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人事評価における「絶対評価」VS「相対評価」どっちが正しい?

人事評価には、あらかじめ決められた評価基準や仕事のパフォーマンスにもとづいて評価する「絶対評価」と、組織内の他の従業員と比べて、個人の相対的な位置づけを評価する「相対評価」があります。

絶対評価のほうが、公平で客観的な評価ができるという理由で、一般的に優れているといわれます。しかし日本人にとっては「絶対評価」のほうが、実は合っているかもしれません。


物事を相対的にとらえる東洋人、絶対的に評価する西洋人

みなさん次の絵を見てみてください。

あなたがこの絵を一瞬だけ見せられて、どんな絵だったか説明するよう指示されたら、どう答えるでしょうか?もしあなたが東洋人タイプだったら、おそらく「湖のようなところで魚が泳いでいる絵でした」と答えるでしょう。

ところが、西洋人はこの絵を一瞬だけ見せられると、全体像の様子を説明するのではなく、場面の中心的な事象(魚)について「大きな魚がいました。たぶんマスだと思います。それが左に向かって泳いでいきました」と答えるケースが多いのです。

この実験を行った心理学者のリチャード・ニスベットは、日本人などの東洋人は物事を相対的に捉える傾向にあり、逆に西洋人は物事を個別に分析的かつ絶対的に評価する傾向があるといっています。

それは脳における神経活動においても確認されています。

西洋人の脳は相対的にとらえるのが苦手

マサチューセッツ工科大学の脳神経学者トレイ・ヘッデンらは、アメリカ人と東アジア人に瞬間的な知覚判断を下してもらい、そのときの脳の様子をスキャン装置で観察しました。

実験では異なる大きさの四角形が表示され、四角形の内側にはかならず直線が一本引かれています(下図参照)。

次々と出てくる四角形を見て、直線と四角形の割合は同じかどうかを判断するのが相対的判断。四角形に関係なく、直線の長さが同じか違うかを判断するのが、個々の対象物の絶対的判断です。

脳スキャンで見ると、アメリカ人は前者(相対的判断)のほうが、脳の活動が活発に動いていました。つまり個々の対象に関する絶対的判断より、相対的な関係性の判断のほうに、脳が多くの労力を要したということです。

ところが東洋人では、正反対の結果が出ました。彼らの脳は相対的判断は朝飯前で、むしろ絶対的判断のほうに苦心していたのです。

西洋人のほうが、絶対的かつ分析的に評価をおこなうイメージがありますが、これらの研究からもその印象は裏付けられました。

日本人は相対的に評価するのが得意

一方で日本人は、相対的に判断することを得意とします。個々の関係性や組織内やグループ内での位置づけなどを評価することに優れています。
また評価される側も、個人としての能力やスキルより、相対的な評価のほうを気にするのではないでしょうか。

モノサシに照らし合わせて絶対的に判断することのほうが、一見すると正しい評価のように思われますが、どうやら日本人にはあまりなじまないようです。もちろん絶対評価にもメリットはあります。しかし相対評価も取り入れながら人事評価をおこなったほうが、評価はやりやすくなりますし、従業員からの理解もされやすいということです。


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