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デジカメUIをビジネス視点から考える

これまで「デジカメUIアーキテクチャ」「デジカメUI入門」において、カメラを中心にそこから広がる世界をUIという形で記事にしてきましたが、
今回は逆に、ビジネスやブランドの視点から、カメラやその周辺の世界の変化を書いてみます

カメラUIをより立体的に、俯瞰的に理解してもらえるのではないかと思います。

これまでのカメラビジネス

従来のカメラビジネスは、ボディやレンズ、アクセサリーを売って儲けるビジネスでした。

フィルム時代には、その周辺に、フィルムビジネスとプリントビジネスがあり、さらにその周辺に撮影ビジネスや活用ビジネス(フォトフレームとか)がありましたが、富士フイルムなどのフィルムメーカーは全ての領域をビジネスにしていたのに対して、カメラメーカーはほとんどビジネスの幅を広げてきませんでした。

もちろん、写真展をおこなうギャラリーを運営したり、写真教室を開催したりして写真文化の発展もおこなっていますが、それはあくまでも宣伝や社会貢献としての活動に留まっていました。

そんな時代が長く続いた後、カメラがデジタルになってからもしばらくはビジネスモデルに大きな変化はありませんでした。

唯一の変化は、自社のユーザーに限定した写真SNSを新たに立ち上げた程度でした。

コンパクトデジカメ中心の時代には、とにかく画素数を上げて価格を下げることで、ユーザーを増やすと同時に、買い替えサイクルを短くし大量のカメラを売ることに注力していました。
ある程度成功をおさめることができましたが、スマホの登場で一気に萎んでしまいました。

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ビジネスを表から見ると上記のようでしたが、デジカメ開発の現場では最初の数年のうちに、開発するカメラのコンセプトが大きく変わっていっため、デジカメを立ち上げデジタル化による可能性を広げようとするデジタル文化の人と、沢山のオシャレカメラをとにかく安く大量に作ろうとするモノ作り文化の人が入れ替わるという大きな変化が起きました。

各社の状況は違うと思いますが、価値観の変化の中で、徹底的に相手を排除したメーカーもあったでしょうし、逆に温存できていたメーカーもあったと思います。

この時の対応がこれから未来のビジネスの豊かさに大きな影響を与えることになります。
5Gによるネットワーク化、AIによるインテリジェント化によって、本当の”デジタル”が問われてきますので、デジタル文化の人がどれだけ生き残っているかが重要になります。


これからのカメラビジネス

ビジネスモデルが大きく変わり始めたのがスマホの登場以降です。

まず気軽に持ち歩いて簡単に撮影するカメラ(普通のコンデジ)は売れなくなり、その代わりに作画機能・性能を高めたカメラ作りにシフトしていきました

もう一つは、スマホをカメラのUI拡張デバイスとして利用するようになったことです。
スマホの本質は、ハードウェアではなく、その上で使われる様々なサービスのアカウント(コミュニティへの参加権)であり、ハードウェアの使用年数を超えてライフログとしての価値を持っています。

この2つの出来事によって、カメラを売るビジネスから、社会や人生の中で価値ある写真を撮影し、それを活用しコミュニティの中で価値ある自分を表現するものへと変わってきています。

具体的には写真コンテンツにフォトレシピを組み合わせて結果価値と体験価値をコミュニティに流通させ、カメラUIもそれに対応させます。

この変化はまだ始まったばかりで、実際にビジネスになっている訳ではありませんが「デジタル・ライフログ」という大きな流れの中で、カメラメーカーはフォトライフ・サポートカンパニーにならなければ生き残れなくなっていくと考えられます。


カッコいいカメラから「カッコいいユーザーへ」

ハード中心のビジネスでは、カッコいいデザインや製品の品質が重要でした。ブランド価値はハードの品質とイコールと考えられていました。

しかしサービス中心のビジネスでは、主役はユーザーであり、ユーザーがカッコいいことが重要で、ユーザーの体験品質がブランド価値の指標となります。

どれだけ輝いているユーザーが沢山いて、それに憧れてさらに多くのユーザーが集まってくるかがブランドの総合価値です。(このnoteのサービスコンセプトと同じです)

これらのブランド価値は、ブランド・ポエムをホームページで発信しているだけでは作られません
「目に見えないデザイン」をモノ作り文化の人が頑張るとポエムを発信してしまうことが多いようです。
良いハードは作ったので、あとはユーザーさん自分で楽しんでねっという願いを込めてしまうみたいです。
逆にデジタル文化の人は、ブランド・ストラテジーを作り、ビジネスプランを立て、UIアーキテクチャを構築することに慣れていますので、具体的なサービスによってブランドを作ろうとするのではないでしょうか。

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2020年の東京オリンピックまでは機能開発競争でバタバタしていますので、ハード中心のビジネスが続きます。
凄い連写のできるボディと凄い望遠レンズをたくさん売ったメーカーが勝ちです。

でも本当の勝負は、オリンピックの勢いて買ってしまったハードをユーザーが活用できる体験価値を継続的に提供かどうかにかかっています。
そのために今、着々と準備をしているメーカーが最終的に勝ち残ることになります。

ええっ、もう手遅れだと思ったモノ作りだけで頑張っているメーカーの人も、オリンピックまで後2年ですが、安心してください。
5年前と違って今は、クラウドサービスのフレームワークやインフラが整備されているので、あとはアイデアと経営判断があればすぐに作ることができます。

問題は、ハード中心の価値観で作られた社内組織の方だと思いますが、経営者が明確なメッセージを出し、リーダーの半分をデジタル文化の人に入れ替えられればきっと上手くいくのではないでしょうか。


カッコいいユーザーを作るために何をすれば良いのか。



ユーザーコンテンツを流通させる

エキスパートのナレッジを価値に変える

エキスパートに憧れる人がエキスパートになれる道を作る

ユーザーコンテンツがネットワーク上を宇宙の素粒子のように飛び交い、その中で輝く星が生まれるようにエキスパートが現われ、そのエキスパートに憧れる人が、それを目指す道を進んでいく。

というのが、基本になると思います。(ちょっとポエムになってしまった)

通常のWebサービスはスマホ上でおこなわれますが、デジカメではユーザーコンテンツの大半は、カメラの操作、撮影行為の中で作られます。
またそのコンテンツの鑑賞方法もスマホで見るだけでなく、カメラに取り込み自分の撮影体験として再現することができます

想像して楽しむだけでなく、フィジカルな実行を伴うコンテンツは、それだけで魅力的であり、行動をコンテンツ化し、またコンテンツを行動に変換するところにAI技術を活用すれば、多くの人が発信/受信を楽しむことができるようになります。

こんな世界が10年後には当たり前になっているはずです。

《追記》
続編を書きました良かったら読んでください。

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