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G20大阪市民サミット

明後日から大阪で開催されるG20を前に、市民が主体となって諸課題について考える、G20大阪市民サミットの分科会に参加したのでメモをシェア。

僕が参加したのは、[地域から世界へ:住民主体の政策立案・政策協働をめざして]という内容で、アドボカシーを中心テーマに据えた分科会。

日本でも少しずつ認知されてきたアドボカシー(人々の声を政策に繋げ実現する活動)。よく知られた国際的なものだけでなく、日本の地域レベルでの優れた事例を紹介対比し、人々やNGO/NPOが世界と繋がりながらアドボカシーや政策実現・協働のチカラをつけ、地域から民主主義を育む道を探ります。

登壇者は、NGOを中心に様々な社会課題に幅広く精通している加藤良太氏、岐阜県関市のまちづくりを行う北村隆幸氏、名古屋NGOセンター政策提言委員をつとめる西井和裕氏、同志社大学の新川達郎氏。

加藤良太氏「世界、国レベルかのアドボカシーから学ぶ」

そもそもNGOってなんだろう。非政府組織。第二次世界大戦後、国連が再結成された。戦後の状況を鑑みながら、国連は、国家の代表者だけでなく、市民レベルでの意見やデータ、ファクトを国連に届ける必要があるだろう。そのためのポジションとして、NGOがより発展していった歴史がある。そういった背景を鑑みると、モノを言う人、モノ言う主体として成り立ってきたと理解している。NGOにとって、アドボカシーは根源的な活動と考えている。

NGO・外務省定期協議会コーディネートしている。内容はODA政策協議会、連携推進委員会、全体会に分けられる。年間に7回、それにまつわる打合せをあわせると月に1回ぐらいは、外務省の方と密にコミュニケーションをとっている。地方自治体でもNPO/NGOや市民と意見交換する場をつくる場合は増えているが、しかし多くが行政側がアジェンダを用意し、そのアジェンダに沿って意見をくださいというパターンがほとんど。そもそもアジェンダに問題があったり、その背景から考える必要があることも多い。外務省との協議会は、議題提案は対等、相互に議題提案をする。されには、議題の背景、バックグラウンド、データもシェアする。また、議事録公開、参加透明、公開度の高い対話プロセスをふんでいる。行政とNPO/NGOで対話の場をもうけても、一方的に要求・要望をしてしまいがちだが、個別の課題から政策課題につながることを意識している。政策対話から政策過程へのフォローアップ。

カウンター・サミット、国際会議を前に、市民が並行して会議をおこなうことが増えた。COP3、世界水フォーラム、G8洞爺湖、G7伊勢志摩など。対抗(カウンター)か、平行かという議論もあるが、どちらの牙も向いちゃいけないと思っている。デモか、ロビイングか、仲良くするのも大切だけど緊張感も必要。折り合いところは折り合いところを確認、理解していく。暫定性。

深く・拡げる・つながる。様々な小さな地域の事例を、良い営みはどんどん横に広げていく、世界規模から地域規模をつなげてゆく。草の根のネットワークを広げていく。自治を深く耕していきたい。

北村隆幸氏「地域におけるアドボカシー岐阜県関市の政策協働事例」

岐阜県関市は、人口8万9千人ぐらい、刃物の町。

若者が関市に戻ってくるように、Uターンして暮らし続けることができるために活動している。実際にUターンしてきた人に調査をしてみると、34歳までに92%が帰ってきていた。34歳までにUターンの政策をいかにつくっていくか。あるいは、高校生までに関市のことを好きになってもらい、Uターンの潜在性を高めておく。関市に5000社ぐらい起業はあるが、高校生に認知されているのは0.2%ぐらい。そこで、関の良さを関の人に伝えるフリーマガジンを発行している。

関市まちづくり市民会議を開催。京都市の100人会議がサンプル。チームで政策を練り上げプレゼンし、市の政策につなげていこうとしてが、採択率が悪かった。市民の政策はクオリティが低かった。そこで、テスト的に実行する期間を設けてクオリティの向上をはかった、課題の設定が浅かったら政策も浅くなってしまうので課題の深掘りは丁寧にする、4年目以降、採択されう割合も大幅に増えた。これまでに採択された提案14個、生まれた団体3つ。行政の担当課がメンバーに入り、担当課としてどうすれば採択されるか、政策につなげていけるのかをアドバイスしてもらっている。

複雑化する地域課題があるなかで、主体を行政から地域市民にしていかなければならない。マルチステークホルダー、小規模多機能自治が、全国的な潮流となってきている。

市に対する要望を聞き取るアンケートは世帯ではなくて、住民一人ひとりにとっている。世帯にとってしまうと10代や20代の意見は出てこない。中学生以上にはアンケートを実施している。

関市の現状を振り返ると、課題解決型にはまだなっていないが、徐々にその素地はできつつある。自分ごと化していくことが重要。政策への参加から自治へ。そのために市民の主体性、自分ごと化していくプロセスをつくっている。

西井和裕氏「アドボカシーの危機、民主主義の制度を上げる」

アドボカシーをとりまく現状を考えると、国際NGOから懸念を幾つか思うことがある。「政府行政による圧迫」。NGOや市民活動に影響を及ぼしかねない法律の制定や措置によって圧迫をうけている、特定秘密保護法、安全保障関連諸法制、共謀罪法など。さらには「行政による規制と管理強化」「社会の右傾化」、「不安・不満・憎悪等、非合理な思考・感情の広がり市民社会に内在する課題」、「NPO/NGOの公的資金への依存」など、依存度が増すとモノがいえなくなる。「NPO/NGOの発信力の低下」など課題は多様にある。

市民スペースという用語がある。市民社会アウターが社会において占める場所であり、市民社会が機能する環境や枠組みであること。国際的に市民社会スペースの議論が行われている。市民社会スペースが、日本と同様に、世界も縮小傾向だと言われる。CIVICUSモニターでは日本は市民社会スペースが狭まっていると指摘される。

市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCIS)を結成した。市民社会スペースの推進とアドボカシーを目的に、全国7つのネットワーク団体で構成。

民主主義の制度を上げるさいに、市民憲章は拠り所に成る。

市民とはなにか。鷲田清一氏の言葉。

新川達郎氏「アドボカシーとは」

アドボカシーの出発点は市民が声をあげること。声をあげられない、声をあげても届かない、そのときに行うのがアドボカシーという活動。民主主義社会の正当な権利が保障されていない状況。それを何とかしようという活動ともいえる。一人一人の声に公共性を付与する活動。市民の声を政策に転換していく。ただ単に提言するだけでなくむしろ一緒に政策を作って行動してチェックする政策協働。政策提案から政策協働へ。自己組織化。市民の声を代弁者、当事者をエンパワーメントする。

一人一人の利益は対立する。それを前提としてうえで対話し、アイデアをつくり、よりよいものをつくっていく。個々の利益を公共的な利益にむすびつけていく。民主主義は大いなる間違いをおかすこともありうる。皆んなで決めたから、皆んなにとって良いとはなりえない。民主主義の負債と捉えることもできる。しかし、その限界も自覚しなければならない。

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