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評価で社員をコントロールしてはいけない。結果だけにフォーカスしなさい

人事評価には、例えば「積極性」や「協調性」といった項目が並びます。自ら進んで仕事に取り組み、チームで協力する姿勢がみられれば、その社員の評価は高くなり、昇給のチャンスも増えます。会社側も、そうした行動を奨励する意図をもって評価を行っていると思います。

でもちょっと立ち止まって考えてみてください。「積極性」や「協調性」を人事評価によって高めることができるのでしょうか?もし評価のために社員がそのような行動を取っていたとしたら、それは本当の意味で「積極的」で「協調的」なのでしょうか。


積極性を強調すれば、積極性は失われる

企業が「積極性」や「協調性」という項目を評価項目にする理由には、もちろんそういった行動が好ましいことであるからには違いありません。しかし別の理由として、社員にそのような行動を促す意図が少なからずあると思います。

しかし、もしそのことを社長が強調して「積極的じゃないヤツのボーナスを減額するが、積極的なヤツにはボーナスを弾む」と言えば、見かけ上はそのように社員は振る舞うかもしれません。しかしそれは仕事に情熱を持って真に積極的に行動しているのではなく、良い評価を得るための行動であり、本当の意味での積極性ではないことはいうまでもありません。

強調すればするほど、むしろ積極性は低下してしまうのです。

ロチェスター大学教授のエドワード・デジらも、「評価(報酬)のために仕事をやらされている」という状態は、自らの主体性(自己決定権)を奪われ、本来のモチベーションが低下してしまうと、様々な研究から明らかにしています。

では、「積極性」や「協調性」は評価項目に入れない方がいいのでしょうか?でももしそうだとすれば、積極的に仕事をしている社員は報われなくなってしまうかもしれません。

事後的な報酬であれば意欲は低下しない

スタンフォード大学のマーク・レッパー教授らの研究は、そんな人事評価におけるジレンマに対して一つの解決策を提示してくれています。

レッパーらはお絵かき好きの子供たちを集め、二つグループに分けたうえで、次の異なるアプローチをとりました。

Aグループ
「がんばって絵を描いたら、ご褒美として賞状とリボンをあげるよ」と言って絵を描かせた

Bグループ
絵を描く前には何も告げず、描き終わったらご褒美としてリボンと賞状をあげた

どちらのグループも絵を描くことに熱心に取り組んでいましたが、それから2週間後、再び絵を描く機会を与えました。しかし今回は、賞状やリボン(報酬)を渡すことはしないと告げていたのです。
すると、前もって報酬を約束されていたAグループは、絵を描くことに興味を失ってしまったのです。

一方で、同じ報酬を後からサプライズ的にもらえたBグループの子供たちは、前回と同じように絵を描くことを楽しんでいました。

つまり報酬というアメを使って行動を強化しようとすると、本来のモチベーション(絵を描きたい)は低下し、報酬のための行動となってしまうのです。
しかし一方で、事後的に報酬を渡すのであれば、モチベーションは低下しないということです。

評価を強調し過ぎず、結果に報いる

企業も同様です。「積極性」や「協調性」などの行動は評価されるべきですが、それを強調しすぎて評価と直結させることは、社員の内発的なモチベーションを損ねる可能性があります。
評価によって社員をコントロールしようとするのではなく、実績に基づいて事後的にボーナスや昇給を与えることが、積極性を損ねずに、努力をした社員を正当に報いる方法といえます。

積極性や協調性を本質的に高めたい場合は、評価だけに頼らず、別のマネジメント手法やコーチングを通じて促進すべきです。評価期間中は「評価のために行動している」あるいは「やらされている」と感じさせないように配慮し、しかし結果に対しては、正当な報酬で報いる体系が理想的といえるでしょう。


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