・スター性とはなんなのか ~辻希美という天才と加護亜依という秀才から考える~

 

 辻希美は天才である。
 デビューしたときから現在に至るまでずっとその認識は変わらない。
 そして、加護亜依は秀才である。
 その認識も今に至るまで変わらない。
 モーニング娘。のメンバーとしてデビューしたときからマスコット的、キャラクター的な意味合いで、いわゆるセット売りされてきたふたりである。
 そして、のちにデュオとして活動していくことになるふたりである。
 ダブルユーというデュオとしてデビューすることが決まった際に、キャッチコピーとして「双子じゃないのに双子みたい」という言葉が使用されており、本当にうまいキャッチコピーをつけたものだと感心した。
 2000年代以降、アイドルがデビューする際のキャッチコピーというものを見聞きすることはほぼ無くなったが、2000年代アイドルとしては今でもこれを越えるものは無いのではと思っている。
 何故、この「双子じゃないのに双子みたい」というアイドルキャッチコピーにここまで感心したのか。
 理由は簡単である。
 辻と加護は何もかもといっていいくらい真逆なのに、まるで双子のように扱われてきた。
 そんなふたりだからだ。
 歌手として。
 アイドルとして。
 芸能人として。
 エンターテイナーとして。
 人間として。
 コインの裏表のように逆。
 陰と陽。
 光と影。
 天才と秀才。
 このふたりが出会ったとは奇跡であり、運命だと思ってはいる。
 僕はこのふたりのことが大好きだ。
 しかし、とても残酷な運命の悪戯だとも思っている。
 現実は時としてとても理不尽なものだ。
    辻の何がそこまで凄いのか。
 また辻と加護は何が違うのか。
 このあたりはオーディション当時まで遡ってみないとおそらくはわからない、伝わらないと思うのだが、辻は良くも悪くも年相応な少女であった。
 子供である。
 対して、加護は年齢から考えると大人びており、自らを律することを知っているように見える幾分控えめな少女だった。
 そして、このふたりは「辻加護」というセットにされるのである。
 僕が何故、辻希美のことを天才と評するのか。
 それは彼女が常に人から注目されることばかりする。
 人の興味を惹くことしか出来ない存在だからである。
 ずっとそうなのだ。
 容姿、歌唱、ダンス、アイドル性などもっと他に語れることもある。
 モーニング娘。のメンバーからダブルユーというデュオとしての活動へ。
 そこから結婚・出産からママタレへといったキャリアの面でも語れる部分は非常に多い。
 ハロー!プロジェクト内でも家庭を築き、子供を授かったのがとても早かった辻は、ハローのOG内でも非常に頼りにされているというエピソードはよく聞くところだ。
 と、きちんとしたことを語ろうとするものの。
 僕の中ではこれに尽きる。
 「何故、ここまで大衆を惹きつけ続けることが出来てしまうのだろうか」
 いわゆるセルフプロデュースが出来ない方ではない。
 ただし、得意なわけでもない。
 辻希美と出会い、辻希美の無自覚かつ圧倒的な力を目にし、それを参考にしてセルフプロデュースに特化していったのが加護亜依である。
 ただし、加護もまた本来はそういったことが得意なわけでない、と感じている。
 加護に関しては生きていく術として学んだという表現の方が適切だと思う。
 大衆を惹きつける存在。
 それがアイドルと呼ばれる存在。
 もっというならスターと呼ばれる存在であり、辻希美はそういった観点から見続けた場合、今現在に至るまでずっとアイドルでありスターなのだ。
 良くも悪くもではあるが、ずっとあれほど注目され続ける方は稀である。
 無自覚な才は時として恐怖だ。
 セット売りされたことで辻希美の才覚と比較され、それと戦い続ける人生を歩むことになった加護亜依という稀有な秀才にも触れておきたい。
 僕はモーニング娘。のメンバーの中で歌手として大成する人物が現れるなら、それは安倍なつみ、もしくは加護亜依であろうとふたりが娘。を卒業した頃から思っていたし、それは今でも変わっていない。
 歌という面から考えるなら、安倍なつみの歌に対する執着や情念には畏怖しかない。
 安倍なつみは歌に関していえば元々才能や実力に恵まれた人物ではない。
 ただただ歌への思いがとてつもない努力の人だ。
 歌っていなければ死んでしまうのではないかとさせ思わせる凄みがステージ上で歌い続けている彼女にはある。
 そして加護。
 セルフプロデュースの人物であると言及したが、歌声のコントロールがとにかく上手い。
 そしてあのキャンディボイスである。
 そのキャンディボイスとはミスマッチに思える曲も歌いこなしてみせる柔軟性や技量も持っている。
 純粋に上手いし、声質にも恵まれた。
 矢口真里など同じタイプの歌手は他にもいるが、歌と距離を置いた活動が主になってしまっていく中で、加護はもがきながら足掻きながらでも歌い続けていた。
 このまま歌い続けるなら大成するのではと思わせたのはそういった点である。
 「これ(歌)しかやりたいことがない」「やれることがない」とインタビューで語っていたのはほぼほぼ本心だと感じている。
 ここで本題に戻ろう。
 スター性とはなんなのか。
 様々な解釈や考察、言い方ができると思う。
 ここでは吸引力という表現を使ってみようと思う。
 辻希美は吸い込む。
 そして引き込む。
 そういう星の下に生まれたと思っている。
 彼女は埋もれない。
 何があろうと何をしようと埋もれない。
 祭り上げられようが叩き落とされようが埋もれない。
 それは立派な才能であり、だから僕は彼女のことをモーニング娘。の歴代メンバーの中で数少ない天才だと思っているのだ。
 
 

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