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Cosmic DesignとTRON Project

先日、自分が考えているCosmicDesignの方向性や広さに近い活動をされている方々とお話しさせていただく機会がありました。

その中のお一人にTRON Projectで重要な役割を果たした方がいらっしゃり、お話させていただく中で、30年前の記憶と現在やっているデザイン活動とが繋がったような感覚を得ましたのでそれについて少しまとめてみたいと思ます。

CosmicDesignとは
Webデザインを中心に広まっている「デザインシステム」の中にAtomicDesignという、製品を構成する要素を物質-分子-原子のように階層的に分解・統合していき統一感のあるデザインを効率的に作り出す手法があります。
CosmicDesignはそれをさらに拡張して、一番小さい単位を製品として複数の製品が連携してシステムを作り、システムが連携して大きな社会を作っていく考え方です。


今から30年前、通学時間を2時間近くかけて学校に通っていました。その時間のほとんどは読書にあてられ、毎日のように書店にかよっていました。

その中で出会ったのがTRONの2冊の書籍です。「どこでもコンピュータ」という言葉を知り、将来はトロンキーボードを使ってデザインしたいと本気で思っていました。(いまでもキーボードを沢山買ってしまったり、すべてのPC、タブレット、スマホがスタイラスペン対応なのはきっとそのためです)

TRONを知った切っ掛けや、その当時のコンピュータ業界や秋葉原の思い出話を書いていると本題にたどり着けないので話を次に進めます(笑)・・・

TRONに関する情報はトロンフォーラムのサイトをご覧ください。


BTRONとITRONが一つのアーキテクチャとして存在していた意味

BTRONはビジネス用のPCのためのOSやハードウェアを指し、ITRONは組み込み機器のためのOSを指しています。他にもいくつかの〇TRONがあり全体が一つのTRONアーキテクチャでした。現在ではPCやスマホのOSは組み込み系とは別の会社が作っているためそこには統一されたアーキテクチャはありませんが(連携の仕組みはあるがシームレスではない)30年前には一つのものとして考えるビジョンがあったのです。

当時の私はパソコンに憧れていたのでBTRONのことばかりに着目していましたが、今デジカメや医療機器のデザインを考えるときに、それがどれ程重要なことだったかが分かるようになりました。

プロダクトデザインとGUIデザインをトータルにデザインすることや、組み込み系とPC/スマホ系をトータルにデザインすることは、専業化が進んでしまった現在では少し難しくなってきています。

一方でSociety5.0に向けてフィジカル空間とサイバー空間が融合することが大切だと言われています。それはIoTやロボティクスを実現するために必要だからです。(本当は逆で空間融合のためにIoTなどがある)

TRONが目指したのは、あらゆる領域の実装からユーザーインターフェイスまでを、きちんと繋がり統一した思想で使えるようにするというものでした。

それに対して現在の状況は、インターネットの普及と各サービスのAPIによって繋がることに関してはどうにかなるところまできています。あとはユーザーインターフェイスを、ユビキタスでコンテキストベースのものにしてシームレスなものにしていければTRONが目指したビジョンに近づけるのではないかと考えています。

UIデザインの視点で言えば、それそれの機器のOSは何でもよく、デザインシステムとしてAtomicDesignからCosmicDesignまでの領域が体系的に実装され、ユーザーにシームレスな体験を提供できるようにならなければなりません。

デザイナーとしてTRONの思想を受け継ぎ、それを実現していくために活動していきたいと感じました。


電脳住宅を簡易プロトタイピングで実現する

30年前に「電脳住宅」という壮大なプロトタイプがありました。時間と費用を掛けた実証実験ということになります。

原型としてのプロトタイプでは1つの電脳住宅で大きな意味がありましたが、これから本当に社会へ実装していくためのプロトタイピングでは無数の状況に対して無数のアイデアを試してみる必要があります。また参加企業も住宅メーカーや電機メーカーだけでなく生活のあらゆる企業が手を結んでいかなければなりません。

それに対応できるプロトタイピング手法とツールを、自分たちの手で作っていくことが重要だと考えいます。

電脳住宅のスケールを、時間も費用もかけずにプロトタイピングして、面白くなければ小さく丸めてゴミ箱に捨てられるようなものが作れないかというのが、CosmicDesign領域でのプロトタイピングへの要求です。

一つの解決方法はコンピュータの中で仮想に作って体験することです。VR技術によって現実的になってきています。もう一つは、何にでも変身できるデバイスを作ることです。あるときは携帯電話であるときはデジタルカメラになれるようなもので、既にほぼ実現しています。

必要な技術は既に目の前にあります。あとは「だれでもプロトタイピング」を実現するビジョンとアーキテクチャを描き皆で集まることができればきっと実現できるはずです。


実身/仮身モデルが多様な存在意味を扱うのに必要になってくる

BTRONの中で私の考え方に大きな影響を与えたのが「実身/仮身」の考え方です。ファイルシステムとドキュメント(コンテンツ)が融合し、ユーザーのコンテキストに合わせて柔軟に対応できるオブジェクトの接続情報を扱うことができると考えています。

これまでデジカメのUIアーキテクチャを長く考えてきましたが、写真が集まりタイムラインができ、各自のタイムラインが集まりファミリーやコミュニティのタイムラインができていくような方向と、1枚の写真に複数の人が写っており、無数のトリミングができるというZooming Designを作ってきました。

このように1枚の写真をファイルとして扱うのではなく、多様な意味を持った存在として扱うことが重要な意味を持つようになっており、今も基本的にはこのアーキテクチャ(コンテキスト)によって機器連携やアプリ/クラウドとの連携価値が定義されています。(実現しているのは一部ですが・・)

現在の多くのOSのファイルシステムは、ファイルという実体のあるメタファを使って分かりやすさを優先していますが、多元的で複雑な意味や繋がりを実現するために、キーワードや検索といった補助的な手段を使って実現しなければならなくなっています。

PCやスマホの画面でGoogle検索すれば複数の結果がで表示されユーザーはそこから情報を選択するという形で実用になっていますが、これから音声を使ったVUIが普及してくれば、ユーザーの価値観やコンテキストによってシステム側で1つの情報を選択しなければなりません。そのためのファイルシステムをもう一度考え直す機会を作っていければ良いなと思っています。


TRONをご存じない方には何を言っているのか分からない文章になっていると思いますが、私がこのnoteに色々と書いている全ての原点にTRONがあるということをお伝えしたくて書いてみました。



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