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【E-M1X】UI構造と利用シナリオ

10連休にOLYMPUS E-M1Xを借りていろいろな被写体を撮影にいきました。そこで体験したかったことは大きく2つあります。ひとつは高機能になったカメラで確実・快適に撮影すること、もうひとつは最新の機種でオリンパスのデジカメUIがどのように進化しているかを確認することです。

UIにはボタンやダイヤルの操作性、いわゆるエルゴノミックの評価もありますが、ここでは機能設定のための「UI構造と操作性」を話題にしていきます。

この記事では、M1XのUIについて私が体験し理解したことを書いていきますので、UIの動作を完全に分析したというよりも、私の利用文脈の視点からのレポートになります。そのため視点が偏っていたり、誤解している部分がある可能性がありますので、あらかじめご了承ください。


UI構造と利用シナリオ

UI構造とは、デジカメをユーザーが利用するときに操作する複数の手段や分類、順番が作り出す論理的・物理的な構造のことを指します。

UI構造には、デジカメを開発するときに作られるシナリオと、実際につくられたUIから発生するシナリオがあります。さらにユーザーが期待しているシナリオがあり、この3つのシナリオが一致していれば、全体として統一感があり良いUIだと感じることができます。
いづれにしても、UIは特定の利用シナリオを想定した構造で作られており、それ以外のシナリオで使おうとすると不便を感じることになります。

残念なことに多くのメーカーでは、UI構造をデザインするときに想定した利用シナリオを明確には発表していません。大雑把に初級・中級・上級ユーザーに分けて何種類かのメニューデザインを使いまわしているのが現状です。

そのため、ユーザーは自分の利用シナリオをしっかり認識してそれに一致したUI構造を持つ機種をみつけだすか、あるいはメーカーのUI構造が持つ利用シナリオに合わせて使っていくいづれかを選択しなければなりません。

一般に、作画指向が強い場合には、詳細調整の頻度が高くなり、そうでない場合には機能のON/OFFやモードの切り替えだけで使うようになります。
M1Xはハイエンドのプロフェッショナルモデルですので、さまざまな詳細調整の項目を持っています。それらがどんなUI構造=利用シナリオで実装されているのか細かく見ていきます。


M1Xの進化点

M1Xのメニュー画面には「マイメニュー」というタブが追加され、良く使うメニュー項目を5つのグループに各7個づつ分類しておくことがでるようになりました。

また数年前の機種ではできなかった、カスタム設定モードで設定を変更しそれを上書き(更新)することができるようになっています。

この2つのUIは、オリンパス製デジカメのUI構造が持つ利用シナリオを大きく変えるために導入されたと考えられますので、まずはUIの基本構造とその中でもメニューの中身について体系的にまとめ、その後2つの新UIが想定している利用シナリオについて確認していきます。


UIの基本構造

まず上位の状態として、電源レバーがあり、次にモードダイヤルがあります。これはいずれも物理的なポジション(状態)を持っていますが、特定の条件によって動作状態とUI状態に乖離が発生するものになっています。

細かいところでは、電源レバーは左肩の上にあり左手での操作が必要ですが、右手で操作したい場合にはファンクションレバーを電源レバーとして設定することもできます。
モードダイヤルはメカニカルなものですが、カスタム登録を呼び出すことで一時的に他のモードにすることができます。

この2つの乖離状態は、デジタル機器として、より柔軟に動作できるようにしたもので、局所的に見ればユーザーに混乱を与えますが、歓迎すべきものだと考えています。


主な機能操作にはダイレクトボタンがあり、単押しと長押し、また長押し中のダイヤル操作が可能です。

ダイレクトボタンに暗所用のイルミネーションはありませんが、メニューからすべての設定にアクセスできるのと、ファインダーを覗いた状態で使う場合にはボタンは直接見ませんので、これも合理性があります。


OKボタンでスーパーコンパネ/ライブコントロールを表示し、メニューボタンでメニュー画面を表示することができます。

ダイレクトボタンと2つの設定画面で重複する設定も多く、さまざまな入口から機能にアクセスすることがでる構造になっています。

上からダイレクトボタン、スーパーコンパネ、メニューの各画面イメージ



メニュー構造の特徴

撮影メニュー項目の多くは、スーパーコンパネ/ライブコントロールからも設定できますが、デジタルテレコンやライブNDのようにメニュー内からでしか設定できない機能もあります。
また、機能の詳細設定はメニューでおこなう構造になっています。

カスタムメニューはA1~J3までの23タブに分類されている。AはAF関係、BはButton関係、DはDisplay、EはExposureという風に関係と覚えると良いらしい


通常の撮影時に使う撮影メニュー、再生時に使う再生メニューなどとは別に「カスタムメニュー」があり、細かい設定を事前に設定しておくようになっています。

カスタムメニューの利用シナリオを「事前に設定する」としているのは、大変に深い場所にあるからです。
このようにUI構造が持つ利用シナリオ通りに「事前設定と撮影時設定」という使い方をしてもらえれば良いのですが、ユーザーの表現要求が単に機能を使うだけではなく、撮影しながら詳細に調整したい場合など、他の場所にある深いメニューにアクセスしなければならないという状況になってしまいます。


分離方式と詳細方式の併用

ある機能を使う場合には、事前に詳細設定した後で機能をONにして撮影し、撮影結果を見て詳細を微調整するためにパラメータを変更するというのが実際におきる利用シナリオになります。

M1Xを使っていて気づいたのは、撮影メニューとカスタムメニューを併用した2ヶ所に分離した構造を嫌って、撮影メニューの機能のON/OFF設定の下階層に詳細設定を置く方式も多く使われようになっています。撮影メニューでONにした後で、右キー(▶)から連続操作で詳細設定ができるようにしている機能も増えてきました。

機能のON/OFFと詳細設定が分離しているものがある一方で、ライブNDでは一ヶ所ですべての設定ができる


ただし、このように明確な構造になっているものばかりではありません。例えば「プロキャプチャー」では、その機能をONにするための撮影メニュー1のドライブモードから「ProCap」を選択し、遡り時間や撮影枚数はカスタムメニューの連写設定からProCapの下階層に行って設定することになっています。

一瞬を撮り逃さないためのプロキャプチャーを設定するまでの手順は大変多く、なぜか初期値は撮影枚数が制限されており、ほとんど何も撮れない設定になっている


他の機能と同様の構造にするのであれば、基本設定項目(ProCapH)の右側に▶が付き詳細設定できるようになっている方が一度に設定ができて便利に思えますがM1Xではそうなっていません。

インテリジェント被写体認識AFの機能モード(AF-C+TR)選択と認識被写体選択も同様に、見つけにくい構造になっているため、初めて使う人は注意が必要です。



解決方法とさらなる混乱

基本UI構造をみていると「機能の入り口(ON/OFF)は見つけやすいけど、細かい調整は一部の人がやるだけだから見えない場所に分けておくよ」という利用シナリオになっており、そのため詳細設定や調整が必要な新機能などが使いにくくなっています。

この状況を解決し、実際の撮影状況で使えるものにするためには、しっかりとカスタマイズしていく必要があります。M1Xを使いこなすためにはじっくり時間をかけてカスタマイズしていくことをお勧めします。

ただし、せっかくのカスタマイズも撮影の利用シナリオに合わない動作が含まれるなどさらなる混乱を起こしている部分もありますので、事前にその特性を理解しておく必要があります。

メニュー周りの工夫

メニューの最後に使用した項目を記憶しておいてくれるので、メニュートップからアクセスする必要はなくなっています。ただし項目のトップに戻ってしまうため、深い項目を何度も調整したい場合には、設定変更するまでに何度も降りていく必要があります。代表的なのがフォーカスブラケットでフォーカスピッチと撮影枚数を変更するのにかなりの距離を移動しなければなりません。

そういった機能がある一方で、ライブバルブはモードダイヤルとしてバルブ撮影が独立し、ライブバルブに設定している状態ではメニューボタンを押すと最初に各ショットのシャッター速設定が表示されるようになっており、大変使い易くなっているという例もあります。

現状では、機能ごとの使い勝手のレベルばバラバラになっている印象で、一貫した思想をもって作られていない感じがしてしまいます。


マイメニューの使い道と制限

メニュー位置の記憶だけでは、最後に使った項目に対してしか便利になりませんので、ユーザーが良く使うメニュー項目を登録しておける「マイメニュー」がM1Xから新たに搭載されました。

通常メニュー画面で右上に★マークがついているものが登録可能で、ムービーボタンを押すことで登録できる。マイメニューの中でもう一度ムービーボタンを押すと、並び替えや削除などが可能



機能が多くなりメニュー項目が増えたことで単純にアクセス性が低下してしまったためめ登録しておくということだけではデジカメのUXデザインとして少し弱いというのが私の考えです。

それだけであれば単純に「最近使った項目」というスマートマイメニューに自動で登録してもらっていた方が使い易いかもしれません。

ユーザーがグループを作り登録するからには、そこに撮影状況や被写体ごとの設定内容を反映して欲しいということであり、ユーザーはそれを期待します。
ところが現在のマイメニューでは、1つの項目を複数のグループに含めることができません。ドライブやAF、絵作り関連の項目などどんな撮影に対しても設定したいものはありますので、この制約は極めて致命的です。

PCのショートカットが複数の場所に置いておくことができるようになっているのも同じような考え方によるものです。

オリンパスが提供しているメニューは細かく分類され、項目の重複はありませんので、それと同じように機能ごとに分類したシンプルなメニューを作ることを想定しているのでしょうが、ユーザーはもっと利用文脈に沿った設定の組み合わせ一覧として利用したいと考えるはずです。

ユーザーの利用文脈には単純な正解がないためこれまでメーカーはそれに沿ったメニューを提供できていませんでした。メニューのカスタマイズはこれまでできなかったユーザー一人一人の使い方に合ったメニューの提供を実現する手段の一つなのです。
だからこそ、これまでの機能分類という発想を離れ、ユーザーの利用文脈に対応できるようにしていかなければ意味が無いと考えてしまいます。


カスタム設定と呼び出しUI

M1Xを使いこなす最も重要なUIが「カスタム設定」です。使いたい機能をいちいちメニューから呼び出していたのではシャッターチャンスを逃してしまいますし、多くの機能は複数の項目の組み合わせで適切に動作するようになっていますので、現実的にカスタム設定して使うことが前提となっています。

撮影メニュー1の一番上にカスタム設定がおかれている (画面の撮影を忘れてしまったため入口だけです)



M1Xでは4つのカスタム設定をおこなうことができるようになっています。今回の10連休のように集中して様々な被写体を撮影する場合には、あと2つくらい欲しいと感じました。

カスタム設定をすると、PASMなどの撮影モードも含めてあらゆる内容がまるごと登録されるみたいです。(ちゃんと調べてはいません)

カスタム設定の呼び出し方には大きく2つの方法があります。一つはモードダイヤルのC1~C4を選択することで、特に何も設定しなくても登録するだけで呼び出すことができるようになります。
もう一つは、Fnボタンに呼び出しを割り付ける方法で、ある撮影モードで使っているときに一時的に呼び出して撮影する使い方ができます。

モードダイヤルで呼び出す場合には、カスタム設定に対して設定を変更し、そのモードのままメニュー画面から上書き登録することができるので、少しづつ自分好みにカスタム設定を育てていくことができます。(以前のオリンパス機種ではできなかった)

Fnボタンで呼び出す場合に大きな制約があります。使いたい機能を登録したカスタムを呼び出し、その詳細設定を変更しようとすると、Fnで呼び出した機能がキャンセルになるという動作をしてしまいます。

例えば、Aモードで通常シーンを撮影しているときに、1枚だけライブNDでも撮影しておきたい場合、Fnボタンに割り当てると便利なように思いますが、ライブNDはSモードかMモードでしか使えないため、Fnボタンで呼び出したライブND機能のND番号を変更しようとメニューボタンを押すと、その瞬間にAモードに戻ってしまいライブND機能を設定することができなくなってしまいます。



まとめ

ここまで、M1Xで体験したことをベースに、UI構造と利用シナリオについて書いてきましたが、私の説明が悪い部分もありますが、全体に複雑であることが伝わったと思います。つまりこの記事を読んだだけで理解できないのが普通です。

M1Xは、インテリジェント被写体認識AFやライブNDなど新しいカメラの使い方や表現を実現し楽しいカメラになっていますので、UI構造の利用シナリオをもう一度整理して、各機能がスムーズに使えるように進化させられればさらに楽しいカメラになるのではないでしょうか。

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