デジカメUI入門

デジカメUI入門:6 画質と画調

これから3回にわたり、デジタルになって誕生した機能とUIについて解説をしていきます。

デジタル技術で最初に取り上げるのが「画質設定と画調設定」です。

デジカメが誕生した当初には2つの設定の受け入れられ方には違いがありました。
まだメモリーが少なく、メールを送る通信回線も細かった時代には写真のデータサイズを変えられる画質設定はとても大切な機能でした。
一方の画調設定は、デジカメを玩具ではなく本物のカメラとしてフィルムカメラの置き換えにしていきたい理由から、デジタルで色が変えられる機能は積極的に展開されませんでした。

ところが現在では、その立場は逆転し、画質設定を積極的に使くユーザーは減り、逆に画調がメーカーを代表するカメラの個性になり、ユーザーがカメラを選ぶ理由の一つになっています。


画質ってなに? 画調ってなに?

写真には、品質のレベルと、画像のトーン(調子)があります。
それぞれ「画質」と「画調」とここでは呼ぶことにします。(画調は一般的な表現ではありません)
2つは別の概念で、画質は「良し悪し」で評価され、画調は「好き嫌い」で評価されます。

そしてこの2つと、写真の良い悪い好き嫌いはまた別のものです。

ただし、写真と画質と画調の関係は強く関係していることも事実であり、これらを上手くコントロールできれば作家としての作風を作ることもできます。


画質設定

画質を良くするためには、レンズとボディ(撮像素子)を良いものにしておくことが重要です。
これは機材を買う前であればユーザーが選択できるということでもありますが、求めるレベルによってはお金が沢山必要になります。

次に選択できるのが、カメラの中の画質設定です。
画質設定は「画素数」と「圧縮率」の組み合わせで選ぶことができます。
画質とはもっと広い意味ですが、画質設定といえばこの2つです。

記録メディア(メモリー)の容量が少なかった時代には、撮影枚数を増やすための設定やメールで送信するなどデータサイズによる選択をおこなっていましたが、
最近では、連写スピードとの関係によって選択する方が使われ方としては多くなっているかもしれません。(連写設定で画総数が切り替わるものもあります)



画質設定以外にも画質項目として言われるのがISO感度によるノイズの問題です。

ISO感度を上げていくとノイズが増え画質が落ちていくという風に表現されます。
ただし、ISO感度は購入後に選択できますが、ノイズを減らしたければ、明るいレンズ(非常に高価)や大きい撮像素子(非常に高価)の機材を選択しておくと結果的にノイズを減らすことができるので、こちらも購入前の選択と言えます。

この他にも、画像を劣化させるレンズ/ボディの乱反射問題や、ボケ味などもひっくるめて、画質として扱っている場合が多いので、画質に関しては、機材としての画質と設定としての画質があると理解しておいてください。

画質設定は別に楽しいものではないので、この程度の説明で終わりにします。
それに対して画調コントロールは、写真の楽しさを大きく変える可能性があるもので、その世界を詳しく見ていきます。


画調コントロール

こちも画質と同様に、レンズやフラッシュの前に付けるフィルターなどの機材によって違いを出す方法もありますが、カメラ内で画調のコントロールは比較的自在におこなえます。
従来の物理的な機材による表現と、カメラ内設定での表現のどちらも楽しむことができます。

画調をコントロールするUIはメーカーごとに考え方も用語も大きく違っていますがいくつかのタイプに分けてみていきましょう。

大きく分けて、アートフィルターを代表とする「表現効果」的なものと、フィルムシミュレーションを代表とする「味」に近いものがあります。


オリンパスは、アートフィルターを独立した撮影モードして、複雑な設定なしに簡単に個性の強い表現を提供しようとしています。

また「ピクチャーモード」の体系の中に、アートフィルターやカラークリエーターを含め彩度の違いからアート表現までを並列して配置することで画調としも広く利用してもらおうとしていますが、いづれも排他的な選択肢のため、それ以上の画調内での組み合わせはできません。

良くも悪くもアートフィルターの強力な個性をそのまま使いこなすことが基本の使い方になります。(それだけでも凄い作品を生んでいる写真家の方はたくさんいます)

特にアートフィルターモードでは、アートフィルターの選択が第一のUIになっており、シーンに応じて積極的に切り替えることが想定されています。

オリンパスのアートフィルターUIと多彩で上質なアートフィルター
画面下部の作例をタッチするだけでライブビューに反映して撮影することができる




一方、富士フィルムの「フィルムシミュレーション」は表現が特徴的で普段使いしにくいアートフィルターと違い、玄人好みの「味」にこだわり、銀塩フィルムの時代から長年使い続けてきたユーザーが「自分の」個性として全ての写真で固定して使うことができるものに

フィルムシミュレータには歴史ある富士フイルムの実際のフィルムを背景にもつものがあり本物感を強く出している



アートフィルター的な機能と、フィルムシミュレーション的な機能の両方を持つメーカーは多く、
ニコンは「エフェクトモード」「ピクチャーコントロール」
キヤノンは「クリエイティブフィルター」「ピクチャースタイル」
ソニーは「ピクチャーエフェクト」「クリエイティブスタイル」
などの分類でそれぞれ提供しています。


セレクト型とカスタム型(チューニング型)

個別シーンに応じた演出としての画調と、日常使いする味としの画調があることを説明しましたが、UIの視点で見てみるとセレクト型とカスタム型(チューニング型)があります。

画調を良い感じに仕上げるのは、いろいろなパラメータの組み合わせであるため大変複雑な作業です。
そのためアートフィルターもフィルムシミュレーションもメーカーが作り込んだモードを選択するセレクト型になっています。

しかし感性で選んでいるユーザーからも「もう少し弱くしたい」などの要求がでてきますし、理論で考えているユーザーからも「もう少し彩度を落とした方が良い」と思われるのは当然の流れです。

そのためいくつかのメーカーでは、セレクト型とチューニング型を組み合わせたようなUIにしています。そのためいくつかのメーカーでは、セレクト型とチューニング型を組み合わせたようなUIにしています。

ユーザーがこのUIをどのように使いこなしていくのか(楽しむのか)、メーカーがどのようにUIを整理してくのか今後の楽しみです。



個性の時代だからこそ手間を掛けて普段使いを

「インスタグラムに投稿する写真のトーンを全て揃えて自分のブランディングをしている」といった記事を読むと、単にエフェクトを掛けまくったり、インパクトの強い写真を並べるだけでなく、全体として醸し出す雰囲気が大事なのだなと感じます。

これからの写真の楽しみ方を考えたときには、少しづつパラメータに手を入れながら、シーンに関係なく、何となく好きな感じに仕上がるような、マイ画像処理を作って、それについて熱く語るというのが良いのではないかと思います。


ほどんど言われないと気付かないような違いでも、自分で設定すれば、写真を自分の作品として語りやすくなるし、なによりも使い続けることで作品全体のトーンが揃ってきます。

もちろん作るのが難しければフィルムシミュレーションのようなものから始めても良いと思います。そうすればどんな特徴が好きでそのフィルムを選択しているか意識することができるよになり、それも語りの一部にできるからです。


「私の作品」と感じる自己所属感と画調UX

自分が写っている写真や自分が写した写真は一般に自分の写真という認識を持つことができます。

ただそれが自分の個性を表しているか?自分の「作品」か?と問われると、それだけでは十分ではないと考えてしまいます。

被写体を決め、フレーミングとタイミングを選ぶだけでも十分にユニークな写真になりますが、シャッターを押すだけで綺麗な写真が撮れてしまう現在では、さらにプラスアルファとして設定操作をおこなうことで、写真が自分の一部であるような自己所属感が一気に増し、

そのことが、写真をシェアして、イイネをもらったときの喜びをより大きなものにしてくれます。

このプラスアルファのUI操作をどのようなものにするのかが、カメラの個性であり、ユーザーが期待しているものだと言えます。

オリンパス PEN-Fのクリエイティブダイヤルを回すことで、カラープロファイルやモノクロプロファイルを調整することができる

基本機能の優劣では、ほとんど差がなくなっていますが、このUX/UIの考え方はとても多様で、自分のやりたいことにマッチしているカメラもあれば、全然合わないカメラもあります。

このデジカメUI入門を読んでいただくことで、この部分のマッチングを購入前に判断できるようになって欲しいと思っています。


記事中の画像は各社のホームページからの引用です。
画像にはリンクが張られています。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?