デジカメUI: 画調コントロールのすすめ

一般に聞き慣れない言葉であるが、現在のデジカメ全体で統一した用語が無いのでこのエントリーでは「画調」と表現しておく。
画調はAFなどの基本性能と同じように、デジカメの重要な差別化ポイントになっている。

UIの観点でいえば、これまでの状況対応中心の操作から、自己表現操作へと軸足が変わるものであったり、自分だけのカメラと思える存在になったりと、人とカメラの関係性が変わるきっかけになるものである。

画質と画調の違い

まず「画質」との違いを明確にしておきたい。
デジカメ界では画質設定とは画素数や圧縮率のことを指し、利用目的(メールに添付するとか)、印刷・表示サイズに応じて画像データの量をコントロールする設定である。大きい記録メディアや高速通信ができる現在ではあまり変更することがない機能になっている。(20年前にはダイレクト操作が必要なほどの重要機能でした)

さらに画質設定とは別の話として、撮像素子の画素数や、画像処理エンジンの性能、高級レンズの解像感などを「画質」ということも多い。
一般に高い機材ほど高画質ということになっている。ただ画質設定にせよ画質にせよ「良い写真」とは直接は関係なく、単に経済性や性能の違いであることは共通である。(レンズオタクが言う違いは実際にはあるがここでは一旦問題にしない)

では「画調」とは何かというと、銀塩写真のフィルムや現像・プリント処理の違い、フィルターの組み合わせなどによって雰囲気の異なる写真に仕上がることを指し、アナログ的な手法も残っているがデジカメではデジタル処理によって実現しているものをいう。
画質と違い「好き嫌い」があるもので、それゆえにユーザーがコントロール(選択・調整)して使うものになる。

各社の画調コントロール

定義の話を先にしてしまったが、要は「ユーザーの好き嫌いがでる程度の違い」を画調といい、好き嫌いがあるからそれをコントロールさせようということである。
とくにここでは、レンズ、ボディなどのハードを変えなければならないものではなく、デジタル技術によって調整可能な部分について「画調コントロール」として扱う。

フレーミング/タイミングコントロール、露出コントロール(明るさ・ボケ・ブレ)と組み合わせることでユーザーに「作画体験」を提供している画調コントロールは、各社でカメラに対する思想の違いが明確に出る部分であり比較すると面白い。
大きく分けて、アートフィルターを代表とする「表現効果」的なものと、フィルムシミュレーションを代表とする「味」に近いものとに分けることができる。

オリンパスは「ピクチャーモード」の体系の中に、アートフィルターやカラークリエーターを含め彩度の違いからアート表現までを画調として広く扱おうとしており、さらに「アートフィルター」を独立したモードにするなど、さまざまな機会に利用しやすいようにしている。
これは固定して使うというよりも、「シーンに応じて」積極的に切り替えながら使うことを想定している。

一方、富士フィルムの「フィルムシミュレーション」は表現が特徴的で普段使いしにくいアートフィルターと違い、玄人好みの「味」にこだわり、銀塩フィルムの時代から長年使い続けてきたユーザーがそのまま普段使いし「自分の」個性として固定して使うことができる。

アートフィルター的な機能と、フィルムシミュレーション的な機能の両方を持つメーカーは多く、
ニコンは「エフェクトモード」「ピクチャーコントロール」
キヤノンは「クリエイティブフィルター」「ピクチャースタイル」
ソニーは「ピクチャーエフェクト」「クリエイティブスタイル」
などの分類でそれぞれ提供している。


セレクト型とカスタム型

上記で表現効果と味に分けたが、もう一つユーザーの作画体験に影響が大きいのが、複数のモードから1つを選択する「セレクト型」か、内部のパラメータが調整できる「カスタム型」かの違いがある。
つまり、画調の強さが大きいものと小さいもの、選択だけのもの、調整できるもののマトリクスで考えることができる。

オリンパスは表現の幅が大きく、選択が基本になっている。(一部パラメータをコントロールできるが組み合わせほど複雑ではない)つまり作画の品質はメーカーが責任をもっておりユーザーはそれを選択するだけで一定水準の表現ができる。
富士フィルムのフィルムシミュレーションも表現の幅が小さいが、選択方式を採用している。

LUMIX DC-G9の画調コントロール

それと真逆なのが、パナソニックのクリエイティブコントロールとフォトスタイルである。いくつかのプリセットは持っているが細かくパラメータを設定し自分だけの絵作りをさせようとしている。
これを使いこなせれば、より自分の表現ができたと感じることができるし、仲間にこだわりを語ることができるのである。

「クリエイティブコントロール」はアートフィルターに近いもので、パナソニックでもフィルターまたは効果と呼んでいる。
このフィルターはオリンパスほど個性的なものは無いが、フィルターの特徴に応じてパラメータを多段階で調整することができ、特に効果を弱めに設定することで日常的に使いやすくなる。

モードダイヤルをクリエイティブコントロールに合わせてGUIでベースモードを選択する。
その後「WB」キーを押すことで、パラメータを調整することができる。


一方フィルムシミュレーション的なものとしては「フォトスタイル」がある。こちらはベースとなる画調モードに対して、コントラストやシャープネス、彩度、色調などをそれぞれ̟プラスマイナスで補正することでカスタムすることができる。

通常の撮影モードで、MENUからフォトスタイルを選択することでベースモード選択と各パラメータ調整がおこなえる。
Quickメニューの中に無い点がオリンパスの考え方と違っている。


まとめ

私の好みとしては、そのイベントの雰囲気に合わせてテーマとして一度セットしたら固定して使い続けることで、全体が一定のトーンの仕上がり写真集のようなまとまりのある雰囲気になるものである。
さらに少しづつ内部パラメータをカスタマイズして自分の表現であると言えるものが作れる方が良い。

「若いころは色々やってみたけど、最近はこれに落ち着いているね」とか
「この時代の色はこんな感じだったんだね」というように、SNSでの1枚きりの映えではなく、画調そのものが時代や思い出を語るような存在になれば良いと思う。

G9はオリンパスのアートフィルターよりも私の使い方に適していると思う。まだ手を付けれていないが、弱い表現から少しづつ自分の画調を作っていくつもりである。
そのプロセスによって、このカメラのことが好きになっていくような気がする。

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