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塩と教養

勉強なんかしたらいかんよ。勉強ゆうたら関西では値引きするゆうことやけん、勉強しますなんて言うたらいかんよ
勉強やなくて教養を身につけなさい

伯方塩業 故丸本会長さんからいただいた最後の言葉です。
伯方塩業は愛媛の企業ですが、「伯方の塩」でおそらく全国区ではないかと思います。

ふらりと立ち寄った伯方塩業大三島工場(ややこしいのですが工場は伯方島ではなく大三島にあります)
そこで伯方塩業が生まれるまでのストーリーを知り、感激したという話を
伯方島出身の知り合いに伝えたところ、今は会長に退いている3代目社長の丸本氏に伝えてくださったようで
(近所のおじさんらしい・・・・)

話しにいらっしゃい、ということになりました。

JR松山駅前にある、伯方塩業本社に伺うと、警備員の方が、外で待っておられて
車を建物内の駐車場に案内してくださいました。
どうぞこちらへと案内されて会長室へ。
警備員さんはそのまま会長席に座られました。
え、会長自ら、お出迎えだったのですか??
お約束の時間ギリギリに伺いましたが、きっと早めから外で待ってくださっていたと思います。

結局、会長室で5時間くらいお話することになりましたが
一言一言に含蓄があり、ワクワクし通しでした。

途中で、突然内線電話をかけて名指しで、ある社員さんを呼び出しました。
その方と名刺を交換しなさいと言われて、大した名刺でもないですがお渡しして
しばらくお話させていただきました。というか会長の話を二人で聞いていた・・・

忙しい社員さんのようで、ほどなく呼び出しがあり、出ていかれるときに
この人と繋がっていなさい、と言われました。
その後、私はその社員さんがめきめき出世される様子も拝見しながら
お言葉どおり、いろいろなイベントに膨大な数のサンプルを提供いただいたり
所属団体が開催する高校生ビジネスコンテストに賞品を出していただいたり
甘え放題甘えさせていただいています。

丸本会長はその後急逝されたので、お目にかかったのは1度きりでしたが
沢山の、その後の生き方の背骨になる言葉をいただきました。

人脈とは、無理を聞いてくれる人を沢山もつこと。
そしてその人たちの無理にも応えること。
名刺をたくさん貰うのとは違うよ。

ともおっしゃいました。

私はその言葉どおり、無理をきいてくださった方には
必ずご恩返しをするようにしています。
モノではなく「体で返します」と。
一瞬、え?と驚かれますが、ヘンな意味ではありません
お役に立てることがあれば、働かせていただきますという意味です。

丸本会長は、山の上のご自宅で、心臓発作をおこされ、救急車が入れない山道を
担架を担いで登ってきた救急隊員が駆けつけたときには手遅れだったそうです。

ご自身の運命をご存じだったとは思えませんが、なぜふと、その社員さんと
繋いでくださったのか、と思うと、自然の偉大な力を感じます。

その時に、会長主催の食事会にもお誘いいただきました。
会長が気に入った方たちと、食事をして、毎回その中の一人が卓話をするそうで
是非、いらっしゃい、と言っていただきましたが
メンバーのお名前を伺って、私が行くべきところではないと思いました。

大企業の支社長さんだったり、地元企業の社長さんだったり。
固辞した理由は、場違いが一番ですが、食事代が高そう、その場にふさわしい服も無い・・・
とんでも、ございません。私なんぞが卓話で話すこともありません。と。

会長はニコニコして、すぐに卓話なんかしなくていい、他の人の話をききなさい。といわれました。
教養とは、本を読んだり、誰かに教えてもらったりすることだけじゃなくて
自分の頭で考えて行動していくことだよ、と。

今、「自分の頭で考える」は流行り言葉のようになっていますが
15年近く前に、その言葉を聞きました。

同じレベルの人とだけ付き合っていても教養は身につかない。
手本となる人を見て、学びなさい。

と。

その時に、会長は「きくじゅんじょう」と言われたので
話の流れから手本のようなことだろうなとは思いましたが、どんな字を書くのですか?と
尋ねると、紙に書いてくださいました。
何も見ずにさっと書かれたのにも驚きました。

規矩準縄

見たことも聞いたことも無い言葉でした。
会長は伯方島の農家の跡取りで、いわゆる高学歴ではありません。
しかし、5時間、少しも退屈せず、そして話が心に染み入るように届いてきたのは
会長の教養と伝える力の凄さだと思いました

すぐには無理でも、いつかしっかりと勉強して、その会に出させていただきたい

そうお伝えしたときに、冒頭に書いたあの言葉を言われました。

「勉強なんかしたらいかんよ。勉強ゆうたら関西では値引きするゆうことやけん、勉強しますなんて言うたらいかんよ
勉強やなくて教養を身につけなさい」

5時間の話を、すぐに記録しておけばよかったと後悔しています。
またお会いできる、またお話聞くことができると思っていました。

丸本会長が亡くなられてから、その会に参加しておけばよかったとずっと後悔していました。


あれ依頼、関心を持ったことは、「いつか」とは思わず、なるべく「すぐに」行動するようにしています。

ハーブの仕事は実は、ライ「ス」ワークではありません。
諸般の事情で個人事業として切り離しましたが、こちらはライ「フ」ワークになっています。

そんな私ですが
ハーブソルトを発売する時には、コーナーをいただいているラジオ番組に
伯方塩業のその社員さんにゲストで来ていただきました。
伯方塩業の「フルール・ド・セル」という塩を使っていたからです。

たかが塩、されど塩
塩にまつわる歴史や、化学的な話題、とても面白かったです。

私が感動した、伯方の塩誕生秘話です。

https://www.hakatanoshio.co.jp/history/

最近は減塩、減塩と言われますが
塩分不足も骨などに影響することがわかっています。

国立健康・栄養研究所などによる研究によると食塩の摂取量が少ないほうが汗に含まれるナトリウム量が少なく、カルシウムやマグネシウムの量は多いそうです。汗中のナトリウム量が減ったのは、ナトリウムの放出を防ぐためで、体内にはナトリウムが不足すると、骨に蓄えられたナトリウムを使う仕組みがあり、カルシウムとマグネシウムも一緒に骨から放出されてしまうそうです。

減塩と骨粗鬆症は良い塩梅でコントロールしていきたいですね。

先日観た映画でも88歳でバリバリ歩いて旅をしている角野栄子さんは朝食に切った胡瓜にびっくりするほど食塩をかけていました。

規矩準縄

この言葉に再び出会ったのは、最近読んだ「渋沢栄一 運命を切り開く」でした。



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