言い尽くせない気持ちを表現する方法

今日は百ヶ日のご法事のお参り。80代のご婦人。おしゃべりが好きで、交友関係も広く、風ひとつ引かないほどに元気だった。癌がみつかって、みるみる転移が進んだ。病気がみつかって1年半で亡くなってしまったそう。

まさか自分が残されるとは思わなかったと、涙流しながらご主人がいう。自分は若いときから病気がちで、ずっと妻に寄りかかって支えてもらっていた。自分が当然先に死ぬもんだと思っていた。妻が亡くなった2ヶ月はどうにか持っていたけど、さすがに限界だったようで、昨日まで体調壊して、1週間入院していた。今日はどうにか一時退院できた。このさき、どうして生きていったら良いのか分からない。

お勤めの最中、ご主人が「なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ、なんまんだぶ…」と繰り返す。ときに涙流しながら、ときに声にならないような声で、ときに何かにすがるような声で。そのお念仏には、ご主人の言葉では表現しきれない様々な想いが込められているように感じる。悔しさ、虚しさ、受け入れられない気持ち、後悔、感謝、不安…。上手く表現する言葉もなく、ただただお念仏となえるしかないんだろうな、と感じた。形式化された儀式儀礼だからこそ、どうにもならない気持ちをぶつけることができるのかもしれない。

帰り際に息子さんが教えてくれた。

「母は、癌を告知されてから、自分で全てを準備していました。荷物の整理はもちろんのこと、財産や、自分の葬儀の手配まで。よく喧嘩をする両親でしたが、癌が分かってから、お互いにいたわりあっている姿が印象的でした。そんな母が、お父さんを置いていかねばならないことだけが後悔や、と死ぬ最期まで言ってました。」

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