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シューティングUXが撮影をワクワクさせる

写真体験の中心が、撮影後のエフェクトやSNSに持っていかれそうな今だからこそ、撮影実行フェーズのUXをしっかりと向上させて、本物の情報性と情緒性を持った写真が撮れるようにしていきたいと思っています。

前の記事でも書きましたが、価値ある写真が撮れなければ全ての活動レベルが下がってしまうからです。

どうしたら撮影が楽しいものになるか

撮影の動機と知識をしっかり持って、魅力的な被写体を撮影すれば、楽しくなると前回の記事で書きましたので、今回は視点を変えて直接的でフィジカルに近い部分を考えてみます。

撮影の手応えが減ってきている?

「昔のカメラは、フィルム巻き上げフォーカスをじっくりと合わせて、一枚づつ強い意思をもって撮影していた。」とは年配の方が良く言うセリフですが、

「だから良い作品が撮れた。」という意見には簡単には賛成したくありませんが、現在の撮影UX、特にメンタリティーの部分で違いがあることは事実です。

メカシャッターから電子シャッターへ
静音性と低振動を実現できるため、多くのシーンで撮影できるようになり、シャッターブレの無い高画質な撮影ができるようになります。
さらに完全にメカシャッターが不要になれば、コストダウンの可能性もあり、技術の方向は電子シャッターに向かっています。

その結果、撮影の手応えを、手に感じる振動や、メカニカルな音によって感じることができなくなっています。

スマホでは、撮影のシャッター音を邪魔と感じるユーザーが沢山いるようで無音のカメラアプリが人気ですが、撮影後のGUIの効果によって撮影感は感じることができます。
デザインされた音と画面の変化によって、「シャッターUI」を最定義しているといえます。

デジカメも近い将来、このUIを受け入れる日がくると考えられます。

ソニーのα9では電子シャッターを使って一眼レフを凌ぐ性能と撮影体験を提供しようとしている


消失時間の最短化
一眼レフでは、ミラーアップした瞬間にファインダーがブラックアウトします。ミラーレスでもメカシャッターの場合には幕移動でブラックアウトがあります。

連写で激しい動きを撮影するときには、ファインダーの消失時間は短い方がフレーミングしやすいため、究極的には消失「ゼロ」を目指しており、シャッター感覚の無いムービー撮影に近づいてきています。

クイックなレリーズ
Lumix G9Proなどでは、親指AFと組み合わせて、リリーズスイッチの1stの位置でシャッターが切れるように設定できます。動きが激しい中で一瞬を捉えるスポーツ写真でタイムラグを最小にすることができます。

「フェザータッチレリーズ」は富士フイルムのX-H1で採用されたシャッターチューニングの名称です。レリーズ後のシャッター音の小ささと合わせて、本当に繊細なフィーリングです。

富士フイルムのX-H1は、アナログ的なアプローチで、デジタル時代の操作性を表現しようとしている


つまり、軽いレリーズによって、爆速連写が、無振動、無音で撮影ができてしまいます。

でもそれで良いのでしょうか? 撮影UXデザインとして!!!

このような技術の流れの中で、私たちUIデザイナーは何をしていかなければならにか考えてみます。

昔のような、儀式めいた操作や派手な音と振動のシャッターを復活させようというのではありません。

例えばこんなUXはどうでしょうか

「速さ」と「粘り」のマイクロインタラクションをデザインすることで、フォーカスが矢のように被写体を捉え、被写体が動いても磁石のように粘ってついていく感覚を実感できるUIを作るます。

つまり、シャッターを切った後の動作に山場を持ってくるのではなく、その前に「獲物を仕留めた」感覚を与え、シャッターを切った時にはその成果を静かに手に入れるという感覚です。

「ロックオン」UIや「お前はすでに死んでいる」UIです。

撮影の瞬間のできごとが、スローモーションのように感じられ、「ボールが止まって見えた」UXを提供できる可能性もあります。

実時間に対して、残像化と印象化の情報を与え確かな実感として、決定的瞬間を捉えたように感じることができれば、撮影者はより高い次元でシャッターをコントロールすることができるようになると思います。

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そしてこのシューティングUIをデザインすることができたときに、ようやく私たちは本当のデジタルカメラができたと宣言することができるのです。

製品画像は各メーカーのWebサイトからの引用です。
画像にリンクが張られています。

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