ニュースウオッチ9⑨証言の食い違い
※⑧「遺族会の申立て却下」からの続き/
前々回の「⑦取材依頼の罠」では、取材担当者が遺族会に送ったメールを取り上げました。コロナワクチン接種死遺族に取材を申し込むのに、「コロナ」も「ワクチン」も出てこない文面はおかしい、という話でした。
取材要項の不自然さ
NPO法人「駆け込み寺2020」理事長の鵜川和久氏(新型コロナワクチン被害者遺族の会「繋ぐ会」の運営者)から取材許可が出た日、NHKの担当者は「取材要項」を送付しています。これは簡単な企画書のようなもので、鵜川氏がTwitter上で公開しています。
取材依頼のメールと同じく、コロナやワクチンに関する語がひとつも出てきません。「嘆きの証言」「風化させぬためのメッセージ」などの情緒的で曖昧な言葉が並んでいるだけ。不自然なほど具体性を欠いた文章です。
この取材要項に、「コロナウイルスで家族を亡くした遺族」と書いてあったら、取材許可がおりなかったでしょう。一方、「コロナワクチンで家族を亡くした遺族」であったなら、取材はさせてもらえます。でも、のちにトラブルになった際に証拠となり、NHK側が不利になってしまう。いずれにせよ、「コロナ」のことはぼかしておくのが賢明というわけです。
遺族の証言
ワクチン問題を取り上げないのなら、事前に伝えておくべきです。遺族の期待を裏切ることになりますからね。担当者はインタビュー前に説明したと主張しています。
遺族らはこれを明確に否定。「そもそもワクチンの問題を扱わないという説明があったとしたら、間違いなくインタビューは受けなかった」と証言しています(BPO放送倫理委員会第44号委員会決定p.11より。以下「BPO委員会決定」)
「ワクチンの問題を取り上げる特集のような形で放送されると思っていた」との証言もあります(前出 p.11)。新型コロナのワクチンという重大なテーマである上に、人の死が関わっているのだから、そう考えるのは自然ですよね。わずか1分のエンドV(出演場面は24秒)で扱うのは適切ではないという見解が、NHK内部からもBPOからも出ています(前出p.8,p.15)
放送時間がこんなに短いことを知っていたら、ご遺族は取材を受けなかったかもしれません。取材の2日前の5/11に担当者が代表に送ったメールAには、1分程度になると書かれていましたが、遺族がこれを知らされたのは放送当日です。
以下は企画発案から放送までの流れです。
遺族会運営者とのやり取り
5/14に放送予定を鵜川氏がツイートすると、ワクチン問題の放送を期待する声がリプライ欄に寄せられました。これを見た担当者が同日夜に、鵜川氏にメールBを送っています。NHKの報告書には、「放送時間が1分と短いこと、ワクチンについては放送しない予定であることを伝えるためにメールを送った」とありますが、本当にそう伝えたのか、正しく伝わっているのかは疑問です。
というのも、放送予定に関する鵜川氏のツイート内容が、担当者の証言と微妙に食い違っているのです。「放送時間は1分との事で、恐らく触りで終わる可能性が高いそうです。」と書かれています。鵜川氏は、ワクチンについて番組内でまったく扱わない、とは思っていなかった。担当者の証言とは矛盾しています。
放送後、ワクチンについて触れていないことに鵜川氏が抗議すると、担当者の態度が一変。事の重大さにようやく気づいた様子だったと、現代ビジネスのウェブ記事にあります。NHKの報告書には、「ワクチンについて触れないことに了承を得られていたと思っていたので、予想していなかった反応に困惑した」と記されています(NHK報告書 p. 6)。先ほどの鵜川氏のTwitter投稿内容とは、かみ合っていません。
試写の際には担当者の上司と編集責任者が、遺族の了解はとってあるのか?と問いただしています。これに対しても担当者は、了解はとれていると答えたそうです。上司らも深く追及することはありませんでした(BPO委員会決定 p. 8, p. 9)。こうして、遺族側が了解していないにもかかわらず、「遺族は了解済み」とされました。担当者と上司の認識もズレているのです。
"了解した/していない"のズレはなぜ生じた?
主な原因は担当者の曖昧な態度にあると、私は見ています。
取材依頼メールと取材要項に「コロナ」「ワクチン」の言葉が使われていない。取材の趣旨が不明瞭。
取材当日に遺族に説明したと担当者が主張する内容は曖昧なもので、ワクチン問題を扱わないことを明言していない。
鵜川氏とのメールや電話のやり取りにおける担当者の発言内容も、曖昧なもの。ワクチン問題を扱わないことを明言していない。
担当者はいずれの場合にも、「ワクチン問題」という肝心な部分をぼかしています。「ワクチン問題は取り上げません」「ワクチン被害者・遺族の団体名を出しません」とは明言していないのです。それとなく匂わせて、相手が察するように仕向けている。たとえばこんなふうに言いくるめたのかもしれません。
放送時間が短いためワクチン問題を扱うことができないかのように言い訳をし、他の番組や別媒体で取り上げることを引き換えに取材を承諾させる。本当のこと(ワクチン問題を扱わない/団体名を表示しない/遺族の属性を実際とは異なるふうに報じる)を伝えると相手にされないので、ごまかしているのです。
きちんと説明していないので遺族会側の了解は取れていないのですが、了解を得た形にして、強引に事を進めてしまう。これではトラブルになって当然です。
放送時間が1分程度であっても、遺族の出演場面で「ワクチン」という言葉を使うことはできるはず。鵜川氏が要望していたように、団体名を番組内で表示することは可能です。ご遺族が出てくる場面のテロップを工夫すれば、「ワクチン接種後に亡くなった方のご遺族」であることが伝わるでしょう。
そうしなかったということは、意図的に事実を隠蔽・歪曲したと思われても仕方ありません。悪意がないとしても、不誠実きわまりない態度です。
担当者の言動には他にも不審な点があるので、そのあたりをもう少し追っかけてみようと思います。
【追記】
NW9の担当のやり口を見てるとクロ現の担当者とそっくりで、新たな怒りがこみあげてくるんですよ。
クロ現のときとは違う点もあります。これはこれで、私舐められてたのねと腹が立つけど。
NW9もクロ現も、担当者の言動に嘘やごまかしが多くて、信頼がおけないという印象。たまたま悪い例に当たってしまったのでしょうか? NHKの職員が揃いもそろって悪党だとは思いたくないけど。
※⑩かみ合わないインタビューへ続く
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