見出し画像

時間の密度を凝縮する

「今日が人生最後の日だとすれば自分はこの仕事をやりたいと思うか、と問いながら生きてきた」

故スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学で語った有名なスピーチの一説。人生の最後を見据えることで、時間の密度が凝縮される。それは、1分1秒の価値がグッと高まることを意味する。

2007年に公開されたジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが共演する『最高の人生の見つけ方』という映画があった。

仕事に人生をささげた大富豪エドワード(ジャック・ニコルソン)と、家族のために地道に働いてきたカーター(モーガン・フリーマン)は、入院先の病室で知りあった。共に余命は6か月。やりたいことをすべてやり尽くそうと決意し、無謀にも病院を脱出。“やりたいことリスト”を手に、さまざまなことに挑戦する。(シネマトゥデイ)

二人は「棺桶リスト」(死ぬまでにやりたいことリスト)をつくり、リストに書かれたことを1つずつ実行していく。「スカイダイビング」「見ず知らずの人に親切にする」「泣くほど笑う」「世界一の美女にキスをする」「荘厳な景色を見る」など。本当に伝えたかった気持ちや、本当に生きたかった人生を深く見つめ直す二人の物語を通して、幸せに生きることについて考えさせられる。

キャンサーギフト(がんがくれた贈り物)という言葉がある。以前、がん患者の方から教えてもらった。がんになったからこそわかること、気づけること、時間やいのちの大切さ、家族や友人周囲からの暖かいサポートなどを呼ぶそう。「がんになったことによって得られたものもたくさんあった」「がんになって幸せ。今を生きる喜びを噛みしめることができる」と感じることを指すそう。もちろん当事者の方でも皆んなが思うわけではないし、純粋にはよろこべるわけでないだろうが、確かに死を意識することによって当たり前に思っていたことの有難みを感じることができるのだろう。

「有難い」は文字通り、有るのが困難、めったにない、珍しいという意味。だからこそ、貴重である、かたじけない、もったいない、畏(おそ)れ多いという感謝の気持ちを表す言葉になったといわれる。この言葉、実は仏教の仏説譬喩経という経典のなかに「盲亀浮木のたとえ」と言われるたとえ話が語源だそう。

どんなときでも、誰に対してでもすなおに「ありがとう」と言えるようになりたいものだけど、口でいうほど簡単なことじゃないなとも感じる。それこそ、死を覚悟するなかで、ようやく身にしみて感じられることなのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?