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各社のデジカメUIを比較評価するための視点

ニコン、キヤノンがフルサイズのミラーレスカメラを発売し、フジフイルムやソニー、パナソニックからも個性的なカメラが出てきています。

これまでデジカメの20年の歴史の中で、さまざまなUIが採用されてきましたが、最近では各社のUIが似てきているところが出てきている一方で、各社のこだわりとして差別化しているところがハッキリ見えてきました。

現在はこれまでの「集大成」という落ち着きがある状態ですが、古い機能と新しい機能が整理されないまま複雑化しているため何かのタイミングで今後に向けた「新構造」を模索する動きが出てきても不思議ではありません。

以前の記事にも書きましたが、2020年のオリンピックまでは従来のUIでカメラの完成度を上げていくことが最重要ですので大きな動きは無いと思いますが、その後はAI技術を取り入れて、人とカメラの関係(役割分担)を大きく変えていくようなUIや、ネットワーク/コミュニティに接続していることを前提としたUIが出てくることになるはずです。

今回の記事はそんなUIを評価したり比較したりするときに考えていることについてまとめていきたいと思います。
なお実際の評価内容については、今後のnoteの記事の中で個別に扱っていきますので興味がある方はフォローしていただけると嬉しいです。

ちなみに現在は個人の趣味としてデジカメUIを楽しんでいますが、現役のUIデザイナーでもあるので「プロの眼」で見るようにしていきたいと思います。

UIは手段であり、実現したいUXが評価の対象

UIを評価する場合に、そのUIがどんなUXを提供するために作られているかを正しく理解し評価しなければ意味がありません。

評価するときにやってしまうのが、自分(自社)が想定するUX(長く「思想」と言われていたものとほぼ同義)を基準にして「〇〇社のUIは使いにくい」とか「分からない」という評価をしてしまうことです。
これを言ってしまっては、そこで思考停止になってしまい何も学ぶことができなくなってしまいます。
当然ですが、各社でカメラや撮影に対する考え方には個性があり違っています。ズレがあることは当然であり間違った組み合わせでは正しい評価をすることはできません。

そのため、あるUIを評価するためには、まずそのメーカーが歴史的にどのような思想でカメラを作って来たかという知識をベースにして、リバースエンジニアリングのようにUIからユーザーの利用シナリオを想定し、その上で「なるほど」と理解していきます。

そして改めて「そんな利用シナリオがあるのか?」という視点でUXを評価し、最終的にUIを評価していくようにしています。

比較するための共通のモノサシ

UIを直接評価しても目標としているUXが違うため意味が無いということを書きましたが、UXの違いを見つけるために「UIの違い」に気付くことは大切です。

UIの良し悪しではなく、客観的にUIを比較し違いを明確にするための視点をいくつか列挙してみます。

①モード/機能の操作体系

デジカメ20年の歴史の中で、モード切替、ダイレクト操作機能、クイックメニュー(マルチFn)機能、通常メニュー機能に分類する考え方がほぼ共通のものになってきています。

ただ、各社/各クラスでこのバランスが実にさまざまで、そのことがカメラの「個性」を作り出していると言えます。

また、特殊なところとして、従来のカメラ用語(露出補正やホワイトバランスなど)ではない表現(明るさや色調など)を用いた撮影モードを別に用意している機種もあり、実際にどれだけ使われているのか良く分からないままに、カメラの個性を表現する手段として搭載されていたりします。

②ボタンカスタムの自由度(選択肢の数)

(Fn)ボタンに機能を割り当てて使う場合には、瞬時に設定を変えたい機能か利用頻度の高い機能、一度使ったら直ぐに元に戻したい機能のいづれかになりますが、それに相当すると各社が考える機能リストを比較してみると色々と面白いことが分かってきます。

とにかく何でも割り当てできるメーカーから、おすすめの機能しか選べないメーカーまで考え方が良く表れるところになります。

③カスタムモード(ユーザプリセット)の登録・呼出

カスタムモードは複数の機能設定の組み合わせを、モードダイヤルなどで一発で呼び出せるようにするもので、ユーザーが作るシーンモードのような使い方と、毎回撮影開始の時に標準状態にリセットするための使い方があります。

カスタムモード内でカスタム登録できるタイプのものは、カスタムを少しづつ育てていくことができますが、そうでない場合には一時的な撮影設定記憶という使い方になってしまいます。

④ピクチャーモード/エフェクトの種類と構造

各社で最も個性の違いが出ているのが画像の調子をコントロールする機能です。
オリンパスの派手なアートフィルターやフジフイルムのフィルムシミュレーションなどメーカーが提供する個性的なパラメーターから、一般的なパラメータをユーザーの好みで調整していくつもカスタム登録する方法まで実にさまざまなアプローチで提供されています。

UIとしては、特別な撮影モードとして提供しているのか、通常の撮影モードの中で選択するのかが大きな違いで、両方に対応している機種も沢山あります。

UXとして自分の作風として撮影前に一度設定して使い続けるという使い方と、シーンや被写体に応じて表現を切り替えながら楽しむ使われ方があり、各メーカーがもっとも頭を悩ませているのではないかと思います。

⑤フォーカス機能群

これまではフレーミング内のXY空間のどこにピントを合わせるかを指示していたが、最近ではフォーカスブラケットなどの登場でZ空間に対しても選択できるようになってきています。

また自分物などの認識をカメラがおこなうことで、ユーザーは複数の選択肢の中から選ぶのかという方向に変わりつつあり、追尾機能と合わせて、一度選択しておけば常に同じ被写体にフォーカスを合わせ続けることもできるようになってきています。

これまでは、中央付近で合わせて、そこからカメラを動かして最終的なフレーミングをおこなうこともありましたが、ミラーレスが一般的になってくれば画面の好きな場所にピントが合わせられるようになってくるため、UIもいろいろなものが出てくるかもしれません。

⑥ドライブ(連写)機能群

一眼レフがミラーレスになり、さらにシャッター幕の動作も不要にしていくことで、写真の撮り方の可能性が大きく広がりました。

これまでのドライブ機能は、単にどのタイミングでシャッターを切るかを決めるものでしたが、最近では様々なBKT(ブラケット撮影)が登場してきていて「複数写真を用いたさまざまな表現手法」を選択するものになってきています。

⑦露出機能群

PASMという違いは、ISO感度のレンジが広がり、自由に設定できるようになったことで大きく変わろうとしています。

フルオート(カメラにお任せ)から、それぞれの値を作画意図に応じて任意に設定する方法まで広がってきており、今後どこまでPASMが残っていくのか見守っていきたいと思います。

トップと最後の画像は、先日の入間航空祭で撮影したブルーインパルスの写真です。会場は大変混雑すると聞いていましたが17万人が集まったらしく、身動きできないほどの状態でした。
それでも空にレンズを向け気持ちよく連写の音を響かせることができました。

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