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五山の送り火で いい時を過ごす

「あ、ついたよー。」
「わぁ、いいねー。」
「りこちゃん、綺麗だねー。」
「うん、とても綺麗ね。」

今日も りこちゃんとこざる達は いつものように
わいわいお喋りしながら、 皆で一緒に夕飯を食べました。

そして食後のお茶を飲みながら、テレビを見ています。

「今夜は 皆で 京都 五山の送り火を見ているんだよ。」
「りこちゃんも ぼく達も、この風情ある大文字の送り火が大好きで
毎年、こうしてテレビで見ているんだ。」
京都が大好きなりこちゃんも、とっても嬉しそうです。

「五山の送り火は、各家庭でやるお盆の送り火を
もっと壮大に山でやる感じだよね。」
「うん、ぼく達が家でやるのは、本当に小さくちょろっとだけどね。」

こざる達が家でやるのは、茄子と胡瓜の牛と馬でシンプルですが、
ちょっと頼りない感じがします。
「こんなんで、ちゃんと あっちに帰れるかなぁ?」
ある時、こざるちゃんはそう言いましたが、
「仏様は ちゃんと乗りこなして あっという間に帰れるから大丈夫!」
りこちゃんは、そう答えました。

「各家庭でやる送り火もいいけれど、こうして山に灯が灯って、
皆で眺めてっていうのも、ゆっくり帰っていくようでいいねー。」
「そうだね、皆が集まって、お喋りしたり食事したりして、
そして帰っていくのを見送る、そういう緩やかな時間の流れがいいなぁ。」
「何だかあっち側とこっち側がつながっている感じがするね。」
「うん、とても自然な流れで、仏様が『あー美味しかった。ごちそうさん。
じゃあ そろそろ帰るとするか。』っていう感じだよ。」
皆、うんうん頷きます。

りこちゃんも、こざる達も、そんな時間の流れが心地よくて
心が穏やかになるようで、それで こうして見ているのかもしれません。


「これも京都だからできるんだよね。」
「そうだよ、山に囲まれていて、その山が山のままちゃんと残っていて、
高い建物もないから、皆から見えるんだもんね。」
「それに街中が明るくないよね。」
「だから、山に文字が美しく浮かび上がって見えて綺麗なんだね。」

大都会の京都は ちょっと行けばすぐに里山です。
その里山が里山のまま生きています。

「この伝統行事を維持して続けていく京都の人たちも本当にすごいよ。」
「お金がかかるのは勿論、人が受け継いで毎年 実行して続けていく努力だよね。」
皆、うんうん頷きます。

「あー、本当に綺麗だねー。」
「りこちゃん、また新幹線に乗って 皆で京都に行きたいねー。」
「うん、行こう!」
りこちゃんは、まだまだあちこち遊びに行く気満々です。


「ちょっとお茶のお代わり淹れてくるねー。」
「お願いねー。」

お茶当番のこざる二人組が、台所へ向かいます。

「あ、お月さま、綺麗だねー。」
窓からお月さまが明るく輝いているのが見えます。
「京都の空でも 綺麗に輝いて、送り火を見守っていたねー。」

台所で、こざるちゃんがラジオをつけます。
すると りこちゃんが大好きな曲が流れてきます。

「これ、りこちゃんの古いレコードに入っていて、
ぼく達も 何度も一緒に聴いたよね。」
「ドビュッシーの『月の光』だ!」

こざる達はお茶の用意をしながら、
うっとりと聴いています。

「明日、りこちゃんのレコードを皆で聴こうよ。」
「うん、そうしよう。」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
台風去って、明日はまた更に高温になるようです。どうぞご自愛ください。
よい毎日でありますように (^_^)

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