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フォーカスを愉しむ

写真とは広大な時空間の中から一つの瞬間と空間を切り取る行為と言えます。
さらにレンズは特定の距離だけにピントが合うため「一つの断面」として記録されます。この断面を決定するのがフォーカスの役割です。

どのタイミングでシャッターを切るか、どんなフレーミングで世界を収めるかについては、レンズ付きフィルムカメラからスマホまで共通の行為ですので、無意識にやってしまっていますが、フォーカスについてはカメラやレンズの種類によってさまざまな操作が必要であったり、強く意識するものになっています。

今回の記事では、そんなフォーカスの「操作」を愉しむためのUIを取り上げてみたいと思います。

ファインダーのこと

一眼レフでは、高級機のファインダーは大きく、明るく、ピントの山が分かりやすいという特徴がありました。
贅沢な光学部材を使い、性能を設計をすることができますが、UIという視点では限定されたものになっていました。

それに対してミラーレスではEVF(’エレクトリック・ビュー・ファインダー)によってさまざまな表示方法を実現することができます。
この記事では主にUIとしての表示方法について紹介していきます。

ピントとボケを見る

一つの立体物の一部にピントを合わせると、その周辺は距離に応じてわずかずつピントがズレていき距離が大きく離れればボケていきます。
背景と被写体というはっきりとしたピントの違いであれば見ただけで分かりますが、一つの立体物の中のどの部分にピントが合っているかは小さなモニタやファインダーでは分かりにくいためUIとしてさまざまな工夫をおこなうことになります。

更に判りにくいのが被写体深度です。これはピントが合った様に見える前後の幅のことであるが、ファインダーで見て確認しにくく、絞り値と画角、被写体までの距離などで変わってくるため、経験で判断するのも簡単ではありません。

この辺りの操作性や判りやすさを、UIの工夫でどのように解決し、更に「フォーカスを操る愉しさ」を作り出そうとしているのか具体的に見ていきましょう。


AFなのにマニュアル操作

オートフォーカスは「カメラ任せでピントが合う」というのが謳い文句であり、距離計測技術またはピント評価技術と、レンズ駆動技術の融合によって実現したものです。

誕生して30年になりますが結局のところ「ユーザーが何をどのように撮りたいか」という問題が解決できず、最近ではAFのための操作がどんどん増えてきている状況です。

しかしそれが良くない状況かというと、従来たくさんの経験を積んだプロだけが撮れていた写真を、最新のフォーカス機能を使うとアマチュアでも撮れることを意味しており、撮影領域の拡大、写真を撮る愉しみという点で進化していると言えるのです。

<主なAFのUI>
・シングルAF/コンティニアスAF
ターゲットサイズ変更
ターゲット移動
追尾/動体予測
被写体認識
フォーカスリミット
・フォーカスブラケット/深度合成


MFなのにアシスト表示

AFが無かった時代のマニュアルフォーカスは、画面中央の「マイクロプリズム/スプリット」というズレ量を拡大する表示でピントを合わせるか、画面のどの場所でもピントを確認できる「全面マット」という擦りガラス面で分かりにくいピントを目で確認しながらフォーカスを合わせていました。

最新のデジカメ、特にミラーレスとEVFの組み合わせでは、多様なAF機能だけでなく、MFにおいてもさまざまな表示によってピント合わせをアシストしてくれます。

ザックリとAFとMFの違いを整理すると、AFではXY方向のターゲットを移動させ、MFではZ方向のフォーカスを直接前後させる操作になっていると考えることができます。

<主なMFのUI>
拡大表示/部分拡大表示
ピーキング表示
距離表示
ズレ量表示


最後の失敗原因

カメラの設定をオートにしておけば、ほとんど失敗することが無くなっていますが、フォーカスだけは他のオート技術よりも失敗が多いというのが実情です。

失敗が多い理由は、ピントがある一点(平面)に合ってしまうため、それがユーザーの意図と異なっていると非常に気持ち悪く感じてしまうからです。露出などでは大体合っていれば良いのですが、フォーカスでは「一番合っている」必要があるのです。

その結果、AFを使うにしても様々な設定や操作をユーザーがおこなう必要があり、その中の手段としてMFを選択する場合もまだ多く残されているということなのです。

ユーザーに残された最後の愉しみ

露出やフレーミングはピンポイントの正解が無い分、失敗しにくく満足感も少ないですが、動体写真の決定的瞬間やフォーカスのピンポイントは失敗のリスクが高い分、成功したときの満足感も高くなります。

自動化し易いものはほぼオート化され最後に残ったものとして、決定的瞬間のシャッターは連写によって克服しようとし、ピンポイントのフォーカスは多様なUIによって克服しようとしているのです。

連写はカメラの力業でユーザーの参加はほとんど必要ありません。それに対してフォーカスはユーザー中心の操作が必要な最後の領域なのです。

そして未来へ

大体の正解がある露出などは写真コミュニティで正解を共有することができましたが、フォーカスはユーザーごとに視点が異なっており、また同じユーザーでもシーンによって変化します。

そのように不確定なフォーカスを、これからAIがアシストしていくためには、コミュニティ全体の使われ方ではなく、ユーザーごとに、さらにシーンごとにAIが学習し、それをカメラ内に実装する技術が必要になります。

これからは、ユーザーの写真活動全体(シェアやプリント)を一つのシステムとして接続し、どの写真が成功写真かを学習し、その結果からカメラをアップデートするトータルの仕組みが作られていくことになります。

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