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イノベーションスタジオを作るために考えたこと

こんにちは、工房系デザイナーのkoyokoです。日々プロトタイプ作りに精を出しています。

先日は、会社のTwitterアカウントのフォロワー数を、個人のnoteアカウントが追い越した話を書きましたが、それを幸せだと思っている訳ではありません。一週間のほとんどの時間は会社で過ごしているので、そこで楽しい仕事が出来て、会社の業績がどんどん伸びれば、もっと幸せになれると思うからです。

そこで今日は最近気になっている、企業の中でどうやって個人活動を超えるスピードを手に入れて、ワクワクするイノベーティブな活動ができるのかというテーマについて考えてみようと思います。第一弾として「場」についてです。

私たちが単に工房と呼んだりファブリケーション・スペース(Fab)と呼んだりしている場所から、モノ作りだけでなくもっと広い意味で新しいものを作っていくクリエイティブ・スタジオなどと呼んだりする場所まで、どのように運用しどのような設備や材料があればイノベーションが起きてくるのかということを考えてみます。

オフィスとは違う場所

まずイノベーションの定義として「これまでの方向性ややり方を変えていくこと」としておきます。

追い詰められた気持ちで目の前の結果を出さなけらばならない状況では変化を生み出すことはできませんので、まずは「気分を変える」ことによって視点を変えていきます。特に「リラックス」することによって視野が大きく広がります。

オフィスと休憩所の中間のような「サードプレイス」を設けることができれば、リラックスした状態を長時間保つことができます。

研修所を持っている大手企業も多いと思いますが、そういう特別な時間を過ごさなければならない場所とはちょっと違います。

オフィスからさっと移動できて、さっと戻れるくらいの距離感が丁度よい場所です。

せっかく場所を作るのだからカフェのようなオシャレ空間にして「気分を上げる」ことも同時に考えても良いですが、それは多分ほとんど意味がありません。むしろオシャレ空間を汚さないように「管理する」ようなことになればマイナス効果しかありません。

もっと最悪なのは、そのオシャレ空間が特権階級へのご褒美となってしまうと特定のアイデアしか存在できない場所になってしまいます。多様性を失う方向に進んでしまいます。

理想的なのは小中学校の「図工室」です。何かをするときも気兼ねなくできる雰囲気と教室(オフィス)とは違う空気感を持っています。

大きな机があり、いろいろな姿勢で座れたり他の用途にも使える椅子があれば最高です。

新しい文化を作る

場所や集団が持つ性格を「文化」と言います。小さな組織やグループであれば「空気」と表現した方が自然かもしれません。

誰かが作るルールやリーダーシップは簡単に作ることができますが、それをみんなで成長させていくことは難しくなります。

その場所がどんなことをする場所で、自由の範囲と、物事を進めるスピードはどの程度なのかを、文化や空気として共有することができれば、メンバー同士のコミュニケーションが成立しやすくなり、面白いことが起きる確率が高まります。

会話の無くなったオフィスから離れた場所で、ワイワイガヤガヤと仲間を作って過ごす楽しさを味わえるようになれば成功です。

そして何よりも、その空間に多様な方向性の人材が集まり、意見交換や議論ができるようにしていくことができれば、何かが生まれる切っ掛けを作ることができます。

多様な職種の人が集まることが大切だとする多様性の作り方もありますが、私の意見は少し違います。専門性や立場が違えば要求事項の差や対立は発生するかもしれませんが、通常の業務では丸く調整されてしまいます。つまりいつと同じことしか起きません。

それよりも同じ企画者、同じデザイナー、同じ開発者で、意見が違う人が議論をすることでその専門分野における新しい方向が出てきます。

ではどうすれば、自由で楽しくて、意見の対立をベースとした調整型ではない本当の議論ができる文化を持つ場を作れるのか考えてみます。

成果物はプロフィールとプロトタイプ

単に気分転換だけでオフィスに戻って本業を頑張るのでも良いのですが、イノベーションスタジオでの「アウトプット」を想定しておきます。

まず、そこに参加する人の知識や技術、思考の方向など「プロフィール」を知ることで、本業で新しいことに取り組むときに大いに役立ちます。意見の対立以外にも自分が気付いていない視点からの意見を持つ人や、もっとシンプルに特別な技術や知識を持つ人を見つけられる方法が必要となります。

最初はただ自己紹介をしていても良いのですが、何かを一緒に作ることでより深く知ることができるようになります。

そこでお勧めなのが「プロトタイピング」です。本業と同じことをするのではなく、新しいアイデアをとりあえず形にすることで、オフィスには無いスピード感を体験できますし、メンバーの意外なプロフィール(キャラクター)に気づけたり、何よりも新しいアイデアを生み出すことができます。

ここでのプロトタイプは製品開発での設計や試作とは全く違うものです。誰でも作れるように、小中学校での図工レベルの工作やお絵描きを使って、数時間で作るもので、アイデアの本質や基本構造を表現するものになります。

プロトタイプを作るための設備と材料

ここまでの話をまとめると、リラックスできて平等で自由な空気で、みんなでプロトタイプを作る場所が、イノベーションスタジオということになります。

みんなでプロトタイピングするための設備と材料を少しリストアップしてみます。

<最小のツール>
・カッティングマット(A3以上)
・カッター/彫刻刀
・ハサミ
・ガムテープ/マスキングテープ
・両面テープ
・ホットボンド
・直定規(カッター用、50cm以上)
・油性ペン/サインペン
<あったら良いツール>
・大きな机
・ホワイトボード
・ボール盤(ドリル)
・レーザーカッター/帯鋸
・3Dプリンター
・PC(27インチ以上の大型モニタ)
・簡易CAD(Fusion360など)
・プロトタイピングアプリ(AdobeXDなど)

<最小の材料>
・ボール紙(A3以上)
・スチレンボード(5mm厚)
・アルミ針金(Φ2、Φ4)
・ビニールチューブ
・クリアファイル
・ビニール袋
・紐
<あったら良い材料>
・スタイロフォーム
・べニア板/MDF板
・ネジ
・取付金具/穴あきプレート

最後に、こんな運用ができたら素敵

運用は、基本的に自由でオープンなものが理想ですが、高度な工具を使う場合の安全管理と場を盛り上げるためのファシリテーター(決してリーダーではない)はいた方が立ち上げがスムーズだと思います。

基本的なツールや材料は、ストックされて自由に使えるようになっていて、千円/月ていどは各自の判断で勝手に購入して追加できるようになっていると、ストレスなく発想を豊かにして経験を積んでいくことができるようになります。

これは購入許可を取るコスト(手間と時間)を考えても効率的ですし、なによりも自由とスピードに対する強力なメッセージになります。

さらにお勧めは大量の「うまい棒」がストックされていることです。ディスカッションの時の、製品A、製品Bになったり、登場人物のAさん、Bさんになったりしてくれます。

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