【日記】身寄りのない猫 23/10/31

遺品整理の仕事をしている。
ドアを開けた瞬間、部屋の中から痩せた茶トラ猫が飛び出してくる。かなりの大声で鳴き喚いている。一瞬遅れて酷い悪臭がやってくる。床一面猫の毛とゴキブリの糞で埋まっている。2台用意された猫トイレも排泄物でいっぱいである。
彼が、先に飼い主を亡くした身寄りのない猫であることは一目瞭然であった。
餌はどうしてるのだろう。部屋から自由に出入りしてるところを見るとどこかで貰っているのかもしれない。
作業を進めていると、もう1匹、白い大きな猫が出てくる。作業中ずっとニャーニャー言っている茶トラとは正反対にかなり臆病らしく、触るとビクッとして固まってしまう。
「安原さん、これ…」と相方のオッサンがベッドの下を指差す。
そこにはやや溶けてしまった黒猫の死骸があった。抜けた毛と肉が絡まり、モップのように床に居座っていた。
3匹の身寄りのない猫。生きてる2匹と死んだ1匹。部屋には彼らの写真も飾ってあり、生前の飼い主からは大切にされてたであろうことが伺える。
彼らはこの先どうなってしまうのだろう。なるべく苦しまないでいてほしいと思うが、おれにできることは冷蔵庫に残された餌を与えるくらいのものだ。
「生き残れよ」と生きてる2匹に声をかけ、おれは現場を後にする。

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