんは以下のように続けます。

   “これからは、特に秀でた才能もない普通の人たちが、自らをマネジメントしなければならない。したがって知識労働者たる者は、これまでは存在しなかった問題を考えなければならなくなる。
 1.自分は何か。強みは何か。
 2.自分は所をえているか。
 3.果たすべき貢献は何か。
 4.他との関係において責任は何か 。
 5.第二の人生は何か。”

自らの強みは何か、そして何に貢献をするのか(できるのか)。この問いはドラッカーさんの著書にたびたび出てきます。

まずは自らの強みを知ること、そしてその強みで何にどう貢献をするのかと言う問いを立てること、これがドラッカーさんのマネジメントの思想の底流にあるのだと思います。

続けて本文は上記の5つの項目に沿って書き進められていきますが、その中でも私の心に最も響いたのは、1項目の「強みは何か」のうち、「価値」に触れた以下のセンテンスでした。

   “自らをマネジメントするためには、自らにとって価値あるものは何かを考えておかなければならない。(中略)
 組織には、価値観について多様な側面がある。それらのうち一つでも自分のものと違うと、欲求不満に陥り、ろくな仕事ができなくなる。(中略)
 組織には価値観がある。そこに働く者にも価値観がある。組織において成果を上げるためには、働く者の価値観が組織の価値観になじむものでなければならない。同じである必要は無い。だが、共存しえなければならない。さもなければ心楽しまず、成果も上がらない。”

そうか、冒頭で述べたような苦しい思いをしてしまうのは(ろくな仕事ができず、心楽しめないのは)、そもそも組織と自分の価値観の大きな違いが根底にあるためなのかと言う発見が、今の私にとっての最大の発見でした。

どうしても組織の方針や事業の進め方、そしてその風土や風潮に違和感を感じてしまい、そんな環境を変えたいとひとり息巻いて、周りと違う事を言ったり行動したりして煙たがられる。

何が正しくて何が正しくないのか。そんな対立構造的な発想をしてしまい、正しくないと思われる事を正したいと思いをぶつけても多勢に無勢で押しつぶされる。

そんな長年にわたり汲々としていた状況をものの見事に解説し、かつ「価値観の違い」と言う観点に立つ事で、これまでの悶々とした状態から抜け出すきっかけを得ることができました。

そうなんです。価値観の違う状態だと認識するということは、結局は、その状態を自分がどう受け止め、どう判断し、そしてどう行動に移すのか、もうそれしか無いということなんです。

だからこそ、自分の強みを知り、自分は何に貢献できるかをとことん考える、問い続けることが必要なんですね。

実際、ドラッカーさんは以下のように述べています。

   “最高のキャリアは、あらかじめ計画して手にできるものではない。自らの強み、仕事の仕方、価値観を知り、機会をつかむ用意をしたものだけが手にできる。なぜならば、自らのうるべき所を知ることによって、普通の人、単に有能なだけの働き者が、卓越した仕事をこなすようになるからである。”

これらは20年前に書かれたメッセージですが、全てを読み終えて私に聞こえてきたのは、

『人生の軸に据えるのは、組織ではない、自分だ。
自分の強みを見定め、覚悟を決めて生きていけ。』

と言うドラッカーさんの痛烈なメッセージでした。

ドラッカーさん、ありがとうございます。

自分をしっかり見据えて、力強く生きていきます。そして、自由を手に入れます。

   “自らの果たすべき貢献は何かという問いからスタートするとき、人は自由となる。責任を持つが故に、自由となる。”


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