見出し画像

物語を写す

以前から写真とは単に瞬間の事実だけを伝えるものではなく、前後の時間やフレーミング外の世界との繋がりを上手に伝えるものが良い写真だということは言われてきました。

本当にその通りだと思います。写真に写っていない時間・空間なのに、何かが起きた後の「残像」やこれから起こる「予兆」としてある瞬間の中に含まれていると感じることがあります。

たぶん私たちが生活してきたなかで自然に学習したビッグデータから動体予測機能のように、前後のシーンを想像できるようになっただけかもしれませんが、「最高の瞬間」というのは強い流れのベクトルやエネルギーを含んでいるのです。

そのエネルギーを感じる力が「写真力」なのかもしれません。

今回このようなことを考えるきっかけを与えてくれたのは発売されたばかりの2冊の本です。

米美知子さんの「詩的憧憬」、別所隆弘さんの「最高の一枚を写し出す写真術」を見ていると、写真を撮る魅力は、世の中にこんな素敵な物語があるということに気づかせてくれることだったり、それを人と共有することができることなんだと改めて感じました。

物語が先か、写真が先か

自分がいる空間の中から、物語が見えてきてそれを表現する写真を撮る人と、それとは逆に、瞬間のエネルギーを見て写真を撮りその中に物語が見えてくる人がいるように思います。

スポーツカメラマンなどは圧倒的に前者が多いように思います。スポーツという物語の中で、絶対に撮らなければならない瞬間や表情を捉えることができるからです。

ポートレートや風景写真、乗り物の写真などは後者です。なぜなら実際には前後の時間に大きなドラマなど何も起きない訳ですが、それでもある瞬間のある状態の中に「もしかしたら・・」というドラマが起きるかもしれない揺らぎが存在し、その瞬間の表情をと捉えることができるからです。

写真と真剣に向き合っているといつかそのような境地に達することができるのかもしれませんが、自分の写真を見返してみても、物語が匂い立つような写真はほとんどありません。

そこで、私が実践している手法を紹介してみます。

擬人化手法

動物や風景、花や虫、時には人間まで、自分が好きなようにキャラクターを与えて「擬人化」してみましょう。
具体的には、その対象が言うであろうセリフを自分でつぶやいてみるのです。犬や猫が歩いてきたらその子のセリフをぶつぶつ言ってみてください。

男の子言葉になるか女の子言葉になるか。楽しそうか文句を言っているか。何かのセリフが出てきたら、それをいかにも言っている瞬間を写真に撮ろうとしてみてください。

技術的に難しければ、連写で沢山撮って、その中からセリフに合った瞬間を見つけても良いと思います。

「ピタッ」とくるものが撮れていなければ、その写真は失敗です。また頑張りましょう。
実際ぴったしくる写真がそう簡単に撮れるわけではありませんので気長に楽しむ必要があります。

「ぼく全然眠くないよ」

他人同士で物語をつくる

日常生活の中でそうそうドラマチックなことは起きません。そんなときはバラバラに動いている他人同士を一つの物語でくっつけてしまいましょう。

もちろんプライバシーには最大限配慮をしなければなりませんが、写したいのは物語なので偶然参加してもらうことはありだと思います。

全く関係ない二人ですが、斜めの一本の線で一つの物語のように見えます

色や構図の面白さで写真を楽しむこともありますが、そこから一歩踏み出して「物語」の写真をもっと目指してみたくなりました。
今年はどんな物語を見つけることができるのか、想像の翼を広げて楽しみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?